でえくしごと
大工の祖父が近所の牧師さんと親しくなったのは家の改築を担ったからで、信仰心によらない。祖父は牧師さんを先生と呼び、教会に出入りしては長話した。互いに七十を過ぎ、多少の仕事はするがだいたい暇だという点が共通していた。勤労と休みとがまだらな人生だ。
「キリストさんの親父は〝でえく〟だったらしいぞ」
「なんで日曜が安息日か知ってるか」
にわか仕込みの知識を披露してみせ祖父は得意げだった。でえくというのは大工のことだ。江戸ッ子なのだ。
牧師さんは物知りでこの世のほとんどに精通したという。亡くなってしまって祖父はつまらなさそうだった。暇な日が増え、だからというわけではないが翌年祖父も逝った。
安息していてほしい。
了
------------------
#Twitter300字ssに参加・お題:休
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます