語らずの夜

 深遠なる夜のステージで

 虫たちは無心で演奏し続けている

 淡く月の光注ぐ忘れられた野原で

 静かに時間だけが過ぎていく


 こんな誰も通らない時間に

 ただ風だけが通り過ぎていく

 昔は有り触れた田舎の風景

 目を閉じても閉じなくても

 満たされていくのが分かる


 心震わせて 太古からの繰り返し

 山に 川に 谷に 海に

 体の中にも流れる命の本質に

 心の中にとうとうと脈づく何かに


 やさしいまなざしは今夜も世界を白く染める

 人々の生活音も遠く聞こえる分には心地良く

 海の上の光たちはうまく自然に溶け込んで

 見上げた無数の星々に心配ないと励まされ


 心震わせて この秋の夜空に

 何の変哲もない当たり前の風景

 平穏無事なこの夜に祈ります

 ずっとずっとこの調和が崩れませんように


 海の水が少しずつ増えていく

 昨日までの当たり前が明日には違ってく

 それは予定されていた事なのか

 月はただ黙って見守るばかり

 虫はただ無心に演奏するばかり

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