第6話 再会-4
今まさに俺は死地にいる。大袈裟などではない。決して。
「…」
「…」
「…」
「…」
「ん~ロマンティックだね~」
「どこがですか!」
「…」
「だってロマンティックじゃん~、こうして二人が見つめ合ってるなんて、ね!」
「…はぁ…」
金髪パーマさんはのんびりとした口調で楽しそうに言い放った。見つめ合っているという表現はかなり疑問だ。超絶美形な不良様にごくごく平凡な俺が睨み付けられているこの状況のどこがロマンティックなのか。さっぱりわからない。
嬉しいね~とにこにこしている金髪パーマさんは、やっぱり綺麗で、ああ、きっともてるんだろうなぁ、と見惚れてしまう。
それにしても、この不良さんも綺麗な顔しているよなぁ。ちらり、また彼を見やるとやっぱり睨んでいた。うう…まだ前のこと根に持ってるのかな。
「おい、千夏」
「んぁ?なに~?」
「!」
俺がビクビクとしていると、沈黙を貫いていた不良様がやたら美声で、おそらくは金髪パーマさんの名前を呼んだ。
え、なに…まさか「こいつ殺っちまおーぜ」みたいなことなんですか!?ええ!?
「お前…こいつのことなんでそう…呼んでるんだ」
「「え?」」
「だから!こいつのこと!お前勝手になんでそう呼んでるんだって聞いてんだよ!」
不良様は少し苛立った様子で俺を指さしながら金髪パーマさんに詰め寄っているようだった。ん?状況がいまいち掴めないんですけど…この不良様は何が聞きたいのだろうか。
「…ぶはっっ!!」
次の瞬間、金髪パーマさんは堪えきれないといったように、腹を抱えて笑い出した。目には涙まで浮かべている。それほどおかしいことがあったのか?話の流れに全くついていけてない俺は、ただ茫然と二人を観察するしかできなかった。
「ひっ!」
俺が声をあげるのも当然だと主張したい。だって、まさに鬼のような形相で不良様が金髪パーマさんを睨んでいたから。ちょ、笑ってる場合じゃないから!!早く逃げてまじで!人殺ししかねない雰囲気を彼は醸し出していた。
「はー…笑った笑った…崇おもしろすぎ~」
「…てめぇ…」
「崇もきょーやちゃんって呼びたいなら、そう呼べばいいじゃ~ん~、崇の度胸なし~」
「ぶっ殺す…」
「…ひぃぃ…っ!」
今の聞きましたか皆様!!ついに直接的な言葉を聞いてしまった俺は正直ちょっと怖すぎてちびりそうになった。
金髪パーマさんは不良様の脅しに一つも動じることなく、次いであからさまにビビる俺を見るとにんまりと微笑んだ。
「崇~、きょーやちゃんが怯えてるけどいいの~?こわいこわい不良はきょーやちゃんに嫌われちゃうんじゃない~?」
「はぁ??」
こ、この人は何を言ってるんだ?!というか俺は限りなく壁の花になって、いっそこのまま存在をないものにしようとしていたのに!
どうして無慈悲にも俺に注意を向けようとするのか。この人絶対ドSだよ。
「…くっ」
「あ、あの…っ」
「う…っ!」
俺はどう言葉を発していいのかわからなかったのでやはりしどろもどろになってしまった。
なにやら動揺しているらしい不良様は俺を見るなり、目をあちらこちらに泳がせていた。
なんだか先ほどまでのピリピリした怖い空気が霧散したようで、俺は少し安心した。なので、思い切って聞いてみた。こわいけど。
「えっと…どうか、しましたか?」
「!!か…っ、かわ…っ」
「へ?」
現状把握と俺が生きるために聞いてみた。まあ、無意識に首を傾げて、身長差があるから自然とその…上目遣いになっていたらしい。俺は全く知らないけど。
「…お前、それ反則だから。俺以外の男の前でその…すんじゃねぇぞ」
「…はい?」
「きゃ~なになにそれ、彼氏気取り~??」
「死ね!」
不良様と金髪パーマさんの発言の意味のほとんどが理解できず、俺はまた首を傾げていた。
不良様が顔を覆ってため息をついたこともまた、よく理解ができなかった。
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