第2話 それが一番大変なんですよ
次の日、またしても俺の昼休みに邪魔が入った。
言うまでもなく、あいつである。
「せんぱーい!来ちゃいました」
普段なら平和な教室も爆弾投下により、ざわついていた。
「何のつもりだ?」
「先輩とお昼食べようかなって」
あかりはどこまでもあざとく、可愛さアピールのように言い放つ。
「あれって霜乃あかりじゃない!」
「こんなに可愛いのか!!」
「何で結城と親しそうにしてるんだ」
辺りには疑問が飛び交い、俺は注目の的になっていた。
俺の表情は曇っていったが、対称的にあかりの表情は眩しかった。
「・・・・・じゃあ、食堂行くか」
「はい」
俺は即座にその場から離脱を選択した。
ある程度注目浴びるほどの人気だったんだな。
関心しつつも、今回に関しては全くありがたくなかった。
先程よりはましではあったが、食堂でも注目されていた。
俺たちの関係性、繋がりが全くわからないからだ。
実際俺にもうまく説明できる自信はなかった。
席に着いた俺は、一番最初に疑問を投げかける。
「で、目的は?」
「先輩の焦った姿が見たかったんですよ。昨日は冷静なまま流されてばっかりだったので」
「お前なぁ・・・・」
無邪気な笑顔が本当にそれだけの理由なのだと物語っていた。
それだけのためにあんなことしたのか。
その行動力を他の所に回せよ。具体的には光輝と知り合うこととか。
「少し焦ってくれたので、楽しかったです」
「俺は手伝う気が少し失せたわ」
「そんなこと言うんですか?」
何かを企んだような表情で俺に再度確認する。
「・・・・なんだよ」
彼女は突然立ち上がり、目を潤ませる。
「おい、何をする気―――――」
「先輩ひどいです!何でそんなこと言うんですか?」
「・・・・・・・・」
嘘は言っていないが、周りには全く違うニュアンスで伝わってしまうことだけは理解できた。
本当に女って生き物はずるいよな。
生物の運命(さだめ)なのかもしれない。
「わかった、手伝う!それにちゃんと考えてきた!!」
「本当ですか?私嬉しいです!!」
これで誤解は少しは解けただろうか。
彼女が一瞬ほくそ笑んだのを決して見逃さなかった。
俺はこういうタイプが弱点なことを知った瞬間だった。
「はあー・・・・・」
なぜ彼女の手伝いをしようと思ったのか分かった。
本能的に逆らっても無意味なことを理解していたのだろう。
そう考えると少し悲しくなった。
「女の子前に溜息は失礼ですよ」
「これぐらいは勘弁してくれ・・・」
「まあ、いいでしょう!」
どこか得意げに答える彼女に俺は突っ込む気力すら残ってなかった。
どっちが上かわからなくなってきた。
ホント、敬っているのは言葉遣いだけだな!
「それでです。考えてきたというのは・・・・」
「ああ、作戦はこうだ」
「はい」
「光輝を遊園地に誘う。俺とお前と三人で行くと説明しておいて、当日俺がキャンセルする。
するとどうだ、自然にお前たち二人だけになる!!!」
なんて完璧な作戦だ。
「・・・・・・・は?」
嫌悪に満ち溢れた表情とどこから出したかわからない低い声に恐怖すら感じた。
さっきの声を録音して、放送で流してやりたい。
「馬鹿なんですか!?だからモテないんですよ!!」
「そのどこ情報かわからない『モテない』って罵りやめようぜ!?」
実際そうだから否定しにくいんだよ。
「どこの馬鹿がそれに引っかかるんですか!?そもそも三人で行く時点で不自然すぎですよ!」
「そこは・・・えーっと・・・・・・・うまく誤魔化す的な?」
「・・・・・・当てにした私が馬鹿でした」
「そこまで言わなくてよくない?これでも一生懸命考えたんだぞ」
「一生懸命考えてこれってひどすぎですよ。これなら適当って言われた方がましでした」
「・・・・・・・・・」
そんなに?地味に傷ついたわ。もう立ち直れないわ・・・・。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・はあー、土台はそれで行きましょう。私も友達を誘うので、ダブルデートというわけで」
あからさまに落ち込む俺に言い過ぎた気持ちもあったのか、フォローをする。
これがモテる秘訣なのだろうか。
少し俺の心も救われて心を開きそうになるが、今までのこととすべてうまく相殺された。
「ん?」
「どうしたんですか?」
「それってつまり、俺も行かないといけないってこと?」
「もちろんです」
「当日キャンセルは?」
「したらわかってますよね?」
「喜んで行かせていただきます」
目がすべてを訴えかけていた。
したら殺すと。
放課後、昼の続きで、詳しく作戦をまとめることになった。
「俺ダブルデートなんてしたことねーぞ」
「先輩はダブルデートどころかデートすらしたことなさそうですもんね」
「そうやって笑顔で容赦なく俺の心を抉らないで」
笑顔がトラウマになりそうだわ。
昼の時から容赦がなさすぎるぞ。
「事実ですよね?」
「・・・・・はい」
本人に認めさせるとか、鬼か!
攻め落とされる気持ちってこんななのか・・・。人に優しくしよう。
「デートしたことないから、具体的に何をしたらいいのかもわからないし、邪魔にしかならないと思うぞ」
「・・・・ここにきて開き直るんですか。まあそこは大丈夫です、私と光輝先輩を二人にしてくれたらいいんです」
俺の方は成功させる必要はないってわけね・・・・。
「それなら、友達にも手伝ってもらって―――――」
「それは無理です!」
「・・・・・ちなみになんで?」
呆れたように言葉を放つ。
「いいですか?光輝先輩はこの学校の憧れの的なんです。その人を落とすのに協力してくれる人なんていませんよ」
「ということは、俺がちゃんとその女の子を引き付けておかないといけないってことか」
「そうなりますね」
『それが一番大変なんですよ』みたいな顔をするなよ。
それは自覚してるんだよ。
「しょうがないです」
「ん??」
彼女には考えがあるようだったが、俺には全く何も思いついていなかった。
「光栄に思ってくださいね。私と―――――」
「・・・・??」
「デートをしましょう」
「・・・・・・・・・・・へ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます