第6話 活動内容③

「あ、ちょっとまた馬鹿にした言い方?」


 ここまでしっかりした法明寺の説明でこう言った接し方がもうなくなるのかと思いきやであるが、暁美の中で少し何か法明寺に対する印象が少し変わる。

 この人の少し辛かったり小馬鹿にしたような言い方は、もしかしたら法明寺の対人癖なのかもしれないと思った。だからこそ、悪気はないんだな。っと思ったら少しだけ愛嬌のあるおじさんとして捉えられるようになった。

 それならばと、暁美自身も少し軽い反抗のようなふてくされるのを出していこうと思った。真剣なやり取りの時は真剣に。小馬鹿にした言い方の時はふてくされる。暁美なりの法明寺攻略法である。


「馬鹿にしてるか?俺は結構ちゃんと説明したぞ」


「ふふ、わかってますよ」


 ちょっと困ったような対応をした法明寺に少し可愛げすら感じられるようになった暁美は笑いながら真剣に話をしてくれたことは伝わってますよ。と汲み取ってもらえるような言い回しでさらに返す。


「まー、とりあえずそんなところだ。だから俺のやっていることは、エセ心理カウンセラーだが、むやすみ不安を煽って調査を依頼することを促すようことをしていないっていう、むしろ善良な好意であることが嬢ちゃんに伝わればそれでいいってことよ」


「わかりました。私もちゃんとしっかり聞いてないのに、納得できないだのなんだのいっちゃってごめんなさい。次から反省します」


「まー大丈夫だ。じゃ、納得いったってことで今日はこんなところでどうよ?もういい時間だしな」


 ふと見ると時間は21時。たしかにいい時間である。法明寺は早く暁美を帰したいのだろうか。だとすると、だとしなくてもどちらにしろ、もうちょっといても全然大丈夫な暁美は


「ちょっと探偵さんが心理カウンセラーを称してやりとりして未然に防ぐやりとりとかを勉強したいのでみてもいいですか?」


 とにかく吸収できるうちに吸収しておきたいので、ずっと法明寺がパソコンをパチパチしていたその内容に興味を移し始める。


「え!!、いやまー、そんな、まー、ナイーブな部分もいろいろあるしな。また明日とかその辺もレクチャーしてやるよ」


 急に歯切れが悪くなる法明寺に、暁美は直感を働かせる。

 もしかして、この人、こんなにここまでいい話を言い続けていたのに、もしかして。。。。。


「いやいや、ナイーブとか言ってたら何にも経験できないですよ。なんでも場数なはずです。百聞は一見にしかずです。メールでやりとりしているんですか?」


 そういってソファを立ち上がり、ノートパソコンがおいてある席に向かうとあわてて法明寺がノートパソコンの前に立ちはだかる。


「まー、その、そーだな。だから明日色々やりとり見させてやるよ。今日はもう帰ったほうがいい。親御さんも心配するだろ」


 明らかに視線をどこか明後日に逸らし目を泳がせているこのおじさんは、見ないで見ないで。っと心の声が漏れてしまわんばかりに暁美からパソコンを遠ざけようとしてくる。昨日まではまともに家に帰ることできないのが探偵の仕事だ。なんて言ってたはずなのに。明らかに怪しすぎる。


「大丈夫です。今日は母は遅いので、終電までいれますし、なんならもしやることがあるなら、あ、さ、まで、だ、い、じょうぶです」


 目の前の男の大人をどかそうとするものの、ノートパソコンのあるデスクの前にからどこうとしない。


「はぁ、はぁ、はぁ、法明寺さん、怪しすぎます」


「ん、あ、何言ってんだ、嬢ちゃん」


 法明寺はどこまで言ってもすっとぼける気だ。このおじさん、絶対に見せない気だな。そうとなれば暁美にも考えがある。


「わかりました。じゃ、帰ります。」


「お、おう、いきなり随分、聞き分けがいいな」


「だって、法明寺さんがあまりにも阻んでくるので」


「まー、大人には色々事情があるんだよ。お疲れ、お疲れ」


 そういって、暁美を右手をあっちいけみたいな動かし方してくる。このおじさん、やっぱりむかつく。


 暁美が振り返り、部屋の扉をあけて出ようとするのを見て、法明寺はソファに戻る。法明寺がソファに座ろうとしたその瞬間。

 暁美はすぐにデスクまで走り、ノートパソコンを持って走り去っていく。その間わずか2.3秒。


「お、おい!!」


 いきなりの出来事に明らかに反応が遅れた法明寺は、ソファに座ろうとしてのタイミングだったので、そのまま座り立ち上がりのコンマ数では暁美の動きに反応できなかった。

 そのまま、ノートパソコンを持って、廊下を走り、ローファーをはき、玄関を開けて走り去っていく暁美を見て、とっさに最初はおいかけるものの、玄関が閉まるところを見届けて、さすがの法明寺も諦める。


