約束(3)

 午前四時、作戦は成功し、皇都の兵の奇襲に紛れて、ガゼル、レイジ、シディ、俺の四人は異形の領土に侵入した。

 足早に歩き続けて最初の街に着いたのは午前六時で、飲食店は開いていなかったが、宿屋で休憩がてら朝食だけ取らせてもらうことにした。街は質素だったが、煉瓦造りの建物が並び、ある程度栄えているように見えた。

『こんな朝早くからダブルデート?』

 黒髪に銀色の狼の耳をした女将が笑いながら俺達の机に皿を置いていく。聞き取れるが、やはり異形の言葉は耳慣れない。本物の狼の異形を初めて見たのと同時に、自分達の変装が見破られないか不安になる。

『ちょっと修羅場でねー』

『堂々と嘘をつくな』

 レイジが笑いながら言うのにガゼルが異形の言語でいさめる。

 レイジの髪は白、ガゼルは金、シディは水色、俺はピンクで全員狼の耳をつけている。服もスーツではなく生成のゆったりした綿のシャツにズボンで、ガゼルとシディは装飾のないドレスを着ている。防弾服は肌の上に着こみ、銃は外から見えてしまうので各自斜め掛け鞄の中に入れることにした。

 客は俺達の他に一人、こちらも狼の中年男性で新聞を読んでいた。うっかりいつもの言葉で喋ってしまわないよう、気を付けなければいけない。

『あんたらも王様のご成婚発表に行くの?』

 初めて聞く単語に俺はレイジと顔を見合わせる。作戦前には何も聞いていない。

『王様、結婚するの?』 

 レイジが尋ねると女将は『そうそう』と言って新聞を持ってきた。

『読める? 一面なんだけど』

 薄茶の紙面に書かれているのは異形の文字だ。ブリューテ・ドウタは異形との交渉があるかもしれないという前提で会話と読み書きを教わるから、読めないことはなかった。紙面の真ん中には装飾品をつけ、布を何枚も重ねた服を着たルリオスティーゴが載っている。

『それが、お妃様は黒の鳥なんだって』

 俺はとっさに女将を見上げていた。何事かと思ったのだろう、女将は驚いたように身構える。

『黒の鳥って、あれ? 創世神話の』

 レイジが柔らかく尋ねると、女将は安心したように表情を崩す。

『そう。とうとう黒の鳥がこちらに現れて、その上お妃様になって下さるんだったらもう安泰ね』

 シディはおそらく気付いただろう、ガゼルとレイジも先程の俺の反応で察したかもしれない。

『式典、今から向かっても間に合いますか?』

 俺は尋ねた。女将は紙面に目を落とし、小さな声でうなる。

『まだ朝だし、正午からだから馬車で行けば間に合うんじゃないかしら』

『ありがとうございます。食べたら行こう』

 胸の前で手を組み合わせていただきますと言うと、女将は下がっていった。

 メニューは目玉焼きにベーコン、マッシュポテトにサーモンのサラダ、シリアルだった。普段食べているものとほとんど変わらないことに少し驚く。

 目玉焼きにナイフを入れようとして違和感を覚えたと同時に、ナイフとフォークをぶつけて音を立ててしまった。

『ごめん』

『先輩、ナイフ逆な気がします。右利きですよね?』

 シディに言われて、確かにナイフを左に、フォークを右に持っていた。違和感の正体はこれかと思ったら、レイジに爆笑されて思わず眉をひそめた。

『ギル、動揺しすぎ』

『うっせえ』

 ナイフとフォークを持ち替えて、改めて目玉焼きを切る。

『やっぱり、アリアちゃんなんだ』

 レイジはとても小さな声で言って、悟ったような笑みを浮かべた。もう隠す意味もないので俺は声を低くする。

『できれば、内密に。知れ渡るのも時間の問題だろうけど』

 さすがに異形と交流が断絶しているといっても、情報がまったく入ってこない訳ではない。ましてやこんな重要なことならすぐに広まってしまうだろう。

『黙っていて悪かったが、私は知ってた』

 ガゼルが申し訳なさそうに口を開く。

『何で?』

『ちょっとな。数年前陛下に言われた』

『まあ当然陛下は知ってたってことだよね』

 レイジは机に置かれた新聞に目を落とす。

『責任問題になるんじゃないの?』

『黒の鳥がいることを公表しなかったから?』

『いや、何で黒の鳥を殺しておかなかったんだっていう』

 レイジの言葉に俺は眉をひそめる。

『何で黒の鳥を殺す必要があるんだ? 黒の鳥を使って異形を降伏させればよかったっていう批判はありそうだけど』

 レイジは不思議そうに俺を見つめて、ばつの悪そうな顔になった。

『あー、ごめん、間違えた。忘れて』

『何で。ちゃんと話せ』

『いや、これ機密情報だった』

『レイジ、私も知りたい。話してくれ』

 ガゼルが言うとレイジは眉を下げる。

『みんな機密情報を何だと思ってるの。うっかり言っちゃった俺も悪いけどさ』

 言いつつも諦めたように息をついて、レイジは声をひそめたまま、人間と異形は元は同じ人間で二つに分かれたこと、人間は黒の鳥を殺し、異形は黒の鳥を研究したいという対立から争いが始まったことを話した。

『という訳で黒の鳥が人間側で生きてる方が異例なの』

『当然陛下も知ってるんだよな』

『むしろ陛下しか知らないんじゃない? 知らなかったんでしょ? 人と異形が何で戦争してるか』

 ガゼルとシディを見ると、二人共複雑な表情で頷いた。言われてみれば戦っていたのは領土の拡大のためとか、昔から争っていたからというすりこみのようなもので、これで軍が動いていると考えると恐ろしくもある。

『情報源は陛下でいいんだな?』

『機密情報だからね、ご想像におまかせするよ』

 レイジは流したが、皇都の混乱は必死だった。けれど今後皇都がどうなろうとも、今はアリアを奪還するのが先だ。というより俺は、少しでも早くアリアの顔を見たいだけかもしれなかった。


 馬車の窓からのぞくと、街の中にそびえ立つ城が見えてきた。懐中時計を見ると十一時すぎで、四時間近く馬車に乗っていたことになる。

 王城が近付いてくるにつれて馬車は進まなくなり、俺達は降りて歩いて王都へ入った。馬車が動かなくなるのも納得で、道には王城へ向かって人の波ができている。石畳の左右には食べ物の露天が並び、呼びこみの声で活気に溢れていた。

『お祭りだな』

『そりゃそうでしょう。式典なんだから』

 歩いている異形の種類も様々で、耳の形が違う者、肌に鱗がある者などがいる。ただ翼を持った者は王族に近いからか見当たらなかった。

 とうとう王城の側まで来ると、人だかりでそれ以上進めなくなった。背中に片方だけ翼の生えた異形が声をはりあげて誘導している。王城にはテラスがあり、おそらくあそこからルリオスティーゴが現れるのだろう。とはいっても、この距離からだと姿は見えるが表情までは分かりそうにない。

『これは駄目だねえ。声は拡声してくれれば聞こえるだろうけど』

 レイジが目の上に手をかざしながら王城を眺める。

『アリアがいるのか分かれば充分だ』

『殺気立ってるね、怖い怖い。まあ気持ちは分かるけどね。好きな女の子が別の男と婚約とか、ね』

 そうか、だから何となくいつもとは違う苛立ちを感じるのか。自分のことなのに言われてから初めて気付く。

『このまま待つか。はぐれるなよ』

 ガゼルが言って、俺達は返事をする。懐中時計を取り出してみると十一時四十分で、いい頃合だった。

 俺は落ち着かない気持ちで手を握りしめた。指先が冷たくなっているのを感じて、緊張しているのかと思った。

 観衆のざわめきの中に正午の鐘が鳴り響いて、話し声が薄まっていく。テラスに今朝、新聞で見たのと同じ格好のルリオスティーゴが現れると、一気に観衆が沸いた。

 後ろから続けて数人の男女が現れる。ピンク色の髪の女性に付き添われるようにして、見間違えるはずのない、黒い翼のアリアが現れた。空と同じ水色のドレスを着ていて、いつも肩にかかっている髪は上げているようだった。他の王族の翼が白いのに対し、アリアの左腕の翼は、黒い。

 ルリオスティーゴが現れた時とも違う、更に熱狂的な歓声が上がった。異形の中で黒の鳥は待ち望まれていた存在なのだと、まざまざと見せ付けられる。けれど、アリアは翼を見せることを望んでいないはずだった。翼を現す時はいつも痛がっていたし、観衆を引き付けるためだけに翼を見せろと強要されているということを考えると、みぞおちのあたりが熱くなった。

 テラスに面々が出揃うと、音を絞るようにざわめきが小さくなっていく。

 開式の言葉が告げられ、ファンファーレが鳴り響くと会場に拍手が満ちた。

『本日、この式典にこれだけの人が集まってくれたことを嬉しく思う』

 ルリオスティーゴが口を開いた。声は魔力で拡声しているようで、ここでもよく聞こえる。

『皆も知っているだろうが、現在我々のおかれている状況はあまり芳しくない。しかし我々は異形との戦争を終わらせる。そのために黒の鳥を迎えた』

 一気に歓声が上がる。ここからではアリアの表情は分からないが、快く思っていないことだけは確かだ。

『私は黒の鳥を王妃とする。零間に勝利と更なる繁栄を約束しよう』

 ルリオスティーゴに応えるように観衆の声が高まっていく。

 零間に個人的な恨みはない。民衆に罪がないのも分かっている。けれどアリアを黒の鳥として、道具として扱おうとしているのは我慢できなかった。アリアがどんな気持ちであそこに立っているか、どんな痛みを感じているか、俺にだって、誰にもわからないのだ。

