第2話狐の嫁入り
狐の嫁入りとは、日が出ているのに
雨が降ること。別名「お天気雨」
それが狐に騙されているようだということで、狐の嫁入りと名付けられた。
古来より吉兆を表し、縁起のあることだとされている。
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私は今日結婚する。挙式をあげる。
白無垢に包まれた私の顔は、
自分でも驚くほどに美しかった。
結婚相手は見合いで親が決めた。
名家の坊ちゃんだ。
可もなく不可もなし。特徴は余りなく、
でも、優しそうだった。
「粗相のないように。」
「名家の御子息だ。
しっかりやるんだぞ。」
「後継は必ず作れ。必ずだ。」
「慎ましくしていろ。
せいぜい捨てられぬよう。」
私はこの古すぎる考えを持った厳格な父に
全て従ってきた。
女を自分通りに定める父が嫌いだった。
私をどうせ「娘」ではなく、
自分の呉服屋の経済活動を活発にするためだけの「駒」としか思っていないんだ。
父の思い通りにはなるものの、
そんな父から離れたいがために、
私は結婚を承諾した。
支度が整った。
そろそろ新郎新婦の花嫁行列をしなくては。
母は入場の直前に私に小声でこう言った。
「お父さんね、あんな素っ気ないことばかり
お前に言ってたけどね、
縁談が決まったその日の晩から、
お前にあの人が相応しいのかを悩んで悩んで…
やっと許しの答えを出したのよ。
後継を産めというのも、
可愛い孫が早く見たいからよ。
素直になれないのよ。許してやってねぇ。」
私は母が、結婚に対して安心させるために
取り繕った嘘だと思った。
こんなことをしなくても、
とうに腹はくくっている。
そんな。まさかねぇ。
振り返って父の顔を見てみよう。
きっと自分の将来の安泰を感じて満足そうな自信の笑みを浮かべているに違いない。
私は振り返った。
父は下を向いていた。
肩が細かく震えていた。
彼は泣いているのだ。
私は鳥居をくぐった時に涙が溢れた。
_____きっと幸せになろう_____
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狐の嫁入りとは、日が出ているのに
雨が降ること。別名「お天気雨」
それが、狐に騙されているようだということで狐の嫁入りと名付けられた。
古来より吉兆を表し、縁起のあることだとされている。
また、花嫁が式の際に、
ハレの日にも関わらず、涙を流すことを
お天気雨の様子と掛けて、
「狐の嫁入り」と言われる。
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