第25話 盗聴・盗撮相談①
8月
高校生になって、法明寺事務所に飛び込みして、いきなり遠征調査して、母交えて話して、学業と探偵アルバイトの二足のわらじをやりながら一学期の期末試験も無事終えて夏休み。
「こんにちは〜」
「あ〜、アケちゃん、いらっしゃ~い」
暁美をアケちゃんと呼ぶこの女性は大盗奈々(だいとうなな)。
暁美は奈々の事務所に訪れる。
奈々はメカ女。ハードウェアの開発に強く、法明寺や暁美は、盗撮器、盗聴器及び発見器においてこういったのがあるとうれしい等のオファーを投げ、その希望を応えてくれている。そんな関係値である。
「今日はなんだっけ〜、カード型盗撮器のアップグレード版だっけ〜?」
「はい。そうです」
東野万理の案件の時にも活躍した薄い延べ棒の盗聴器。その進化版がカード型盗撮器である。他社ではそもそも現場に潜り込んで仕込む以外の盗聴器や盗撮器はなく、調査時にうまく使えるハードウェアやデバイスの希望をよく奈々に投げかけていた。
今回は、その試作機の確認。
「へー、これがカード型盗聴器ですね」
もらったカードをマジマジと裏表動かしながらみる暁美。
「そーだよ〜。見た目カードでってことだったので、事前にどこのカードって情報をもらえれば、そのカードのデザインに合わせて作ることも可能でだよ〜ん」
「すごいですね。これだったらカモフラージュカードとして忍ばせやすいですね」
「よかったよかった〜」
「ありがとうございます」
「アケちゃん、もっと褒めて褒めて〜。いい子いい子して〜」
奈々さん、可愛いんだけど、年齢たしか26歳だったような・・・・・・。
10歳の年下の子にいい子いい子を求める人って・・・・・・。
以前、法明寺との会話でそんなやりとりをしていたのを暁美は覚えている。
心の中のツッコミはありつつも、暁美は奈々に求められたいい子いい子をする。
「はーい。奈々さん、ありがとうございます」
「うれしいにゃー、うれしいにゃー、加齢臭たっぷりの五郎ちゃんじゃなくて、アケちゃんが来てくれて、いい子いい子してくれて嬉しいにゃー」
「あはは、、、、、法明寺さんって、加齢臭でてます?」
「出てるよ~。アケちゃんは、好き好き補正が入ってるから気づいてないだけだよ〜」
「いやいやいや、好き好き補正とかないですから」
「まー、にゃー、そういうことにしておきましょ〜」
奈々は、暁美と法明寺のことに関してヤケに突っ込んでくる。できれば、この手の会話はやめてほしいんだけど、大事なパートナーだから不機嫌にさせるなよ。と法明寺にも念も押させれているので、暁美は気を使って避けるような返答の仕方で誤魔化しておく。
「ところで、今回はカード型盗聴器のアップグレードの動作確認以外にも、案件の依頼を法明寺から伝言されてまして、相談させてもらっても大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ〜」
「今回の相談者は、家に盗聴器や盗撮器が仕掛けられているんじゃないかと思っている相談者さんでして、奈々さんにも盗聴器ないし盗撮器の発見を手伝ってほしいみたいです」
「ん〜。その意図って聞いてみた〜?」
「いえ、聞いてないです」
「なるほど〜、なるほど〜」
「法明寺さんが、奈々さんに盗聴器や盗撮器発見するのを依頼すること自体珍しいんですか?」
「ん〜。そうだね〜。正直、盗撮器、盗聴器を発見するのは、器具があればだれでもできるので、五郎ちゃんがわざわざウチに頼むことはないんだけど」
「だけど?」
「頼むケースは、五郎ちゃんで発見するのが難しいケースか、盗聴器や盗撮器を仕込んだ犯人の心理的なものを探りたい時かのどちらかなので、そのどちらかを五郎ちゃんが、アケちゃんに伝えていたかを知りたかっただけだよ〜」
「そうなんですね。何も聞いてないです」
「にゃるほど〜」
頼んでいることに意図があるならいってよー。
暁美は法明寺に対して心の中で突っ込んでおく。ここでしばらく、銅像の考える人の動作をする奈々。
やはり尖っているエンジニアさんなだけあって、たまに触れてはいけないゾーンに入ったようなオーラを出してくる時がある。
まさに今がそれである。当初、知り合った当初、いきなりの空間にびっくりして声をかけてしまったりしたことがあったけれどもゾーンに入るとそもそも大盗奈々の耳に雑音が耳に入らないので、そこに気づいてからは、大盗奈々がピンとくるまでの間、待っていることを暁美は覚えた。
「五郎ちゃんにOKって言っておいて〜」
「ありがとうございます。伝えておきます。それじゃ」
「あ、待って」
帰ろうとする暁美に、待っての言葉とともに後ろから抱きつく大盗奈々。
「うーん、癒される〜」
「奈々さん、、、、、ちょっとーー。帰れないです」
「いいの、いいの、これでウチがまたこの後もがんばれるからいいの〜」
こういうのがなければ、ちょっと変わってる変な先輩位の印象だけで済むんだけどな~。
暁美はあまりベタベタされるのが好きではないので、できればちょっとやめてください。と言いたいところだが、さきほどにもあった通り、法明寺から言われている大事なパートナーだからの言葉を意識して、暁美はうまく取り繕う。
「はい、はーい。それじゃそろそろ私はいきますよ」
「うーん。もっとアケちゃんパワーもらいたいけど、大丈夫。この後もがんばります」
奈々は後ろから抱きついた暁美から離れる。
「ありがとうございます。それじゃ法明寺さんか私から追って連絡します」
「はいにゃ〜」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます