第3話 唐津湾と三毛猫丸

1817年9月16日夜明け

唐津湾

三毛猫丸は、船問屋『三毛猫屋』の旗艦である。船団は嵐を避けて、唐津湾の東の入江に碇泊していた。思えば、博多湾で嵐の予兆はあった。

博多湾で嵐をやり過ごさなかったのは、早く陸に上がり安心したかったらである。


三毛猫屋 主人 伊藤義之助は、

必ず航海に出ていた。人手不足ではない、海が好きなのだ。

三毛猫屋は、唐津で一二を 争う廻船問屋である。そして、三毛猫丸をはじめ5隻の船団で商いをしていた。


嵐から、皆を守る為、義之助は、全員に矢継ぎ早に通達をした。

『各船、綱でつなぎ錨を下ろせ』

『舳先を風上に』

『無事に陸に上げてやる。陸にあがったら、嫁さんの乳揉めるでぃ。がんばれ』

ひとみの、笑顔が浮かんだ。緊迫感の中に笑いが起こる


『親方が言うんだ、大丈夫だ。』

『にゃーにゃー』

ネズミ除けに乗せている猫の三毛が相づちをうつ。皆は、安心した。


次の瞬間。悪魔が牙を剥いた。


三毛猫屋の船団の沖合で、大型船が、座礁沈没。沈み切らなかった大型船の船尾が、船団に突っ込んできた。


緊急通達

『各船縄を切って 錨も切ろ』

『前方の漂流物を避けろ』

『各員離船せよ』


三毛猫丸は、縄を錨を、切り離し

漂流物に突っ込んで仲間の船の盾になって時間を稼ごうかとした。


ドカン バリバリ

壊滅的な打撃は瞬時に起きた。

大型船の船尾は、三毛猫丸に突っ込んでそのまんま浜に乗り上がった。

義之助は、左半身を角材につぶされた。

一緒に乗船していた水夫は、唐津の海に呑まれ蒼白い炎になった。


残りの僚船は、フラフラしなからも沈没は免れた。何人もの水夫は波にさらわれ、蒼白い炎になった。


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