白くなくても授乳する

「きみの腹に還りたい」

などと言うこの男に妻子はあるから、この関係をどう呼ぶか、呼ばれるかは知っている。しかしなるほど、私の赤んぼと捉えても良いらしい。私の腹に頬をすり寄せ、胎児のように体をまるめてうたた寝。

「きみの部屋、きれいだけど適度に散らかってて、まるできみの体の延長みたいだ」

暑くて窓を開けているから羽虫が飛び込んできて、旋回。私の体と等しいというこの部屋、夜にだけ男も旋回して通過。出て行った明るい朝に、私の知ることのない愛があり、私の入れない家がある。

いかなる赤んぼもやがて大人になって、母親から離れるものならば、今だけ乳房を与えて甘え合うことを許して。羽虫を叩いたら黒い汁が出た。


(お題:子)

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