第7話 活動内容④
相談者、ウェストさん
個人情報を入れずに相談はできるようになっている。好きなユニーク名を相談者さんが入れてやりとりできるようなシステムになっているみたい。
1通目
件名:夫の浮気疑惑について
本題:始めての相談になります。私は40歳、夫は45歳で子供が男の子で15歳になります。ここ3年くらいは夜の生活もなくなってしまっていて、そこに対して不満があるわけではないのですが、たまたま夫の出張だった日のレシートを衣類を片付けていると発見してしまいました。どうしても浮気の文字が頭から離れず、居ても立ってもいられずに問い合わせしました。
1通目返信
件名:Re:夫の浮気疑惑について
本題:Hさん、ご相談承りました。メンタルヘルスプレイスの田中です。当サイトは今までで累計数万件ものご相談を解決してきた敏腕のカウンセラーが何十人と登録してりますのでご安心いただいて納得いくところまでご一緒できればと思っております。不安のない日々こそが素敵な毎日につながります。一緒に不安要素を解決していきましょう。さてご相談内容にありました旦那様の浮気疑惑になりますが、旦那様は出張が多いお仕事なのでしょうか?
なんと、ここで1通目の返信が終わり。。。。。その後も質問、返答、質問、返答を繰り返しつづけて、結局は、普段の日常生活において会話もあるし、家族としてはすごくいい家族のように客観的にも思われるし、何もよりも相談者さんや旦那さんもお互いを尊敬し愛し合っているように受け取れるので、旦那さんの浮気の可能性を見出す前に夫婦生活における夜の生活の改善を相談者さんが努力してみてはいかがでしょうか?というやりとりで一度、締めくくられていた。
これは・・・・・・。ちょっと・・・・・・。
Hさんに関して言うと、言葉たくみにやりとりして累計で11,500円分のポイントを消費しているのをみる。管理画面を見ると他の相談者さんとも似たようなやりとりをして、ほとんど1人2役の探偵の紹介にほとんど至っていない。
暁美は、ここまでしっかり想像できていたわけではないにしろ、一番そうであってほしくない結果に落胆する。そして怒りを覚え始める。
カフェを出て、法明寺事務所に急いで戻る。
インターホンを鳴らすこともなく、ドアを開けようとすると開かない。
てへぺろレベルのごめんごめんなんて顔をしながら、暁美が来るまえにトンズラする法明寺を想像する。
想定を上回る法明寺への信頼度が下がる行動に、さらに止めようがない怒りに満ち溢れるが、ここで地団駄を踏んでもしょうがないんで、今日のところは諦めて帰る。
ノートパソコンもカバンの中に入るので、とりあえず持って帰ることにする。
次の日
学校が終わりその足で法明寺事務所に向かう。3日間だけど、今後ルーチンになりそうなこの動きは暁美の中では悪くはない。
平日は毎日学校に終電ギリギリまで探偵業務、次の日は朝からまた学校。少し想像するに体力的に持つのだろうかと不安だった。まだ3日目だけれどもいけそうな気がする。
本格的に調査活動が始まった時に学校との折り合いをどうつけていくかも考えなくてはいけないけど、今は情熱に満ち溢れているので、なんとか進級できたり卒業できるギリギリの出席日数でコントロールでうまくやっていけたらと思う。
とにかく今は第一の壁である、法明寺の腐りきった探偵業務なのかカウンセラーサイト運営なのかよくわからないご都合運営状態をなんとかしなければいけない。
法明寺事務所の扉を開ける。今日は、空いた。
ズカズカと廊下を歩き、扉を開ける。昨日、掃除した甲斐もあって綺麗なオフィス?事務所?になっている。少しづつ少しづつ。
ソファに目をやると、そんな暁美の決心をひとかけらも感じていない、なんなら昨日ノートパソコンをそのまま持って行ってしまった暁美に対する怒りも特になさそうな法明寺が
「おー、お疲れ、ノートパソコン返してくれ。仕事ができん」
たばこを吸いながらソファに寝そべって本を読んでくつろいでいた。
「お疲れじゃないですよ。法明寺さん。昨日、あの後どこ行ってたんですか?あと、言うことないんですか?」
呆れながら、カバンからノートパソコンを取り出し、元々あったデスクの上に置き、ソファとテーブルのセットになっている扉側のほうにある台所に行き、ヤカンに水を入れて、火をつけて、急須にお茶を葉を入れて沸騰するのを待ながら暁美は法明寺を睨む。
「あー、あの後戻ってきたのか?いやまー、嬢ちゃん、怪盗ルパン、五右衛門もびっくりな窃盗スキル発動しちゃうもんだから、諦めて呑みに行ってたんだよ。どうせあれだろ?怒るんだろ?」
たばこの火を消すタイミングで、起き上がり、ソファにちゃんと座ってから台所に寄りかかっている暁美をしっかり見る法明寺。
馬鹿にするような表情でもなく、もちろん真剣でもなく、呆れたような表情で見てくる法明寺を見ると、なんだか暁美が駄々をこねている子供のように見られているのか、複雑な気持ちになるけれど、やっぱりどうしても納得できることでないので、言いたいことを言い切ってやろうと思う。
「怒りますよ。怒りますけど、わかってないんだったらもっと怒り狂ってやろうかと思いましたけど、法明寺さん、わかってるならなんでこんなやり方するんですか?」
こんなやり方と言ったタイミングでノートパソコンをを指し、少しだけ目線をノートパソコンに移した後に法明寺を見るが、特に表情が変わらない。
少し愛くるしいものもを見るような表情にも見えるし。
ヤカンも沸騰したところで一旦向きを台所に向け、急須にお湯を入れて、急須と湯飲み二つをテーブルに持って行き、ソファに座る。
「はは」
「はは、じゃないですよ」
「いやー、嬢ちゃん、どう考えたって俺と嬢ちゃんじゃ情熱も違うし、なんなら俺にとって興信所業務、探偵業務、調査業務ってのはビジネスなんだよ。カウンセラーもその関連な。嬢ちゃんにとっては夢と希望に満ち溢れた行動かもしれないけど、そもそも入り口から違うから、そこを求められるのはちょっと厳しいぜ」
ぐ・・・・・・。
もっとな意見だと思ってしまうのが悔しい。法明寺のなんとも言えない呆れたような愛くるしいものを見るような表情の先の意味はこういうことだったのか。とわかってしまう暁美は悔しかった。
どうせお前も現実を知れば、すぐにわかるさ。と追加で言われているようにすら聞こえた。
でも、こんなところで言い負かされていたら、この先の色々なことを乗り越えてなんて行けるわけないので、絶対に理解してやるもんか。と、急須のお湯を湯飲みに二つ入れて、一つ法明寺に出し、一つを暁美はふーふー言いながら飲む。あったかいお茶で少しだけ気持ちを和らげて、深呼吸する。
「わかりました。そうですよね。夢も希望も絶望もないおじさん探偵に、私のように夢と希望と可能性しかない花のJKが、相談者さんや依頼者さんの本当の満足度を求めるのがおかしいですよね」
「おいおい、嬢ちゃん。そこまでは言いすぎだぜ。俺だって傷ついちゃうよ」
「え?、違うんですか?私にはそういう風に聞こえましたけど」
少しだけ下から見下すように法明寺を見る暁美。
ふーっと、ため息をついて頭をガシガシさせながら
「わかった。わかった。嬢ちゃんのやりたいようにやろうぜ。その代わり、無茶振りしまくるからちゃん助手こなせよ」
ため息混じりに諦めたように少しガックリさせたように肩を落として、暁美を下から見上げる法明寺。
「やった!!」
一気に暁美の表情が明るくなる。
「嬢ちゃん、本当、探偵より、それこそ心理カウンセラーやったほうがいいんじゃないか?そっちのほうが人を幸せにできると俺は思うぜ」
「何言ってるんですか?言いたいことを言うだけなんて嫌ですよ。警察も弁護士も助けてくれないどうしようもない人を持ってるスキル最大発動で助けてあげたいんです。それが私のやりたいことです」
「あー、そうかい。ブレないねー」
ソファにもたれかかり、もうやりたいようにやれよ。っと全面的にプッシュしてくれているわけではないが、そう言ってくれているように感じる態度を法明寺はしてくれた。
「っで、心理カウンセラーで担当しているお客さんにご紹介のアクションでも起こしていくのか?」
「えへへ。実はですね。もう相談者さんには返信しちゃってます」
「は??」
「おいおい、嬢ちゃん、何言ってんの?おじさん、言ってることが理解できないから教えてくれ」
「え、だから、この後、相談者さん来ますよ。今16時半ですよね。17時にはこの事務所にきますよ」
そう平然と満面の笑みで答える暁美に、肩を落とす法明寺。
「嬢ちゃん、確信犯すぎるだろ。俺が拒んでたらどうしてたんだ?」
「拒んでても相談者さんが来たら拒めないじゃにないですか。それでも拒むんだったら風評してください。って相談者さんに伝えて何がなんでも動かすつもりでした。ここで引き受けないなら法明寺探偵事務所の未来はなくなっちゃいますよ。って」
「このガキ・・・・・・。おっと失礼。このクソガキ・・・・・・。とんでもない奴だな」
「私を舐めちゃいけませんよ。法明寺さん。だてに子供の頃から修羅場くぐってませんから」
法明寺の嫌味をそのまま褒め言葉と捉えて、ふふん。と大満足に引き続き満面の笑みをする暁美。
このガキとは言ってみたもの、暁美の計算しくさせれた行動には少しだけ脱帽する。この子は育てようによっては化けるかもしれない。なんなら美少女だし、売れっ子探偵アイドルにさせようかな。
おっといかん、いかん、またビジネスライクなところを出すとこの嬢ちゃんになんて言われるかわかったもんじゃない。当面はめんどくさいがこの嬢ちゃんのやりたいようにやらせてみるか。と心の中での悪巧みを考えつつも、お茶を飲みながら暁美に苦笑いで対応する法明寺だった。
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