第9話
怖い顔のギルドマスターに事務所の中へと案内されてボロボロに壊れかけた椅子に座らされた。
「さて……ドアに鍵はかけて無ぇから自由に出て行っても良いからな、出て行けるんならな」
監禁してないって事ですね、わかります。
「で、だ。今回ここに連れて来られた理由は解るな?」
「新人として目覚ましい活躍を見せる俺に目をつけたって訳ですね?」
「お前ギルドに登録してから何か仕事したか?」
「話題性は抜群かと」
「ウチはアイドル事務所じゃねえんだ」
「ああ、そうそう。この度うちの大精霊の属性が判明しまして、討伐依頼をバリっと受けようかと思ったらどう言う訳かセクハラ疑惑をかけられましてね、ほとほと困っていたんですよ」
ギルドマスターのあみだくじが描かれた様な傷だらけの顔がより一層怖くなった。
「それでその属性はギルドに情報公開出来るのか?」
ん?情報開示はしなくても大丈夫なのか?それなら少し濁しておくか……
「そうですね、ヒントとしては時を少し進めて成長を促す精霊魔法ってとこですかね」
「今から話を盛ると将来苦労するニャ」
「異世界転移者は少し盛っとくくらいで丁度いいんだよ」
たしなめるヤマザキを気合いで突っぱねるとギルドマスターが口を挟んでくる。
「ちょっと待てお前は異世界転移者なのか?」
「うむ。いかにも転移者である。腫れ物を触る様に扱うがいい」
「珍しい事は珍しいが、他にも転移者はいるぞ?」
え?
いるの?
こう言うのって現代知識を持つ転移者が圧倒的有利に立つから楽しいんじゃないの?あ!ヤマザキが持ち歩いているマヨネーズはそいつらの仕業か!
「ぐぬぬぬ」
「大精霊を連れて歩いている転移者はカタイシだけニャ」
ヤマザキの生暖かい肉球がポムポムと俺の肩を叩いた。
「俺を哀れむなあ!」
どいつもこいつも腫れ物を触るみたいな目つきで見やがって!
「貴族と揉め事でも起こすかな……」
「不穏な事を呟くな!面倒クセェ奴だな」
それはそうとこの辺で少し主人公らしい働きをしておかないと今夜の宿泊先が馬小屋になってしまう。
「ところでギルドマスター、そろそろ日銭を稼ぎたいので仕事がしたいのだがなあ、こんな所に呼び出して仕事が出来ない事が原因で、また今夜も野宿なんて事になったらダイイングメッセージ付きでギルドハウスの前でのたれ死んでしまうぞ」
「面倒クセェうえに迷惑な奴だ」
「もう野宿は嫌なんだよぅ、相方の精霊は自分だけ女冒険者のオッパイに挟まれて寝ていやがるし、朝っぱらから腐乱死体扱いされるしで俺の考えていた華々しい冒険者デビュウとは雲泥の差だ!」
苦々しい表情のギルドマスターが机の上でサラサラとペンを走らせてこちらに渡して来る。
「これを持って受け付けに行け。指名依頼だ」
これだよ!やはり最初の依頼はギルドマスターの指名依頼だよな!
「任せておきな!指名依頼はバッチリ片付けておくぜ!」
俺はギルドマスターから紙切れをひったくると事務所を飛び出して受け付けのお姉さんの処へと依頼書をつきつけた。
「ギルドマスター直々の指名依頼です!俺じゃないとどうしてもダメだとギルドマスターが言うのでしょうがなく受けてあげますので、依頼の登録をお願いします!」
「あ、はい……」
受け付けのお姉さんは俺から依頼書を受け取ると登録台帳らしき物に依頼書番号を書き込んだ後に依頼内容の説明をはじめた。
「こほん……指名依頼です。依頼主は当ギルドのギルドマスター。指名者はカタイシ様。依頼内容は……良い感じで綺麗な石を3個拾って来い。依頼達成金額は1500円。以上です」
「……」
「あと、河原に沢山あるから川に流されない様に注意しろ。1500円もあればギルドの隣にあるマツヤ旅館で宿泊出来る。との注意事項も追記されてます」
ギルドのあちこちでプークスクスと笑い声が聞こえて来る。
「うわーん!すっげー綺麗な石を拾って来てお前ら全員吠え面かかせてやるからなあ!」
俺が受付嬢から依頼書をひったくり、受け付けを後にして走り出すと背後から受付嬢の声で
「あ、受けるんだ?」
とか聞こえて来た。
ギルドマスターめええ!
ありがとう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます