第7話
小さい頃の夢を見た。
兄の薄暮と遊んでいて、僕は薄暮にいのお嫁さんになるねと言った。
たまたま聞いた父上がとても怒ってその日のおやつは食べそこなった。
それから僕は初恋の相手さえ誰にも言えないことに気づいた。
そう、あの頃にはもう僕の恋する相手は同性だった。
父が知ったらこういうだろうことは決まっている。呪われていると。
黒い髪をワックスで軽くセットする。鏡の中の自分――ノイズは寝ぼけた顔で一つあくびをしてワックスと髭剃りを鏡の裏にしまった。
もうすぐ朝食で、それが済めば朝の家庭教師が来て英語の授業が始まる。その次は中国語と……と時間割を確認していたら部屋の入り口のドアがノックされた。慌てて洗面所から出、リビングを通ってドアを開ける。屋敷の中にある子供たちの部屋はどれも何部屋か揃えられていた。
「ノイズ今構わないか」
「ええ父上」
きょとんとしたノイズの横を通り、サタンがノイズのリビングに入る。サタンはヨソイキのトムフォードで仕立てた暗いパープルのスーツを着ていた。どこに出かけるの、と聞く前にサタンが眉間にシワを寄せて口を開いた。
「ちょっとした問題が起きた。
地上でだ。日本という島国は知っているか?」
「ええ、火山国ですね?
あとは独自の神々と仏教と」
「我らの領域もある」
へーそうなんですか、とまだ話が見えないノイズはのんきに応えた。ノイズは今まで地上に出たことなどない。きょうだい達も頻繁に地上に行くことはないが、特にノイズは母の血を多く体現して生まれたためにサタンが地上に出ることを禁じていた。
だから
「ついてこい、私の補佐として日本まで」
と言われてノイズは思わず快哉を叫んだ。
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