第24話 回想

 暁美が小学生3年生の時、ある日家に帰ってきたら、知らないと大人の人たちがいた。

 

「暁美、今日からこの人達も一緒に住むからな。行儀よくな」


 家に帰ってくるなり早々、テーブルに呼ばれて座った暁美に突然告げられた普通の日常が終わる瞬間。

 もちろん、この時はこの後、どんな事が起きるかなんて想像する事もなく、ただただ目の前の、正直清潔感はあまり感じなかった強い感じの印象のおじさん達に挨拶をする。


「筧暁美です。宜しくお願いします」


「暁美ちゃんか、おじさんの名前は××××だよ。よろしくね」


 正直、名前とか覚えていない。むしろどうでもよかったというか、どうでもよかった事にしたかった。だから名前は覚えていない。


 その日の夜から早速揉め事が始まる。


「あなた何やってんのよ。ちょっとすいませんが、ウチではあなた達の面倒はみれませんので、お引き取り願いますか?」


「おい、お前、何言ってんだ?うちの家長である俺がいいって言ってるんだ。いいに決まっているだろ。すまないね、うちのが、気にしないでもらえたら」


「勘違いしないでほしいんだけれども、この家の家計を支えているのは私。あなたは訳のわかない宗教には嵌っては出費を増やす、変なものを増やす。知らない男の2人を突然連れてきて面倒見ます。って頭おかしいんじゃないの?いますぐ出て行ってもらうか、私が暁美を連れて出て行きます」


「暁美は連れて行かせない。そもそも暁美のためにしていることなんだ。俺のおかげで暁美はここまで元気になったんだ」


 変なおじさん2人が家にいる状態で、話を聞かされていなかった母は、もちろん激怒。


 そもそも、父がなんで変な宗教に嵌ってしまったかというと、原因は暁美にあると聞いている。


 暁美は生まれつき体が弱く、もしかしたら大人になるまで生きられないかもしれないという事実が家族を苦しめていた。

 母はバリバリのキャリアウーマンなのもあり、共働きだったけれども、どちらかが家に居たほうがいいということで父が専業主夫として家にいるようになった。


 家計を支えるために仕事に没頭する母と、いつでも体を壊してる暁美の面倒を見なくてはならない父のストレス最高潮に達してしまったらしく、暁美が幼稚園に入った時くらいから、変なものが家に増えるようになってきた。


 母は、その事に対して、もちろん父を文句を言うけれど、言われれば言われるほど父は母に対しての信頼をなくしていくように反抗した。

 暁美の体調はというと、医療の進化もあってかどんどん元気になり、小学生になる頃には、普通の子と同じように運動できたりするくらいまでになった。

 その事実も父を拍車にかけてしまったようで、父はドンドン宗教にハマっていく。


 そんな中での今回での出来事。


 いい加減、母も我慢の限界ようで、いよいよ家を出て行くところまで揉めに揉めた。


 暁美も正直、父が苦手になってきていて、もちろん母とそんなに一緒に居られる時間があるわけではないので、父の前ではいい子にしていけど、母が帰ってくると安心している自分がいた。


 そこに知らないおじさん2人も混ざってくるとなるといよいよ家にはいづらくなる。


 母は、この流れで暁美を家から連れて出て行く事になり、ホテル暮らしが始まる。

 ただ宗教にハマっているだけにしてはあまりにも度が行きすぎていると思った母は、弁護士をつけて離婚調停に持って行く流れで、宗教を優先する父が家族を崩壊させている証拠をしっかりと用意したく、探偵に調査を依頼する事になる。

 もちろん小さかった暁美には何をしているかわからなかったけど、後々に色々話を聞かせてもらったりして、当時不透明だった点と点が線に結びついて知っていった。


 探偵の人は、知らないおじさんとの比較になるかもしれないけど、すごく清潔感もあってカッコいい人だった。いつも不安に苛まれている暁美を気遣ってか、緊張を解してくれるように接してくれていた。


 暁美にとって、すごく優しいお兄ちゃんみたいな存在になっていった。そんなお兄ちゃんが定期的に母と会っては色々な父の写真を出してやりとりをしている。

 父はその宗教の幹部にまで出世してしたことがわかった。

 昔から信仰心が強かったらしい父は、暁美の偶然の病気療養と宗教の因果を結びつけてしまい、母との関係も破綻し、拠り所として求めた結果、幹部になりさらに信者を救っていくという立場になっていたようである。

 あの知らないおじさん達も、信者で困っている人らしくて、父の真名と呼ばれているよくわからない名前があって、その真名で呼ばれている父のそばにいれば、その気か何かで困っている内容が浄化されるということで、下宿が決まったみたいだった。

 離婚調停中の母は、少し情緒不安定なのもあり、その影響か、暁美もいきなり泣き始めてしまったりと感情のコントロールができない時期があった。

 そんな時、探偵のお兄さんは、母もお兄さんも暁美を幸せにするために、今色々と動いているので、今だけをみるとつらいかもしれないけど、その先には、笑顔で毎日が過ごせるようになるから、今は一緒にがんばろうと言ってくれた。


 結果としては、そんな状況証拠や今まで使っていた金額や宗教の幹部である事や、宗教を一番に考えていることが判明した父には、家族生活を送っていくことは不可能と判断され、二度と母や暁美には近づかず、もちろんしっかり養育費も払ってもらうことを確約させ、離婚は無事に成立し、今は母と二人暮らししている。


 その時の探偵さんとはそれっきりだし、母もその後また仕事に打ち込むようになり、一緒に暮らしてはいるものの、暁美は一人暮らしのような環境で高校生になった。

 あの時の探偵さんからの言葉とかが自分を今でも強くしてくれていて、強い自分でいられている自負はある。


 だからこそ、今度は自分が探偵になって、警察が動いてくれない。弁護士でも状況がないと助けられない。そんな人達を救えるようになりたい。

 そんな思いから、暁美は探偵のアルバイトを探し始めて、法明寺と出会い、助手を始めて、考えさせられる案件をこなして、母にバレて咎められつつも法明寺の協力もあり認めてくれて、前向きに続けていこう。そんな気持ちで少しづつ場数をこなす4ヶ月が経とうとしていた。

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