 瞬間、耳鳴りのように歓声が遠くなって、アリアが驚いたようにこちらを見た、気がした。こんなに遠いから視線の先など分からないのに、こちらを見ていると、思った。目の前の景色は何一つ変わらないのに、視線だけで直線上にアリアと繋がって、二人きりしかいないようだった。

 呆然としていた意識を引きしめて、強く思う。

 必ず、助ける。

 ゆっくりと耳に音が戻ってきて、体が元の歓声の波に包まれた。アリアも体をこちらに向けているが、もう目が合っているとは感じなかった。

 式典が終わり、帰路につく人波の中を押し流されるように歩き始める。

『一旦休憩がてらどこかに入るぞ』

 俺の隣に並んだガゼルが後ろのレイジとシディを振り返る。

『にしてもこれはまずいな。大々的すぎる』

 声を潜めてガゼルは続ける。

『今後が?』

『大混乱必至だろうな』

『それでも、アリアを助ける方が先だ』

 言うとガゼルが俺を見ているのに気付いた。

『何だよ』

『いや、その通りだ。ギル、いい男になったな』

 頭を思い切り撫でられて俺はとっさに狼の耳を押さえていた。

『馬鹿、撫でんな』

 叫ぶと、気付いているのかいないのかガゼルは笑いながら手を離した。

『お姫様を奪還といくか』

 俺は半ばガゼルを睨んでいた。

『当たり前だ』

 その言葉には自分への発破をかける意味もあったのかもしれない。


 式典から戻ってきて、私はベッドに座りこんでいた。着替えを手伝おうと言ってくれたメルティリアも、女中にも下がってもらい、ドレスのまま黒い翼の左腕を抱えて座っていた。翼を抑えこまなくてはいけないのに、痛みを感じない程、気持ちが宙をさまよっているようだった。

 ギルが、いた。ちゃんと、生きていた。焼けるような憤りが頭の中に入りこんできて振り向くと、大勢の観衆の中から確かにギルと繋がった。姿をはっきり見つけることはできなかったけれど、ちゃんと、分かった。

 私は、戻れるのだろうか。いや、もういい加減考えるのはよそう。私は、帰りたい。母様の言葉で私がここにいなければならないとしても、私は帰りたいのだ。諦めている場合ではなかった。本当に帰りたいのなら、飛び降りてでも、逃げ切れる自信がなくても、逃げる努力をするべきだったのだ。

 必ず助ける。

 頭の中に焼きついた言葉が蘇って、私は左腕の翼の境目を握った。私が生きたい場所はここじゃない。帰って、みんなに会って、ここにいなくても戦争を終わらせてみせる。

 私は立ち上がった。おそらく今日か明日、近い内にギルがここに来る。その時どうしたら一番離脱しやすいか城の中を回ってみようと思った。電信機がないのが歯がゆい。持っていても取り上げられてしまったかもしれないが、数が少ないのでギルとレイジにしか支給されていなかったはずだ。

 でも万が一ということもあると思って、私は元着ていたスーツをクローゼットから引っ張り出してきた。けれど一度洗濯に出されてしまったので、電信機がどこかに入っていたら知らされているか、既に取り上げられている。

 そこで、私は自分を殴りたくなる程重要なことを思い出した。ネクタイにつける銀のタックピンには発信機が入っているのだった。どうしてそんなに大事なことを忘れていたのかと思うが、今からでも遅くはない。私はネクタイからタックピンを外して、ドレスの中の下着に留めた。

 扉がノックされて、反射で身構える。

「開けるぞ」

 ここで私と口をきく男性は、まだ一人しかいない。返事をすると、平服に着替えたルリオスティーゴが部屋に入ってきた。若葉色の目が私を見て細くなる。

「まだ着替えてなかったのか」

 私は頷く。今着替えたらタックピンを見咎められるだろうが、まさか目の前で着替えろとは言われないだろう。

「しまわないのか」

 何のことかと思ってルリオスティーゴの視線の先を追うと、私の左腕の翼を見ていた。鈍い痛みは続いているが、必死で忘れていた。

「無理に翼を出させて式典に出したことは少し、悪いとは思っている」

 驚いて、私はルリオスティーゴを見つめた。初めて夢で会った時からは考えられない言葉だった。ルリオスティーゴは言い慣れていないのか私から視線をそらしている。

「人間と零間がどちらも傷付かずに戦争を終える方法は、ないんでしょうか」

 私は思わず尋ねていた。ルリオスティーゴは侮蔑ではないが冷えた目で私を見る。

「人間が降伏すればもう犠牲者は出ないだろう」

 そう、来るのか。けれど私はもうここにいることができない。

「戻りたいのか?」

 聞かれて、私はルリオスティーゴから目をそらせなかった。けれど嘘をついてもつかなくても、ルリオスティーゴにとっては同じはずだった。

「まあいい。部屋を移動してもらう。荷物は後で運ばせる」

「どうしてですか?」

 言葉を遮るように扉がノックされる。

『失礼致します。こちらにルリオスティーゴ様はいらっしゃいますか』

『入れ』

 扉が開いて、背中に片方翼を生やした異形が一礼する。

『ご報告申し上げます。先程、現領土線の森から異形の軍が侵入、現在交戦中とのことです』

『数は』

『およそ五百です』

 ルリオスティーゴは考えるように間をおく。

『あまり長引かせるな。先日話した通りおそらく陽動で、目的は黒の鳥の奪還だ。所定の位置につけ。黒の鳥を移送次第向かう』

 片翼の異形は敬礼をして部屋を出ていく。

「異形が動いた。理由はそれだけでいいだろう」

 ルリオスティーゴが私の腕を取ろうとして、私は思わず腕を引いた。若葉色の瞳が細くなる。

「私は、行けません」

 後先を考えずに言葉を発していた。

「だから、どうした」

「戦わないと帰れないのなら、戦います」

 私は翼のままの左腕をルリオスティーゴに向けた。数日前にかけられたフレイア(封印呪文)は薄れてきて、今は魔力が普段の半分程まで戻っている。

 左腕の痛みが鼓動と同じ速さで繰り返される中、ルリオスティーゴのまとっている雰囲気が、変わった。

 最初に会った時と同じ、動けば殺されると思った先に電気をまとった手が繰り出されて、私は横に跳んだ。机に体を思い切りぶつけて痛みで足がもつれる。肉体強化に魔力のほとんど移して、飛んできたワプラ(雷呪文)を避ける。ルリオスティーゴを越えて扉を突破するのは無理だ。やるしかない。

『ガヤド』

 私は背後のテラスに続く窓に呪文を撃って、走った。これ程までにドレスが邪魔だと思ったことはない。壊れた窓枠に引っかかったドレスを引き、硝子の欠片を踏んで、そのままテラスの柵を飛び越えた。

 急激な落下の感覚に恐怖で歯を噛みしめる。けれど横か、最悪下にアリス(風呪文)を撃って着地しなければ逃げられない。落ちていく視界の中、振り返って背後の城を確認する。横へ撃てばテラスから城の中へ入れる。

 撃とうと手の平をさし出した時、目の前を白い翼が横切った。追いつかれた、そう思って白い翼の方に手を向けようとしたら、腰を抱えこまれて肩に担がれていた。

「空で俺と勝負しようなんていい度胸だ」

 抵抗するより早く、放電の音と体中に痛みが走って意識が遠くなっていく。

「最初からこうしておけばよかったな」

 ルリオスティーゴがそう言ったのが聞こえて、私はそれ以上何も考えられなくなっていた。


 目を開けると、暗かった。光がなく、闇に慣れた目で何があるのか分かる。というより、何もなかった。私が伏しているのは冷たい石畳の床で、顔を上げるとそれが天井まで続いている。窓もなく扉が一つだけあり、ノブはない。

 ルリオスティーゴに気絶させられてから、一体どれくらいたったのだろう。立ち上がろうとして、けたたましい金属の音と共に右足に痛みが走った。

 ドレスの裾をまくりあげてみると、右の足首に太い足枷がはまっていて、そこから繋がった鎖が壁まで埋めこまれていた。

『最初からこうしておけばよかったな』

 ルリオスティーゴの言葉を思い出す。もう絶対に逃がさないというつもりか。繋がった鎖が重苦しい音を立てて、私は顔を伏せた。

 こことよく似た場所を、私は知っていた。思い出してはいけないのに、記憶が頭の中から流れ出す。体が浮かんでいるような感覚になって、私は倒れるように冷たい床に横になった。自分の息が驚く程速くなっているのが分かる。駄目だ、まずい、思い出しては、いけない。

 そこはここと同じように光がなかった。そこで私は暴力を受けた。そして私はそれを、消した。

 左腕が痛んで、私は声を上げていた。とても、痛い、腕がちぎれているのではないかと思う程痛い。

 こんなに痛いなら、消してしまえばいい。あの時に消してしまえばよかった。なら、今すぐ消せばいいのだ。さあ、今から消そう。

 私はここにある全てを消すために、ここにいるのだから。

「アリア」

 呼ばれた、気がした。気のせいだと思ったら自分の息の音に混じって、もう一度聞こえた。

「いたら返事しろ」

 静かだった空間がにわかに騒がしくなり、銃声と悲鳴が響いて、また静かになった。

「どこだ、アリア」

 私は、この声を知っている。声を出そうとしたら息が上手く吸えずに喉からもれていってしまう。苦しい、私は、私でなくなってしまう。やっと喉からかすれた声を絞り出す。けれどこれでは聞こえない。靴音が扉の前を通りすぎて遠ざかっていく。

