北の魔女

 伯母の納屋にはどぶろくの瓶が並ぶ。密造だよね? 疑問はにやにや笑いにかき消された。

 畑の真ん中の家は風に揺れ、泊まりに行くたびこわかった。きっとオズの魔法使いみたいに飛ばされてしまう。伯母の世話する鶏たちも、嵐をおそれて騒いだ。おまえのためにさばいたのだと新鮮な鶏刺しを出されて泣いてしまった。一度だって食わなかった。

 腰が伸びなくなった伯母をときどき訪ねる。どぶろくは炊いた米を発酵させて作るのだという。ぷつぷつ泡が爆ぜてゆっくり酒になり、おがくずあたまにも夢を見せる。おれのためにぽきんと折ったであろう首。

 今なお魔女の手は白くて大きい。ひみつの白濁は、生でやると酸味がしみた。鶏小屋はとうにからっぽだ。


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