世界を望めば、世界は我が手の中に

笛吹ヒサコ

序文

序文

 わたしと旅をともにした者たち、ベルン平原の戦いで楽園へ召された者たち、それからいちなる女神さまに愛されるべき世界のすべての者たちに、この物語を捧げる。



 これは人間と竜族、双方が二度と世界を歪めるような過ちを犯さないように、夫とわたしが記録したものである。

 世界中でわたしたちのことが語りつがれていることは、もちろん知っている。旅に出る前からそうなるだろうとわかっていた。


 けれども、時がたつにつれて当事者の元を離れてしまった物語は、尾ひれがつきどんどん脚色されている。しかたがないことではあるが、望ましくない形で語りつがれるうちに再び過ちを犯すかもしれない。


 わたしたち当事者が、こうして記録するに至った理由である。


 とはいえ、多少の脚色は許してほしい。すべてのことを記憶するなんて、どんな人間にも、どんな竜にも不可能だから。

 それでも当事者のわたしたちが書き記すのだから、もっとも読みつがれるにふさわしいはずだ。


 どうか、どうか、二度と世界が歪められることのないように――。

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