 違うのだ、私は消したくない。だってまだ伝えていない。だから私は、こんな力なんて、いらない。

「ギル」

 喉につかえていたものが溶けたように私は叫んだ。靴音が足早に戻ってきて、私はもう一度叫ぶ。

「ギル、ここに、います」

「ちょっと待ってろ」

 ちゃんと、扉の向こうから声が聞こえた。扉を揺らす音がしてギルが叫ぶ。

「撃つから離れてろ」

「はい」

 元より足を鎖で繋がれているので扉には近付けない。私は息を整えて、何とか上体だけ起こした。

 サブマシンガンの連射音が響いて、扉がゆっくりと内側に倒れてくる。明るさに目を細めると、人影が駆け寄ってくるのが見えた。

 私の前にしゃがみこんだギルは、最後に見た時と違っていた。髪の毛は薄いピンク色で、髪の隙間から銀色の獣の耳がのぞいている。服もスーツではなく、こちらの民衆が着ているような白い綿だ。けれど、私を見つめる金色の目は、同じだった。

「立てるか」

 私は言葉につまって首を横に振る。ドレスをまくりあげて右足を見せると、ギルの瞳が鋭くなった。

「あいつ、殺す」

 ギルの押し殺した声はとても低かった。

「ギル」

 思わず呼んでしまうと、ギルは気付いたように私を見る。

「とにかく外す」

 私は右足の足枷を見るが、おそらく鍵がないと外せない。魔法で壊そうにも右足が巻きこまれる。

「破片気を付けろよ」

 ギルは立ち上がって鎖が繋がっている石の壁に手をつけた。

『世界の終わり 透に包まれ 鳥に願い この視の先を破壊する ガヤド』

 確かにそうすれば外れると思ったところで壁が崩れる音が響き、私は顔をかばう。音が収まると鎖が繋がっていた壁は粉々に砕け散り、足枷の鎖も壁から外れていた。

「立てるか?」

 ギルの手が目の前にさしのべられる。

 さっきまであんなに頭の中で叫んでいたのに、心が少しだけ臆病になる。

「私は、帰っていいんですか」

 言ってから、違うと思った。私はすぐに口を開く。

「私は。帰りたいです」

 何を言っているのかよく分からなくなった。けれどギルは驚いた様子もなく私の前にしゃがみこんで、私の頭に手を置いた。

「ここまで来て連れて帰らないでどうすんだ」

 ギルは困ったように微笑んで私の頭に手を置いた。

「帰ろう」

 ああ。何だか、一気に軽くなった。喉がつまって、涙がこみ上げてきて、私はギルから視線をそらす。

「早く逃げないといけないんだけど」

 ギルが苦笑いしたのが分かって謝ろうとしたら、壁に体を押されて、顔を近付けられた。考えるより早く唇が触れて、私は何も考えられなくなる。

 唇が離れて、ギルは私の髪を撫でて少し恥ずかしそうに笑った。

「止まった?」

 涙のことを言われているのだと分かって、私は頷く。

「続きは帰ってからな」

 ギルの言葉を飲みこんだら急に恥ずかしくなってきて、何か言おうとしたら言葉が出てこなかった。

 ギルが立ち上がるのに合わせて、私も立ち上がる。今は逃げることを考えるのが先だ。右足の鎖が音を立てて、私は半端な長さの鎖を足に巻きつけた。左腕はいつの間にか人の形に戻っている。

「とりあえず下に行きたいんだけど。レイジとシディと、あと俺の教育係が来てる」

 ギルが言ったところで複数の靴音が聞こえてきて私は壁に身を寄せる。ギルが私の方を見て、手の平で私を制してから外へ飛び出した。

 サブマシンガンのけたたましい発砲音と悲鳴とも似つかない声が混じり合う。

「アリア」

 音がやんでから手招きされる。外は石壁がむき出しになった絨毯のない狭い廊下で、右も左も石壁に覆われていた。壁にかかった明かりが等間隔で燃えているが、あまり明るくはない。私は倒れている人影の方をなるべく見ないようにする。

 ギルはサブマシンガンに手をかけたまま、電信機を操作して耳に当てた。

「こちら、ギル。アリアを保護した。合流地点に向かうけど、飛行船の到着予定時刻は二十一時で変わりないな? どうぞ」

 少しの沈黙があって、ギルは眉をひそめた。

「正気か?」

 またしばらく黙りこんで、今度は了承の旨を伝えて電信機をしまった。少し難しい顔をしていたが、すぐに私に向き直る。

「とりあえず歩きながら話す」

 ギルが歩き出して、私は思い出して慌てて口を開く。

「あの、今私魔力が半分くらいしかないんです。だから、そんなに撃てないと思います」

「何かされたのか」

 ギルの声が途端に険しくなる。

「封印呪文をかけられました」

 ギルは少し考えたように黙って、右腿のホルスターから銀色の銃を抜いた。

「持っといて」

 私は頷いて、安全装置がかかっているのを確認してから銃を受け取った。ドレスでホルスターをつけていないので手に持ったままにする。今更だが靴もかかとが高いので歩きづらいことこの上ない。

「今から飛行船に乗るけど、思ったより到着まで時間がない」

「ここ、お城の中ですか?」

「城の上の方」

 複数、先程より更に多い足音がかすかに聞こえてきて、私は少し前を歩くギルを見る。

「これでやるから緊急以外は撃たなくていい」

 ギルはサブマシンガンを指して駆け出した。廊下の角から現れた異形はこちらを見とめて銃を構えるが、ギルがサブマシンガンを引く方が早い。

『世界の終わり 透に包まれ 鳥に願い この視の先を消滅させる エカザ』

『世界の終わり 透に包まれ 鳥に願い この視の先を破壊する ガヤド』

 撃たれた異形の後ろに控えていた異形が魔力の塊を放つ。狭い廊下だ、避けきれない。ギルが私の手をつかんで異形に手の平を向けたのを見て、反射で手を差し出していた。

『マヴェオ』

 左手から抜けていく魔力にいつもとの違いを感じて戦慄する。使える魔力も半分なら、魔力の威力も半分なのだ。二人分の魔法を相殺しきれずに、私は後ろへ飛ばされて床を滑った。

「アリア」

 前で起き上がったギルに体を引き上げられる。全身が痛いと思ったら、肉体強化にまったく魔力を回していなかった。いや、正確には回せる魔力がない。

『世界の終わり 透に包まれ 鳥に願い この視の先を消滅させる エカザ』

『世界の終わり 黒に包まれ 鳥に願い この視の全てを飲みこむ マヴェオ』

 容赦なく異形から魔法が飛んでくる。

『世界の終わり 透に包まれ 鳥に願い この視の先を消滅させる エカザ』

 ギルが異形に向けて撃ち返すが、かき消せなかった魔力の塊が私とギルを吹き飛ばして、私は体がちぎれるような痛みと共にうつぶせに床に頬をつけていた。

 立ち上がらなくては。けれど、痛みで立ち上がれない。ギルのうめき声と、こちらへ近付いてくる靴音が聞こえて、顔だけでも上げる。

 床に手をついて上体を起こしているギルと、その手前で立ち止まって冷ややかな視線を落としているルリオスティーゴが、目に入った。

「防衛線には行かなかったのか、なんて、行く訳ないか」

 ギルが自嘲するように呟く。

「さすがにここを離れる訳にはいかなかったんでな」

 ルリオスティーゴはギルを見ていたが、目が合った。

「アリア、何で逃げた」

 私は奥歯を噛みしめる。

「私は、ここの人じゃない、帰り、たいんです」

「こいつがいるからか?」

 ルリオスティーゴがギルへ視線を投げて、私は言葉につまった。

「こいつはお前が黒の鳥だということはおそらくもう知っているだろう」

 嫌な予感がした。その先は、言わせてはいけない。

「やめて、それ以上」

 ルリオスティーゴはギルへ視線を戻す。否定の声を重ねても、もうかき消せない。

「こいつは俺の妹だ。つまり、お前達が言うところの『異形』だ」

 一気に、体の力が抜けた。知られたくなかった。だって、人間と異形は争っている。異形だと知られれば、もう元の場所には戻れない。たとえ受け入れてもらえたとしても、もう元のようには振る舞えない。

