2話 名も無き少女と人形と

あのふざけた開戦の合図で全ての人間は意識を失った

それは私も例外ではなく一応人間と解釈はされているらしい


「さて、ここはなんなのでしょうか?」


ここは真っ暗な空間にPCが一台おいてあるだけなの場所なのである


「パソコンを見ろということなのでしょうね」


パソコンを見ると神が言っていた人形と言われる物が大量に映っていた

だがその大半が持ち主決定済みになっていたために私が選べる人形は残り僅かなのだ


「困りましたね」


ページの下にいくと限定人形の文字が見えた

私は迷わずその人形をみた


「これは…」


その人形は名前がなかった

そして私も名前がない

妙に親近感が湧いた


「私には勿体無いですね…でもこれにしましょう」


その人形をクリックし契約を結ぶ

契約完了の文字が浮かび視界が真っ白になる


目を開ける

戻って来たのがすぐわかった


「さて人形はどこにいるんでしょうか?」


契約を結んだ人形を探す


「ここにいる」


後ろから声がした。振り向くとあの空間でみた姿と同じ姿の人形が立っていた


「お前が俺の契約者か?」

「えぇ、私は貴方の契約者、名前は102番」

「お前は名前が無いのか?」

「無いですよ、何せ私は人間に一番近い化け物ですから。それに貴方だって名前は無いのでしょう?」

「俺には必要の無い物だからな」

「じゃあこれから必要になりますね」


私が人形と話をしている間に後ろから敵が近づいて来ていた

敵意を持っていなければ見逃していたのにわざわざ殺意も敵意も全開で近づいて来るなんて


「よう嬢ちゃん…俺と戦争して死んでくれねぇか?」


男は人形を連れてそう言った

なら返答は決まっている

私は男を睨みながらこう言った



「えぇ私と一緒に戦争しましょ?」



私がそう言った次の瞬間、男は剣を取りだし私目掛けて走ってくる

人形の方は私の人形に向かっている


「一対一に持ち込むのは良いんですが、力量の差を理解してからしてくださいね?」


私はそう言うと頭の中に自分の召喚獣を思い浮かべた


「来て、絶縁鳥」


すると魔方陣が現れる

その中から1羽の鳥が出てくる


「そんな鳥で何が出来る!」


私は男が振り下ろした剣をよけ、絶縁鳥に指示を出す


「あの剣を切って、絶縁鳥」


絶縁鳥…私が初めて創った召喚獣。その能力は分離、切り離す事に特化している。それはあの剣も例外ではなく


「そんなちっせぇ鳥でこの剣が切れるかよぉ!」


剣が絶縁鳥と触れた瞬間、剣が切れた。


「な…!?」


男は驚愕した様子で自分の剣を眺めている。

なら優しい私は説明してあげる事にした


「その鳥は切り離す事に特化しているんですよ。簡単に言えば剣を繋いでいた物を切り離したんです」


私の回りを元気そうに飛び回る絶縁鳥を見て男は額に大量の汗をかいていた


「鳥を出した…という事はお前召喚師なのか?」


怯えた様子で男が聞いてくる。だから私は笑顔で答えておく。


「やっと理解しました?貴方って状況把握能力足りないですよね。よく言われません?」


彼の言った召喚師とは世界に私を含め五人しか居ない召喚能力を持った人の事である


「別に殺しはしませんよ。それより貴方の人形は大丈夫でしょうか?」

「自分の人形の心配はしないのか…」

「まぁ貴方の人形を壊さないように倒せと命令してますし貴方が敗退する事はないでしょう」


102番の人形視点


俺を狙った人形を相手にしていると頭の中にアイツの声がした

『その人形、壊さないように倒して』

無茶ぶりだろう

倒すのは簡単だけど

「はぁぁぁぁ!!」

考え事をしていると斬られかけた

まぁ無駄なんだが

俺は珍しい事に特殊能力と謎の剣を始めから持っていた

特殊能力は反発…反射とは少し違うが大体は一緒だ

俺は能力で相手の人形の攻撃を全て防いでいる

流石に限界を超えた攻撃には耐えられないが、まぁこの人形が出せる威力の攻撃じゃ絶対に無理なんだが


「さて、そろそろ終わりにするか」


能力を使って空気の槍を作る

それを人形目掛けて発射する

「え、何を言って…」

その槍は俺の最大の手加減で壊れないように調節してから投げたから壊れる心配はない


槍が命中して倒れている人形を抱えて俺は自分の主の所に向かった


102番視点


「あ、帰ってきた見たいですね」

私がそう言うと男は「あぁそうだな」と何故か死んだ目をして言っていた


さて私もさっさとやること終わらせなければ

私は小さくこう呟く

「略奪の右手」

右手が化け物の手に変わる

男はそれを見て

「殺すなら殺せ」

と、言った

「殺しませんよ。奪うだけです」

私はそう言うと男に右手を振り下ろす

「これですか」

私は右手に掴んだ物を破り棄てた


「貴方は戦争に参加する権利は消えました。けれど人形の所有権は消えていません」

「そんな訳ないだろ!?戦争に参加する権利を失ったなら俺の人形は壊れているはずだ!」

「信じられないなら自分の目で確かめて下さい」


男は渋々といった様子でステータスと呟いた

「消えてる…参加する権利だけが消えてる」


男は神を見るかの様な目で

「嬢ちゃん…てめぇは何者だ?」

そう聞いてきた

「どこにでもいるありふれた、ただの化け物ですよ」

そう私は答えた


それから人形達が私達の元に来るまで会話はなかった



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