スプリット◯

 ここのボーリング場、むかしは手計算だったんだ。倒れたピンがランプで表示されて、自分たちで白紙のスコアに鉛筆書きしてね。兄貴と来たことあったけど、おれたち点数計算のしかたがわかんなかった。独自ルールでやってたな。ストライクで20点、スペアで10点プラスとか、連続ガーターはペナルティとかさ。つまり兄貴の裁量。だからね、アベレージいくつかなんて、おれにきいてもだめだよ。おれと兄貴のルールだから、ほかのひととは比べようがないんだ。やるのも相当久しぶりだしなあ。

 そう言って叔父は14ポンドの赤色を重そうに投げてみせ、8本倒しておや、と笑った。礼服にシューズが不似合いで、僕だってそうだろう。

 四十九日のこんな寄り道を、たぶん父さんはゆるす。2本残ったピンは端と端、僕たちにたとえてもいい。さあ叔父さん、スペア決めてくれよ。マルのついた屹立をぶっこわしてくれよ。三角形って空へ向ければ旗になる。



(静岡文学マルシェ/ポストカードギャザリング参加作)

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