霧笛

 田畑をまっすぐつらぬく電車に乗って高校へ通った。近づくにつれ同じ制服が増えてゆき酸素が減った。電車は年寄りの蛇だ。わたしたちをまるのみし、体内は暖房でぬくい。血ではない。いっぽうMは自転車通学で、すきなだけ息を吸って吐いてしていた。かさつく頬が赤くなってゆく、わたしは見なくても見ていた。わたしたちは部活でホルンを吹いていた。

 電車はしばしば霧で止まった。川に囲まれているから霧をためやすい町で、わたしは朝練に遅刻しがちだった。

 視界が晴れるのを、蛇はおとなしく待っていた。腹の内側から見たくさはらは白く、すべてがじっとり濡れていた。ここは海で、岬まで遠いのだ。ホルンの霧笛を想像した。あの子は灯台守だ。



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