第18話 東野万理案件、調査日二日目③
18時43分
法明寺の懸念は特におこらずに東京駅に着く。途中下車タイミングでは何度もトイレ行くふりを法明寺と暁美で交互にしながら対象者は確認した。
「結局、普通に東京駅に着いちゃいましたね」
「まー、あくまで可能性のひとつだからな」
「このまま何もなく、1日予定より早く着いちゃった。ってなるといいですね」
「んー、そうだなー」
暁美の希望に法明寺は、空返事をする。法明寺の中で何か色々考えるんだということは暁美には伝わった。
駅やホームや電車での移動を、しっかり距離空けながら、尾行していく。わずか1,2日のことだけれども、暁美の中では少しだけ慣れた感がある。
そのことを法明寺に伝えると調子の乗るな的なことを言われてしまいそうなので、言わないでおくが、緊張状態での尾行は正直、ものすごく疲れてしまうので、今の状態のほうが心身共に優しい。
19時10分
対象者は新宿駅で降りる。このまま家に直帰するコースでないことはわかったが、誰かとの打ち合わせであってほしいと暁美は願いつつも、尾行を続けていく。
19時半
西新宿にあるハークパイアットのホテルまで歩いたところで、対象者はホテルのエントランスの前で待っている人と顔を合わせ、手を振り近づいていく。相手の人は女性だった。打ち合わせの相手であってほしい。そんな暁美の思いを余所に法明寺は
「重要証拠の撮影入ってるから、俺の体に触れたりするなよ」
「え、なにで撮影しているんですか?」
「メガネだよ。メガネ」
まさか、その黒ブチメガネがカメラだったとは・・・・・・。
なんとなくそんな存在があることは知ってはいたけど、目の当たりにするとちょっと興奮してしまう。暁美はその興奮を法明寺にはバレないように
「メガネで撮っているんですね。了解です」
っと平静を一応を装っておいた。今ならじっくり眺めていても、法明寺は暁美のほうを見ることもないだろうから、声色と態度だけしっかりしていれば多分大丈夫だろうと自分に言い聞かせて、極力黒ブチメガネカメラをチラ見し続けた。
「お前、チラ見しすぎだよ。あとで触らせてやるから、不自然な動きするな」
「え、バレました?ってか法明寺さん、そんなに近くで見ているわけじゃないのによくわかりましたね」
「何言ってんだ、お前、全然、見まくってるぞ。全然隠しきれてないが」
「え!!、本当ですか?これは大変失礼しました」
暁美は自分で思っているよりもチラ見しすぎていたらしい。恥ずかしい。
19時40分
女性の見た目は、スーツなのもありまだ打ち合わせの可能性も捨てずにいたかった暁美であったが、二人がハークパイアットホテルの受付でチェックインしている姿を目撃する。
「ここからは大詰めだな。俺も受付すませてくるから、受付中に対象者が移動したら、俺のところにこい」
「はい」
法明寺は、暁美を置いて、対象者と女性の後ろまで近づいていく。対象者と女性がチェックインを済ませたらしく受付を離れ、法明寺は黒ブチメガネのツルを少しだけ摘むような動作をして、次に受付をする。
対象者と女性が移動するので、法明寺のいる受付まで移動する。
「続きはこいつがやりますので」
「かしこまりました」
「え!!」
受付の人と暁美を引き合わせ、法明寺は対象者のほうへの尾行を続ける。
必要情報までは伝え終わっているようで、暁美にされたのは、ホテルの案内とキーの受け渡しとチャックアウトの時間の案内だけだった。5015のカードキーを渡される。
またもや一部屋だ・・・・・・。
《受け取りましたよ》
《40階にエレベーターであがってこい》
法明寺のぶっけらぼうなラインの指示に従って、エレベーターで40階に上がっていく。
っというか、なんですか、このすばらしい景色は・・・・・・。
暁美にとってはの初めての高層ホテルも探偵調査活動によって体験してしまった。調査活動していくと他の子が経験していくキラキラした経験は、こういった形で消化されていくんだろうなーと少しだけ切ない気持ちになりつつも40階に到着する。
エレベーターを出ると法明寺が待ち構えている。
「ここで待機しているわけにもいかないからな。大詰めだし、このレストランに入るか」
「え?、入るんですか?」
「ボロ出すなよ」
「わかってますよ。私達は恋人同士ですか?」
「あほ、上司と部下だ」
「ちぇ」
「ちぇじゃない。いくぞ」
40階にある高級和食レストランに法明寺と暁美は入っていく。
「いらっしゃいませ」
「2名で」
「かしこまりました」
「ちょっと内密な話もあるので、周りの卓が埋まってなさそうな卓か、角とかを取ってもらえると助かる」
「少々お待ち下さいませ」
受付の仲居さんらしき格好をした人が受付でパソコンを眺めている。座席表みたいなのがあるのだろうか。
「はい。大丈夫でございます。それではこちらへどうぞ」
仲居さんに案内される法明寺と暁美、暁美はボロを出すなと言われたので、あまりキョロキョロできない。
待機して尾行しづらい場所とはいえ、対象者と同じスペースで食事をして尾行していくのは、少しまた緊張感が戻ってきた。
和食屋さんは、受付を過ぎて、廊下を歩き、抜けると、4人掛けの正方形のテーブルが5卓づつ3列並んでいる作りになっていた。
雰囲気はモダンな木目調の作りの内装。暁美と法明寺は右奥端のテーブルに案内される。
法明寺は暁美を気を遣ってか、窓側のビューが見える席に座らせ、自分は全体が見渡せる席に座った。
座る際に、仲居さんに席をずらしてもらって座らせてもらったのはびっくりした。
これが高級店ってやつですね・・・・・・。
「すごいですね、法明寺さん」
小さい声で少しだけ顔を近づけて法明寺に話かける暁美。
「なんだ、筧なりに気をつけている喋り方がそれか?」
ニヤニヤした顔で法明寺が訪ねてくる。
「だって、どう対応したらいいかわからないから、なんか内密な話をしている風な喋り方がいいかと思って」
「はは、ウケるな」
「ウケないし、真面目だし」
「悪い、悪い。とりあえず一旦任務は忘れて注文しようか」
「え??いいんですか?忘れて」
「アホか。俺が見てるからってことだよ。そもそも、お前、反対だから何もできんだろ?だから変に緊張しないで普通に食事を楽しめよってことだよ」
「あ、そういうことですか?はーい。じゃ、楽しみまーす」
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