謎解きのちに契約
オセロは地図に夢中になっていた。正確には、その地図の違和感に、だった。
地図なら、他でも見たことがある。思い出したくないがアンドモアでも習った。
このデフォルトランドには正確な地図がある。なにせここはこうなる前はちゃんとした国の一角、人類未踏の未開の地ではないのだ。古いが、地図ぐらいある。
そのオセロが見て覚えてる地図と、この地図とは何かが違っていた。
「あのねオセロ」
あ!
「わかった!」
思わずわかって声をあげ、それを確認するため邪魔なパンツをずらす。
「チョット!」
ヤッパリだ。
「逆だこれ」
「は?」
「お前、地図見たことあるか? 背中のじゃなくて」
「あ、はい。何度かは」
「ならここの北に双子島があるのは知ってるよな?」
「それは、はい」
「双子島はまんま二つの島が並んでるんだが、それがここだ」
北西の角、左上の肩の辺りを、わかるように指で押す。
「それとは別に南東の方にも同じように並ぶ島があるんだ。無人島で名前も無いんだが、それがここだ」
南東の角、右の腰と尻との間位を指で押す。
「アノ」
「で、だ。北西の双子島は南北に縦に並んでいて、南東の無人島は東西に横に並んでるんだ。他の地図だとな」
「……それってもしかして」
「普通、地図は北を上に描くが、お前のは北と南を逆に描いてあんだよ」
▼
……ルルーは言葉もなかった。
物心つく前から散々振り回されてきた地図が逆さまとか、笑い話にもならない。
エックシ!
くしゃみをして、遅れてルルーに身震いがきた。夜の海風がここまで吹き込んできて、半裸の体を冷やしてた。
「もう服着ていいぞ」
オセロは言って指を退かした。
それで、いそいそと服を着なおす。
「で、俺はそこまでお前を連れてけばいいのか」
「え?」
リボンを結び直してたルルーは、オセロの提案を考えもしなかった。
ただ自己紹介をしただけで、具体的なことはまだ何も考えてなかった。
ルルーが考え出す前にオセロが続けた。
「それなら、まぁいいぜ」
「え!」
考えが追い付かない。
「流石に移動は自分の足で歩いてもらう。殆どが野宿で食い物は保存食か現地調達、細かな所はその時に応じてだが命の関わることは此方に一任ってとこかな。出るにしても、色々と準備しないと」
「それって」
考えが追い付いて、ルルーがオセロを見上げると、オセロが右手を差し出してきた。
「何で?」
「あぁほら、握手って言って話が纏まったらお互いの手を握り合うんだよ」
「そうじゃなくて、何で受けるの?」
思わずルルーは訊いていた。
「何でって、そりゃああれだ。金や物なら、最悪盗めるが、お前のお話しは、どうすりゃ手にはいるかわからない。それに、だ」
オセロは笑う。
「お前といた方が楽しそうだからな」
屈託のない笑顔は、正に悪魔だ、とルルーは思う。
人のことなんて考えてもいない。
だけど、だからこそ、ルルーはオセロを信じられた。
ルルーは黙ってその小さな手をスカートで拭って、オセロの大きな手を握り返した。
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