「意味が、分からない」

 ギルは立ち上がった。とても低い声で言って、ルリオスティーゴを見据える。

「そのままの意味だ。あいつは父違いの妹で、父親は皇帝だ」

「そんな、歳が」

 言ってから気付いたのか、ギルはそれ以上言葉を続けない。

「知っているかいないか知らないが、お前達を基準にすると零間の成長速度は六倍だ。こいつは混血だからおそらく約三倍、実際は六歳だ」

「アリア」

 ギルの声が響く。

「本当か?」

 私は、嘘がつけない。嘘をついて、本当は人間だと言っても、もう同じようにギルと接せない。

「はい」

 私は、やっと言葉を絞り出した。自分でも聞き取り辛くて、震えていた。

「それでもお前はこいつを連れて帰るのか?」

 私はもうギルの方を見られなかった。

 ややあって、凛とした声が響く。

「当たり前だ」

 言葉が、痛い。けれど信じていいのなら、信じたい。

「事実を知らせない皇帝も皇帝だが、あいつが何を考えているのか分からないから、まあいい」

 静かになって、ほんのわずかに静電気が走るような音が聞こえる。

「ギル」

 私は反射で叫んでいて、ギルは後ろに跳んだ。ギルがいた位置に電気の塊が弾けて、ルリオスティーゴは既にギルに手を向けている。

 私の頭は直感で回転していて、うつぶせでドレスに隠れていた右手の、握ったままだった銀色の銃を自分の首元に押し当てた。

「待って」

 思い切り叫んで、安全装置を弾く。これで、引き金を引けば私はおそらく死ぬ。首元に当てた金属の冷たさに、鼓動が速くなる。

「ギルを殺すなら、銃を引きます」

 ルリオスティーゴがこちらを見て、私は伸ばしていた指を引き金に触れさせる。

「私に魔法を撃っても、私が引く方が早い」

「それで、お前はいつまでそうしてるつもりだ」

「あなたが退くまで」

「本気で死ぬ気がないくせに自分に銃を向けるな」

 確かに死にたくない。死ぬのは怖いし、ここで死ぬつもりもない。

「でも、こうしてる限りあなたは動けない」

 私は自嘲した。

「私が大切なんでしょう? 鳥と繋がってる私が」

 嫌っているこの体でも使えるものならせいぜい使ってやる。今、ギルを失う訳には、絶対にいかない。

『世界の終わり 透に包まれ 鳥に願い』

 ギルの小さな声が聞こえて、振り向く。ルリオスティーゴがギルへ手の平を向けたのに、私は自分の首へ当てていた銃をルリオスティーゴに向けて、撃った。

『この視の先を破壊する ガヤド』

 兵士達のざわめきとギルの呪文が重なって、ギルは手の平をルリオスティーゴではなく、横の、廊下の壁に向けて撃った。

 爆発の煙に顔をかばうと、煙の隙間からギルに体を担ぎ上げられて、体の上下感覚がなくなった。

「飛ぶぞ」

 叫ばれた時には、もう目の前に真っ黒な空を背景にした王城が流れていた。落ちているのだと、最近似たようなことが何度もあったと、落下の恐怖が沸いてきてギルの肩を握りしめる。

「嫌、ギル、怖い、やだ」

「ちゃんとつかんでるから」

 風の音の中にギルの声が聞こえて、私は歯を噛んだ。叫んでいる場合ではない、着地しなければいけないのだ。

『世界の続き 透に包まれ 鳥に願い この身の全てを飛行させる スイル』

 ギルが唱えたのが聞こえて、少しだけ落ちる速度が遅くなる。けれど、まだ、これでは。

「アリア」

 叫ばれて、抱えられていた体を横抱きにされる。

「飛行船。甲板にアリス(風呪文)撃って」

 眼下に広がっていたのは王城の中庭ではなく、暗闇に溶けた黒い大きな船だった。迫ってくる甲板にシディとレイジの姿が見える。

 今撃ったら確実に当たってしまう。けれどギルは撃てと言った。迷っている暇はない。私は左手に集中して今使える限りの魔力を集める。

『世界の終わり 透に包まれ この手の先を裂き尽くす』

 シディとレイジが私の方に手を向けたのを見て、悟った。

『アリス』

『アリス』

 私と、シディとレイジのアリス(風呪文)がぶつかり、目の前で強い風の流れが起こって、体が一瞬宙に止まる。弾かれたように体が回転して、私は硬いものに思い切り半身を打ちつけた。

「アリア」「アリアちゃん」

 目を開けると、ギルにかばうように抱かれていて、シディとレイジが私を見下ろしていた。

 倒れている地面が振動する。顔を動かしてあたりを見ると、甲板に降りられたのだと、分かった。

「お前ら俺の心配もしろよ」

 ギルが叫んで、私はようやく距離の近さに驚いて慌てて跳ね起きた。けれど全身が痛くてまた倒れこんでしまう。

「アリア、中に」

「ごめんごめん、でもまだ終わりじゃないからさ」

 レイジが言って銃を向けた先には、黒い夜空に白い翼を浮かばせた異形達が十数人いた。私は手をついて、上体を起こす。

「言ったでしょう、何かするなら、私は自分で自分を殺すって」

 背中の翼で宙に浮かんだ異形が手を上げる。

「承知の上だ」

 その手が振り下ろされたのを合図に、残りの異形がこちらへ向けて急降下した。

 今、私は武器を持っていない。魔力を集めて自分の喉元へ当てるのも、もう遅い。

「全員動くな」

 聞き覚えのない声が背後から聞こえて、飛んでいた異形がその場で凍ったように動きを止める。飛行船が風を切る音の中に靴音が聞こえてきて、わずかに視線を動かして見ると、顔のすぐ側に銃がつきつけられていた。

