第21話 雀

side:日比谷



ある日から悪友がとてつもなく優しい顔をするようになったのだ。どこか遠くを見つめて、ふわりと笑う。思い出し笑いなんてムッツリだね、とからかえば秒速でパンチが飛んできて、それを避ける。そんなこともあったような、なかったような。

そのムッツリなイケメンが恭弥ちゃんのことを話したのはそれから間も無く、であった。

なんだかんだ、崇は俺のこと、好きだよね〜。

きつすぎる眼光がいつも損をしてるなって思うけど、崇はかなり情に熱いのだ。男の俺から見てもイケメンだしね。そんな崇が初めて俺を頼って、須永恭弥という男を連れてきてほしい、と言ってくれたのはなかなかに嬉しいものだった。

それと同時に、その須永恭弥、という人物に興味が湧いた。



須永恭弥という人物の、第一印象。

「絶対恭弥ちゃんって流されて騙されてチョー損するタイプっぽい!」

「…」


手を引きながら屋上に無理やり連れていかれても文句言わないんだもん。ほら、今だって俺の言ったことに絶句して目が点になってる。まあ初対面のいかにもヤンキーですよ、な外見の俺には反抗しようなんて思わないもんね、普通。それにしても恭弥ちゃんの顔、豆鉄砲くらった鳩みたいで笑いが止まらない。まあ、この場合恭弥ちゃんはどっちかっていうとスズメっぽいけどね、なんとなく。




屋上に連れ出し、ムッツリな悪友の元へ、このか弱いスズメちゃんを俺は今から差し出すのだ。

その時の崇の嬉しそうな顔と言ったら。

さあ、あとはお前次第だからな。








少し前の、おはなし。


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