第12話 東野万理案件、調査日初日①

 週明け


 ついに暁美にとっての初調査活動が始まる。法明寺探偵事務所に押しかけ、小馬鹿にされながらも、巧みな交渉に交渉をして雇ってもらうことになり、探偵業サボっているボスを無理やり担ぎ上げて、相談者から依頼をゲット。

 他にもバンバン調査依頼の相談乗りますよメールを返したけど、その後のやりとりは全然わからない。もしかしたら法明寺はまた勝手に断っている可能性もあるので、どこかでパソコンチェックをしてやろう。


 いきなりの出張調査。母になんて説明しようと土日で考えてみたけど、答えが見つからなかったので、3日間だけ家出します。ってことにした。

 ラインでも連絡はとれるようにするし、電話もでますので安心してください。学校には風邪で休むことにします。と書き置きを残して、母が起きる前に家を出る。

 事前に法明寺から社会人としての格好で尾行するのでと言われ、もちろん後から天引きされるらしいけど、予算を与えられたので買って来たベージュのスーツ一式とグレンチェック柄のブラウスを着こなしトートバッグを肩にかける。


 早く出すぎたのもあって、早く法明寺探偵事務所に着く。時刻は6時。


 ピーンポーン


 ・・・・・


 ピーンポーン


 そもそも、もしかして。


 ガチャ


 考えてみたら鍵が閉まっていることなんて本当にいない時しかないのかも。なんて不用心な。。。。。玄関をあけて普通に靴を脱ぎ、廊下を通り、部屋に入る。

 グーガーグーガーとイビキが聞こえる。法明寺を起こす。


「法明寺さん、法明寺さん、おはようございます」


 暁美は法明寺の体をゆさゆさする。考えてみたら初めてあった時もこんな感じで起こしたっけ。

 冷静に考えると知らない人の家に入っていきなり寝ている人を起こすなんて行為はとんでもない危ない行為だと冷静に変えると思う。思い切った時って怖いな。


「ぐがぁぁぁ、ぐ、ぐがぁぁ、あ!!」

 

「おはようございます」

 

「ぐぁ、あー、おはようさん」


 んーってを背筋を伸ばし起き上がる法明寺。


「ふー。っと。っというか人が寝ているところ普通に入ってきて起こすのが嬢ちゃん、デフォルトすぎるぞ」


「その前に家にいても鍵を閉めないで過ごしている法明寺さんもデフォルトすぎますよ」


「あ、あーそうか。ちなみに今、何時だ?」


「今、6時です。もともと7時待ち合わせですけど、私がこの時間にこなかったら間に合ったんですか?」


「何言ってんだ。嬢ちゃん、準備なんて15分20分で終わるだろ」


「え、そうなんですか?」


「そーだよ。まーいいや準備するから待ってろ」


 そう言って、スウェット姿のおじさんは立ち上がり、部屋を出て洗面所に行き、シャワーを浴び始める。


 早く起きるか起きないかくらいの会話で、暁美は、考えてみたら男の人の準備の時間なんて知らなかったので、男の人の朝の行動を知って、少しだけビックリしてしまった。


 シャワーを浴びて5分くらいでシャワーの音は止まり、ドライヤーの音と電気シェイバーと口をゆすぐ音が聞こえてきてさらに5分くらい。本当に10分くらいで準備が終わってる。これが男?いやいやいや、法明寺がガサツすぎるだけでしょ。


 そんなことを考えている暁美の前にバスタオルだけを巻いた法明寺が部屋に戻ってきて台所側のソファに座っていた暁美の前を通りすぎる。


「わ、ちょ、ちょっと、おじさん、若い子がいるんだから、格好に気をつけて」


「あ、何恥ずかしがってんだよ。逆じゃあるまいし、俺の美しい肉体美を見るのが恥ずかしいなら、目でもつぶっておけ」


「そういう問題じゃないですよ。本当、もー」


 暁美はソファの背もたれに自分の向きを向きなおして、台所を見ながら話す。でもたしかに少しだけ目に入ってしまった法明寺の体はかなり筋肉質でしまっていた。

 普段あんな生活をしているのに結構鍛えられた体だった。っというか何を考えているんだ。暁美は自分の思考をコントロールできずに頭の中で自分でツッコミを入れていた。


「ふー、よし、こっち向いていも大丈夫だと」


「本当、勘弁して、あー、もうおじさん」


 暁美が振り向くと、黒のスラックスは履いているもの、まだ上半身裸の法明寺がボディビルダーが大会でするような格好をしていた。このおじさん、完全におちょくってる。また元の向きに向きなおす。


「ぎゃはは。ウケるな。嬢ちゃん。男の裸に反応しすぎだろ」


「反応してないです。誤解を招く表現はやめてください」


「はい。もうギャグは終了だ。向いて大丈夫だぞ」


 今度はいきなり向かずに少しづつ体と首を反らすように法明寺のほうを向く。ストライプの黒のスラックスに白のシャツに黒のジャケットにストライプの紺のネクタイ。悔しいけどカッコイイ。


「法明寺さん、社会人っぽい格好するとそこそこイケてますね」


「嬢ちゃんは頑張って背伸びした格好しているな・・・。まーいいや、イケてる社会人カップルっぽい感じで攻めていくぞ」


「イケてる社会人カップルって!!」


 笑いながら法明寺の言葉を馬鹿にする暁美だったが、そもそもちゃんと髭も剃っていて、ゆるふわっとした髪型のセットに、このタイミングでかけた黒ブチメガネがさらに若返らす。


「・・・・・、法明寺さん、いくつでしたっけ?」


「ん?36だけど。あまりにも若くなりすぎてイケメンだからビックリしたか?」


「いやいやいや、いつもの無精髭のセットしていない髪の怪しい黒っぽいズボンとシャツの格好から、ここまでの変化はもはや詐欺だな。っと思いまして」


「このガキ・・・・・・」


「嘘ですよ。嘘」


 そうは言ったものの、ちょっとかっこいいと思ってしまった自分が恥ずかしくなる暁美。ちらっと何度も見てしまう。チラ見がバレると小馬鹿にされそうなので、気をつけないと。


「嬢ちゃんが逆に少し子供っぽいな。もうちょっと大人っぽいメイクできないのか?」


「これで少し大人っぽくしたつもりなんですけど」


「それでか。化粧道具持ってるか?」


「はい。持ってます」


「おし、ちょい貸してみ」


「え!!、法明寺さんメイクできるんですか?」


「そりゃ、いままでもいろいろやってきてるからな」


 そう言って暁美の座っているソファの隣に座る法明寺は、化粧道具を出し、目をつぶるようにいい、アイライナーとマスカラとアイカラーで目の近辺を少し。ってしかも男性に。不思議な気分である。


「おし、できた。鏡みてみ」


 法明寺に渡された手鏡を見てみる。


「お、おー、大人っぽくなってる」


「嬢ちゃん、ナチュラルメイクという名のまだまだなっちゃいないメイクだろうしな。中途半端にいろいろやるより目の辺りだけでしかも2,3歳くらいであれば大人っぽくはいけるだろ」


「法明寺さん、、、あなた何ものですか?」


「あ、心理カウンセラーだよ。その職は取り上げらえたけどな」


 感心したして見上げる暁美に、嫌味を残しつつ口元で少しだけニヤけながら、法明寺は立ち上がる。


「ほれ、なんだかんだもうすぐ7時だ。出かけるぞ」


「あ、はい」

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