地金が出る夜、わたしという卑金属
「地金で勝負しなよ、そのほうがずっといい」
バッタリ出くわした課長にそう言われたのだ。
都営新宿線岩本町駅、地上に出てすぐ、川べりの喫煙スペース。
「タバコ吸うんだね。いつもお人形みたいにすましてるから知らなかった」
会社の帰り、いつもここで一服する。誰とも分かち合いたくなんてない夜と川。
「メッキのはげた顔もいいじゃない。人間っぽい」
そう言う課長の無垢が、灰をこぼさせ、アスファルトに舞う。
メッキは地金の装飾のため。腐食を防ぐため。あらゆる摩擦から守るため。
川は澱んで底は見えない。砂やへどろや幾千のゴミ、きっと吸い殻も堆積して。課長、この街の地肌はみんな何かに覆われています。私、その平和を愛しています。
(お題:地)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます