表敬訪問だね

 彼は外交手段みたいにそうたとえ、その店に案内したいと言った。ナポリタンにレモンスカッシュ、ザ昭和な喫茶店。彼がカフェを始めるきっかけになった店らしく、ときどき技を盗みに訪れるのだそうで。

「全然雰囲気ちがうのに?」

 彼の店はサードウェーブ系だ。

「気持ちの問題だよ」


 ——ここは9時5時なんだ。ちがうよ夕方じゃない、朝の5時。お酒飲んだあとに少しだけコーヒー飲みたくなるときない? つまりさ、終電なくしちゃうくらいに盛り上がったデート、別れがたいけどまだそういう段階ではないなってとき、ない? そんな寄り道に素敵なんだよ。


 あえて手札をを晒すみたいな口説きかた。

 今度彼のお店に行ったらお返事しようかな? 友好の表明。



(お題:訪ねる)

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