第3話 マニフェストゲーム
「ゲームの説明を始める前に、なぜ皆様がプレイヤーに選ばれたのかを説明しましょう。皆様は十条中学校裏サイトの存在をご存じですか?」
藪から棒にラブは八人のプレイヤーに尋ねた。すると、山吹は右手を挙げる。
「あれなら聞いたことがある。一年くらい前に突然できた会員制の掲示板サイトだろう。アタシも何度か書き込んだことがあるし」
山吹の簡単な説明を聞いていた黒墨凛は、一瞬だけ顔を曇らせた。その表情の変化を、吉川敦彦は見逃さない。
まさかそんなサイトがあるなんて聞いたことがなかったと、東は驚いていた。だが、それとゲームの関連性が分からない。他の面々も疑問に思い首を傾げていると、ラブは説明を続けた。
「このサイトの会員数は僅か五十人程度。十条中学校の全校生徒の約二割しか利用していないのですよ。だから、知らなくても当たり前です。このサイトで先月行われたのが、会員数五十人突破記念緊急アンケートでした。
質問は、十条中学校の生徒、もしくは先生の中で彼氏彼女にしたいと思うのは誰? 会員は男子と女子一名ずつを専用のサイトに書き込んだ。そうでしたよね? 山吹様」
「ああ。そうだったな」
「そうです。この場にいる八人は、男子の部と女子の部でベスト4に選ばれた八人なのですよ」
「ウソだ。確かにそんなアンケートはあったが、まだ結果は公表されていない……」
唯一裏サイトの存在を知っていた山吹は反論を口にしながら、ラブの正体を察した。そして、彼女はラブの顔を指差す。
「お前、あの裏サイトの管理人だな? まだ公表されていないアンケートの結果を知っているのは、管理人だけのはずだ」
その推理を聞いたラブは白を切る。
「さあ、どうでしょうか? 兎に角、皆様は裏サイトの会員五十人によって選ばれたってことですね。一日目のゲームでは、まず獲得票数に合わせたハートマークを端末に送るところから始めます」
ラブは端末のスイッチを押す。するとプレイヤーの端末が一斉に振動した。真紀が端末を見ると、そこには『ハート十個獲得』というメッセージが表示されている。
「さて、ゲームのルールはシンプルです。一時間に一回のペースで行われます。最初の五分間で端末を使って、異性に投票してください。一人二票まで投票できます。迷ったら二人に一票ずつ投票することも可能です。投票タイム終了後、皆様は自分の獲得票数によって決まるマニフェストを、四十五分以内に達成しなければなりません。尚、時間内にマニフェストを達成できたら、残り時間は何をしても構いません。因みに、マニフェストは全て異性との絡みになります」
静かな教室の中で、八人のプレイヤーたちは黙ってルールを聞いていた。その間もラブはルールを淡々と説明していく。
「マニフェストを達成できたらハートが五個増えて、失敗したら五個減る。この流れを最大で十二回繰り返します」
「最大で?」
これまで沈黙と貫いていた黒墨凛が疑問を口にする。それを聞いたラブは、両手を叩いた。
「そうです。ゲームのクリア条件は、二人脱落するか、最大十二回のゲーム終了時点で生存しているか。この二つのクリア条件のどちらかを満たしたら、一日目のゲームは終了です。早く終わったら、スケジュール変更でゲームの開催期間が一日に短縮されるかもしれませんね。またハートは飲食物や、全六種類のアイテムの購入などにも使うので、大切に使ってください。それとアイテムは一度に二つまでしか重複して使えないし、オープンとバンク以外のアイテムは、二回連続で使用不可です。相談は大丈夫だけど、暴力行為は禁止だよ。ということで練習をします」
一通りのルール説明が終わり、ゲームの練習が始まる。この時のプレイヤーたちは知らなかった。これから行われるゲームに隠された悪意に。
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