第3話 再会-1

俺の通う高校は山田高校。どこにでもあるような名前であるが、残念、中身も普通である。

別段偏差値が高いわけでもないが、そこまで低いわけでもない。そこそこの偏差値を持ったクラブも精一杯やりたい!みたいな人が集まる公立校というわけ。


そのおかげで。平平凡凡に、今日まで無事に生きていけている。

本当は偏差値そこそこの公立高校から兄ちゃんの進学した大学に行くにはなかなか難しい。

だが、俺は地味に努力をしているのだ。大学進学を決めてからというもの、俺は地道に勉強をしている。ああ、この際認めてやるよ、俺は立派なブラコンだ。どうとでも言うがいい。



「ほんと、恭弥はおにいちゃん好きだよな」



放課後、同じクラスで幼馴染の太一と今日も今日とて教室にて勉強中だ。

太一…嶋田太一は学年でもトップの成績で、いつもこいつにテストで負けている。

こいつはいつも俺に負けることを嫌がって、人一倍努力をしているのだ。恭弥には負けられないから、が口癖である。

でも文句を言いながら勉強に付き合ってくれていることにはとても感謝してる。ま、調子乗るから本人には言わないが。



「うん、兄ちゃんマジで神様だから。昨日だって俺の作ったハンバーグうまいうまいって言いながら食ってくれ…た…し」

「ん? どーかした?」



バリボリとお菓子を食べながら太一が不思議そうな顔をしているが、それに構っていられない。




そうだ。

そうだ…


悪しき記憶だったから忘れかけていたけれど、昨日は…昨日は…






「うああああああ!!!」

「ちょ、なに興奮してんだよ、気持ちわりぃ」




ついに頭おかしくなったか、と言う悪友に文句を言う余裕もなくなってしまった。

そうだ、俺は、不良を笑ってしまったのだった。

僕にはそんなつもりは一切合切なかったんですよと言っても、そうは問屋が卸さないというような相手だ。

だって!ほんのちょこっと素直かな、とか思ったけどそのあとのあの…うわぁあ思い出すだけでも恐ろしい。




「どうしよう俺死ぬかもしんない」

「はぁあ?」



コーラを飲みほしてしまった太一はどこか物足りなさそうにペットボトルを眺めていた。あ、どうでもいいと思ってそうだな。



「俺は魔王のような恐ろしい不良に絡まれたんだ…」

「ふーん、ドンマイ」

「ちょ!それだけかよ!」

「だってもうどうしようもないじゃん」



それはそうだけど…

あまりに太一との温度差があることに、俺は少しずつだが、冷静さを取り戻してきた。



「それにさ、恭弥今こうして生きてんじゃん。昨日もみたところボコられなかったんだろ?」

「…うん」



そういえばそうだ。俺はてっきりボコボコにされると思ってたけど、大丈夫だったし。昨日も寝る前にあいつが家に乗り込んで来たらどうしようかと思ったけれど、それもなく快眠できた。



「あ、」



そいえば重要なことが。



「何」

「名前聞かれたから教えた」

「…じゃあ、もう無理かな」

「えーーーーー!!」



諦めたら、という太一の言葉に俺は再び恐怖を覚えて喚きたてた。

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