第4話 花びらは力がみなぎる
《百鬼夜行
自身の百鬼夜行をランダムに召喚できる。
召喚するには、大量の妖力が必要である。》
これか……妖力?妖怪?そんなものは、桜の説明にも、桜のメモにも書かれていなかった。
召喚能力ってのは、強そうだとは思うけど……それよりも、妖怪のほうが気になる。
これを鑑定すれば、謎も解決するかもしれないし。
ああ、だから《鑑定》するように書いてあったのか。
妖怪と、妖力を《鑑定》してみるか……?というか、文字を《鑑定》できるのだろうか。
いや、男は度胸狐は愛嬌だ!
《妖怪
人でもなく、魔物でもない存在。
詳細不明。》
《妖力
妖力。
詳細不明。》
全然解らなかった。特に妖力。
これは恐らく《鑑定》の力が足りないのか、妖怪が《鑑定》の知識に存在しないかのどちらかだろう。
これは、確かめておく必要がある。もし前者だった場合、道具の力ではなく僕自身の力不足が原因だろう。なぜなら、このイヤリングは桜がくれたものだ、神が持っていた道具が力不足とは考えにくい。
だが、たとえ力不足だったとしても検定結果が詳細不明だと今後使う上で不便になる。
《雪白
狐の妖怪の特殊固体。神から名を授かった者。
詳細不明》
ただ、僕が妖狐で妖力を持つというのはわかった。
でもこの妖力、《鑑定》せずとも直感で……本能でわかった。妖力がなくなれば消えてしまう、と。
妖力とは、妖怪の力であり、存在そのものなんだろう。
《草
草。特に特徴はない。》
《鑑定》で、どの程度消費するか確かめてみよう。
そして、鑑定すると同時。ほんの少しだけ体から何かが抜ける感覚。感覚的に力が減ったのが解る。
これは《鑑定》はしばらく禁止だな。へたにつかって、消えてしまったら元も子もない。
まずは自分を、理解する努力かな。
ここで、冒頭に戻る。
妖力は、食事をすれば回復した。
ミミズは、食べても回復したように感じなかったから、回復しないものと思ったけれど僅かなだけだった。
しかしねずみはすごい。ミミズよりもはるかにだ、美味しくはないけどミミズよりましだ。これからはこういう獲物を沢山食べていって妖力をガンガン増やしたい。
何故なら……
《百鬼夜行
召喚には膨大な妖力が必要》
膨大……?ミミズとかだったら、森を食い尽くさないと無理じゃないの?
という、結果だったからだ。
僕の能力は召喚のみ。それなのに妖力が足りずに召喚できないというのはキツイ。
しかも、ランダム召喚だから使える奴じゃなかった時のため、何度か使えないとだめだ。
しかし、膨大に必要……。
どれくらい力を蓄えれば良いかはわからないが……恐らく魔物を食べればもっと大量に妖力を獲得できる。けれど、僕はまだまだ弱い。
結果、自分を知るために実験したかったが、妖力が気になってあまり知ることができなかった。
現在理解できたのは、物を食べて妖力を回復すること。いくら食事をしても満腹にならないのはこれが原因らしい。
時間が経過すると妖力を消費すること。
そして、妖怪は妖力そのものである、ということ。
これは、外に出ているときに傷を負って気がついた。その傷が瞬時に治り、その代わりに妖力が減少したのだ。
つまり、妖怪は妖力が命であり、妖力がある限り不滅ということだ。
……これは確かに魔物でも、人間でもないな。それこそ、精霊のような存在なのだろう。この世界の精霊は、生物ではなく意思を持った自然現象のような存在だ。メモに書いてあった。
とまあ、これぐらいが理解できた僕の状態だ。妖怪は僕しかいないので確証がもてないが、恐らく間違ってないだろう。
僕の現状が理解できたのは良いけど、問題は妖力がためられないってことだね。
普通にいきてても妖力を消費するし、怪我しても消費する。これじゃあ、大物を狙って狩りに行くのも難しい。
ミミズ生活じゃあ10程度しかたまってなかったわけだし。
完全に詰んでないか?《百鬼夜行》って、配下を召喚できることが前提で、それ以外の能力はないし……
今住んでいる洞穴には、ミミズしかいない……黒光りする認識するのもおぞましい何かがいたけどあれは無理。あれを食べるくらいなら消えたほうがましだ。
あー、だめだどう考えても今のままでは桜に会いに行くなんてできない。
……桜。
ふと桜に会ったときのことを思い出した。
あの時の記憶に何か大事なものがある気がする。……桜は、色々しゃべるけどそのほとんどが僕にとって役に立つ言葉だった。くれたイヤリングも大事だし……
そう、考えていると洞穴の隅にあるものを見つけた。それは、僕の耳についているものとそっくりなもの。
桜の花びらがおちていた。
あれは、僕がおどし……いや、桜が好意でくれたものだったね。
あの花びらは口に含んだだけでも空腹が消えた。妖力は回復しなかったけど、それは飲み込まなかったからでは?