「あの嬢ちゃん、とんでもねーな・・・・・・」


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ 」


 そこまで大きくないとはいえ、ノートパソコンを持って、俊敏にローファーはいて、マンションを階段使って3階から1階まで下がって、マンションを出て、とにかく一旦ひたすら走り続ける。結構疲れる。法明寺が追いかけてこないところを確認するまで暁美は走り続けて逃げる。


 一旦一直線に走りながらも途中で追いかけてきてもわからないように、小道小道に入り、コーヒーショップを見つけるので、一旦そこに入る。

 仮にこの場所に入られたとしても、店員さんや他のお客さんのいる前で、無理やりノートパソコンをとりあげるようなことはしないだろうとの算段。

 コーヒーショップで抹茶ラテを頼み、席に着き、パソコンを開く。いきなり持って行ったので、スリープモードになっているだけだった。充電器まではさすがに持ってこれないので電池があるうちにいろいろ見ておかないと。

 幸いにもパスワードはかかっておらず、まずはメールを見てみる。

 メールソフトを見ると◯◯さんから問い合わせがありました。という件名のメールが沢山ある。

 メールを開き、URLをクリックすると管理画面のようなページに飛ぶ。

 エセ心理カウンセラーにしては専用のサイトと管理ページがあるのは本格だ。ますます法明寺の相談者の為をおもった心理カウンセラーの話がキナ臭く思えてくる。


 ID、パスワードはそのままキャッシュで保存されているので、ログインができる。

 お客さんというか依頼人毎のメールボックスのようなものがその管理画面にはあり、メールボックスを開くと相談者とのやりとりの記録が残っている。

 普通のメールボックスとの違いを見ると相談者ないし依頼人の表示のところにポイントがついている。記録をたどっていくとそのポイントが減っていているように見える。

 暁美は、ここまでくると半分諦めてはいるけど、そもそものその管理ページのURLをみて一般的にアクセスできるホームページはないかと、URLを完結版にしてアドレスバーに叩いてみる。


 気軽に相談、メンタルヘルスプレイス。

 なんとも怪しいポップな感じのホームページではあるものの、このサイトを運営していて、その心理カウンセラーが法明寺であると思うとなんだかその時点でも暁美の中ではアウトな気はするものの、サービス内容や料金体系をクリックしてみてみる。


 浮気を調べたい、家出した人を探したい、身元を知りたい、盗聴・盗撮かもしれない、いたずら・ストーカーにあっている。相談内容のふれこみは、調査という言葉に書き換えれば、法明寺が言っていたもっとも興信所や探偵事務所に多い相談内容群である。


 初回無料、1回のメール送信500pt、受信500pt。高い・・・・・・。

 メールやりとりポイント1pt=1000円と書かれた購入ページも見つける。

 ここまで来てエセ心理カウンセラーの仕事内容が仕事じゃないよ。は無理がありすぎる。

 もうここまでくると、もう法明寺が言っていたことは偽善で、その場でパソコンを見ようとしたら拒んできた理由も整合性がついてくるけど、最後の最後の望みで相談者さん依頼者さんに対しての対応にかけてみたい。

 もし法明寺が言うように、精神的な悩みでやりとりすることで解決するならそれに越したことはないし、そこまで相談しても納得感をつけられない相談者さん依頼者さんであれば探偵につなぐって行為をしているのであれば、心理カウンセラーと探偵を1人2役でやっている時点、1メールあたり1000円取っている時点でちゃんと相談者さん依頼者さんに対して丁寧な対応をしていたとしても相当アウトな気もするけど、相談者さん依頼者さんの立場にたって対応しているのであれば、料金面は後々言うにしてもどこかで気持ちの折り合いをつけるられる。

 

 そう思って、暁美は深呼吸した後に気持ちを改めて、管理画面側での相談者とのやりとり一覧を見てみる。


 ・・・・・


 ・・・・・


 ・・・・・


 あのおっさん・・・・・・。

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