「ガゼル」

 ギルが火のついたように叫ぶ。

「ギル。聞こえなかったのか。お前もだ」

 ガゼルと呼ばれた女性は冷静だった。

 向けられた銃に、冷たい汗が背中を流れ落ちる。おそらく味方か、味方だったのだろうが、芝居なのか本気なのか分からない。

「お前達が力ずくで黒の鳥を奪うなら、今ここで殺す」

 よく通る声が異形に向けられる。

「幸い私は黒の鳥と面識がない。力としては惜しいが、お前達の手に渡るなら正当な理由として殺せる」

 宙に止まっていた異形達がこちらを睨みつけながら一箇所に集まっていく。 

 やがてこちらを警戒しながら、ゆっくりと船から遠ざかっていった。

 異形の姿が見えなくなって、見えるものが完全に夜空と森だけになると、顔の横にあった銃がどけられた。

「ガゼル」

 ガゼルにつかみかかったギルを、レイジが本気で羽交い締めにする。

「ギル、ちょっと落ち着け」

 ガゼルが私を見下ろして、反射で身構えていた。シディが私の隣にしゃがんで背を支えてくれる。

「まず。本当に申し訳ない。謝らせてくれ」

 ガゼルは銃を置いて膝をついて私と同じ目線になった。

「ガゼル・エリオン、ブリューテ・ドウタでギルとレイジの元教育係だ」

 いつか会わせてやると言ったギルの言葉が蘇った。そういえば先程もここに来ていると言っていた気がするが、てっきり男性だと思っていた。

「お芝居ですよね?」

 シディが尋ねる。

「当たり前だ。見ろ」

 ガゼルは置いた銃を取って、グリップの部分を向けた。弾倉が入っていない。

「もちろん弾倉を抜いても味方に銃を向けることは、ありえない。けどあの場は他に浮かばなかった。本当にすまない」

 ガゼルの噛みしめるような言葉に、私は頷いた。

「私も、あれしかなかったと思います。ありがとうございます」

 ガゼルは決まりが悪そうに私を見て、ギルの方へ視線を向けた。

「ギル、殴りたかったら殴っていいぞ」

 ギルはガゼルを睨みつけて、拗ねた子供のような顔になってからレイジに押さえられていた腕を振りほどいた。

「分かってるけど納得できないんだよね。恋心は複雑だねえ」

「ざけんな。落とすぞ」

 ギルの低い声にレイジは笑って肩をすくめる。

「まあ何はともあれ作戦は成功、終わりがよければ全てよしでしょ」

「アリア、とりあえず着替え」

 シディが立ち上がって私に手を差し出す。確かにドレスの裾は盛大に破けているし、右足に鎖が巻きついたままだし、改めて見ると酷い格好だった。

「今度ちゃんとドレス着たところ見せてね。ギルも見たいって」

「てめ」

 ギルは小さく呟いて視線をそらす。

 私はシディの手を借りて立ち上がって、隣で立ち上がったガゼルを見て気付く。

「あの、名前。今更ですけど、アリア・トリニアです」

 ガゼルは微笑する。

「ギルから噂は聞いてる」

「それ以上言ったら締める」

 ギルの声は鋭かったが、先程までの張りつめた空気とは違っていて、少し安心した。

 ふと、気持ちが落ち着いたからか、先程気付かなかったことを思い出す。

「あの、そういえばブリューテ・ドウタは女の人一人しかいないって聞いてたんですけど」

 私はシディを見て、ガゼルを見た。最初に父様からそう聞いた気がしたのである。

 やや沈黙を挟んで、レイジが盛大に吹き出した。

「完全に性別忘れられてますよ、女扱いされてないとか」

 レイジは笑い声の合間に苦しそうに言う。よく見るとギルも笑いを噛み殺しているのか肩を震わせて顔をそむけていた。

「それ、陛下か?」

 ガゼルは有無を言わさぬ顔で私の方を向いて、私はごまかせず頷いていた。もしかして言ってはいけないことを言ってしまったのかもしれない。

「陛下もとうとうぼけたか。よく進言しておこう。そこ、いつまで笑ってる」

 ガゼルがギルとレイジに叫ぶと、レイジは笑い声を噛み殺して返事をしたが、今度はギルが吹き出した。

「お前ら、無事に帰りたくないようだな」

「俺笑ってないじゃないですか、ギルだけでしょ」

「てめ、逃げようとすんな」

「いいから二人共ここに座れ」

 二人分の不満の声が上がる中、私は笑ってシディの後について船内へ歩き出した。

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