花好きだった記憶


先日、花を見に行ったんですよ。


花見。


いえいえ、桜じゃないですよ。普通の花。


私、草花が好きでね、良く見に行くんですよ。


昔はあちこちに野生の花が咲いていたんですけど、最近はめっきり減っちゃいましてね。


意識して探さないと見つからないもんですよ。


人工的な花とか、排気ガスまみれの花なんかはね、場所によって見かけることもあるんですけどね


天然の自生してる花となると、これがなかなか運命の恋人かってくらい、いないもんです。


そうして苦労して天然の美しい花に出会うとね、やっぱり嬉しくてヨダレが出るほど愛おしく感じるんです。


変わった趣味嗜好を持ってるって自覚はあります。


その日は3時間くらいかかったかなー、散々飛び回ってようやく見つけられたのは。


無惨に捨てられた雑誌のね、男は見た目より中身で勝負だ! モテる趣味ランキング! なんて記事を読んじゃうくらい落ち込んでて


半ば諦めかけてましたからね、嬉しくて飛び上がって喜んじゃいましたよ。


でね、そこには先客がいたんですよ。一目で気付きましたね同業者だって。まあ仕事じゃないですけどね。


しかもね、女性。


美女。絶世と言っても良い。


あれれー? これ運命の出会いなんじゃない? なんて有蝶天。


拾い読みした雑誌にも書いてありましたけど、見た目に自信が無いヤツは共通の趣味で勝負だ! なんて記事を思い出してね


今までずっと気持ち悪いって人から言われてきた私ですけど、見た目よりも共通の趣味、コレだー! って思いまして


思いきって声かけたんです。


「花、好きなんですね。僕はあなたと話す気なんですけど」つって


彼女何て言ったと思います?



「当たり前でしょ、蝶なんだから」


つって!


あ、私見ての通り蝶なんですけどね、いやー彼女の言葉には背筋が凍る思いでしたよ。背筋、無いんですけど。いや、あるのか?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る