第12話 先生
不良A・Bがこちらに向けて大声を上げるものだから、俺たちはそちらに意識が向いた。
それと同時に先輩の拘束が少し緩んだ隙をみて、俺は先輩との距離をとることに成功したのだ。
だってあいつらが見てるのにあんな距離が近いだなんて…俺が耐えられない。
先輩は王子様みたいなルックスだったとしても、俺は度アップに耐えられる顔ではないのだ、残念ながら。
「…チッ」
ひぃぃぃなんだか先輩がさっきの鬼モードに見事に切り替わってしまったんですけど。
しかも俺が逃げると同時に舌打ちしたんですけど。俺が悪いんですか?!
どうなんですか、とは怖くて聞けなかった。
チキンな俺を許してください。所詮平凡なんだから、俺は。
「俺たちを」「弟子にしてください師匠!」
「…っ!」
不良たち二人は崇先輩に駆け寄ると、二人揃って凄まじい土下座をかました。
先程俺たちに絡んできた威勢はどこへ行ったのか。
その清々しいまでの変わり身の早さには、若干尊敬の念すら覚える。こいつらすごいな…
「先程の無礼をお許しください!」
「どうか、俺たちをお許しくださいいいい!」
「…や、やめろ!てめぇら!その師匠っての、やめやがれ!」
うっわ、あの崇先輩が引いてる。もはやドン引き。
そりゃあそうなるわな…さっきまでオラオラ言ってたどこの馬とも知らない不良にいきなり土下座されて師匠!なんて呼ばれたら。
そりゃあ誰でも引くよ。
でもなんだか二人に押されている崇先輩を見ていると、新しい一面を見ることができたようで、なんだかおかしかった。
「師匠がだめなら、先生、でどうですか!!」
「先生、俺たちを弟子にしてやってください!」
「やめろ!うぜぇんだよ!」
諦めが悪すぎる双子不良たちは先輩の両脚にまとわりついてねだる始末。先輩もどうしていいかわからないようで、俺に目線で助けを求めているようだった。
俺もその異様な空気に当てられたのだろう。
そんな先輩をからかいたくなった。
「ふふ、崇先生、どうするんですか」
「…っ!!」
その瞬間、俺を見る先輩の目が大きく見開かれた。やば、調子に乗り過ぎた?!
あの崇先輩を便乗したとはいえ、からかったのだ。
このままでは双子不良以上の、地面にめり込むくらいの土下座でもしないと済まない。それで済めばいいのだけれど。
「…あ、ごごごごめんなさい!俺調子に乗って先生、だなんて…っ」
「…せ、せんせい…だと」
「すすすみません、俺土下座でもなんでも…あれ…」
あれ、俺の気のせいかな。
先輩の顔がみるみる赤くなって…そして鼻から赤いものが滴っている気が…
紅くなる先輩とは対照的に、俺の顔はサーッと青ざめていく。
「先生呼び…やっべぇ…っ!」
「ひぃぃぃぃぃ崇先輩!血が!!」
またもや先輩は流血沙汰を起こしたのでした。
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