そんな確信とともに花びらを鑑定してみる。
《神桜の花弁
神の力を浴びて神聖な力をまとった桜の花びら。
強大な力を感じる》
おおう、なんだか想像よりもすごいものが出てきた。
でも、これを食べればきっと僕の役に立つ。桜がくれたのは、これを見越してのことなんじゃないかと疑いすら出てくる。
さっそく食べてみるべきだ。
もしゃもしゃ
やっぱり味はない。
だけど、少しずつ飲み込んでいくうちに力があふれてくるのを感じる。
ゴクン
全部を食べ終えた。
ああ、これはすごいものだ。ミミズやねずみなんかとは比べるのもおこがましい。
『規定の妖力に達しました。妖力を使い自身の進化を行いますか?』
ちょうど飲み込んだら、突然声が頭の中に響いた。
えっと、なになに進化?魔物は進化するってメモに書いてあったけど、妖怪も進化できるのか。
……なるほど、これで進化を続けていけば、いずれは桜に近づけるのかな?
でもこれは悩む。果たして進化すべきか、それとも《百鬼夜行》を使うか。
進化すれば恐らく強くなれる。けれどどれくらいの妖力が必要かはわからない。それに、どの程度強くなれるか……進化に使った妖力を回収できるほど強く慣れるのか?
対して《百鬼夜行》。こっちは完全にギャンブルだ。僕の配下になるであろう妖怪を召喚する。強い妖怪なら良いけど、弱い妖怪だったら最悪だ。
天狗や鵺とかが来れば良いけど、小豆洗いとかすねこすりが来たらどうする……?
たっぷり悩んだけど、《百鬼夜行》をすることに決めた。
理由は、桜が進化については教えなかったから。僕は桜を信じよう、僕が始めてであった神。桜が教えてくれたこの力で、僕はこの世界を生き抜いてやる。
能力の使い方は、学ばずとも解った。それはきっと、手足の動かし方を知っていることとおなじなんだろう。
僕は、妖力を込め召喚を行った。
「我が声に答えろ物の怪よ!
我と縁を結び、百鬼夜行の一部となれ!」
僕の込めた妖力が、純白の雫となり地面に波紋を作る。周囲に霧が満ち、一点に収束していく。霧はやがて一つの形を成す。
僕の目の前に、純白の鳥居が具現化した。
……呪文は少し恥ずかしかったが、そのあとにおこった現象に驚いた。実際ちょっとビビッて逃げそうになったし。
けど、これで終わりじゃあない。むしろここからが本番だ。
鳥居の中は霧が満ち、何が出てくるかはまだ解らない。
緊張する時が過ぎ、霧が揺らぐ。
霧の中から、手が現れる。
その霧から出てきた手は、皮も、肉も、血も通っていない、骨だけの手だった。
いや、手だけではなかった。腕、顔、体も全てに肉がついておらず。ただただ白い骨だけの存在が霧の中から出てきたのだ。
骨……骸骨は全身で4mほどあり、小さな洞穴ではたつこともままならぬ大きさだった。
どうやっているのかは解らないが、骸骨はひざまずき声を発する。
「我が召喚主。
どうぞこの私を、主の矛と盾としてお使いしてください」
おお……すごい忠誠心の高そうなのが来た。なんていう妖怪なんだ?魔物だとスケルトンとか何だけど、妖怪は違うだろうからなあ。
「僕は雪白。キミは?」
「はっ。
申し訳ありませんが、私には個人の名前はありません。妖の名はがしゃどくろ、と申します」
この日、僕の元に始めての配下が来た。
その妖の名はがしゃどくろ。強靭な骸骨の妖怪である。
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