短編・短編詩集
九条馨
第1話雨女
私が生まれた時、雨が降っていたらしい。
私は雨が降った後の、アスファルトに沁みた匂いが好きだ。
街全体が消毒されたみたいで。
鉛のような色の雲が語りかけてくるような。
雨は私と一緒に生きてきた。
初めて親友と大喧嘩した時。
歌のテストで満点をもらった時。
初恋の相手に告白して振られた時。
入試当日で。
初めて男の子に告白された時。
貴方と付き合い始めた日。
結婚式の当日。
私の子供が生まれた時。
私は貴方と「私は、きっと雨女だね」と言って笑いあってた。
雨女っていう言葉結構気に入ってるのよ?
そして、
貴方が死んだ日。雨が降った。
雨はまだ止まない。
貴方の死んだ次の日も。
「君より1日、僕は遅く死ぬよ。
だって君が死ぬときは酷く
雨が降るだろうからねぇ。
君と初めて会った日は確か、
何故か晴れの日だった。
だから、
また会うときは、晴れがいいよ。」
貴方の言った「晴れ」の約束は___________
この雨に流されてしまうのでしょう。
この雨が止まなければ良いのに。
晴れたら、貴方に会いたくなってしまう。
鉛の雲は語ります。
「君は本当に雨女だねぇ。」
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