でえくしごと

 大工の祖父が近所の牧師さんと親しくなったのは家の改築を担ったからで、信仰心によらない。祖父は牧師さんを先生と呼び、教会に出入りしては長話した。互いに七十を過ぎ、多少の仕事はするがだいたい暇だという点が共通していた。勤労と休みとがまだらな人生だ。

「キリストさんの親父は〝でえく〟だったらしいぞ」

「なんで日曜が安息日か知ってるか」

 にわか仕込みの知識を披露してみせ祖父は得意げだった。でえくというのは大工のことだ。江戸ッ子なのだ。

 牧師さんは物知りでこの世のほとんどに精通したという。亡くなってしまって祖父はつまらなさそうだった。暇な日が増え、だからというわけではないが翌年祖父も逝った。

 安息していてほしい。


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