第8話  隠されたコミュニケーション(2)

 これまたおおむかし。

 何十年も前の事。

 若かりしぼくが、小さな事務所で、事務仕事をしていたころ。

 ある方が仕事の依頼にいらっしゃいました。

「じつは、書類の再発行の手続きをしてほしいのです。本人から依頼がありまして。」

「あ、はい、どの書類でしょうか?」

「これです、じつは、本人が、なくなったということで。」

 一瞬、事務所中が凍りつきました。

「え、ご本人が、再発行してほしいと・・・なくなった方が・・。ですか。」

「ええ。その通りです。」

「あの、なくなった方が、どのように、依頼をして来られたのですか?」

 事務所中が、ぼくを注目していました。


「ああ、ごめんなさい。本人が、無くしたというものですから。」


 あああ、よかったです。

 もう、冷や汗でした。

 あとは、順調に事が進みました。

 いやしかし、言葉の使い方はもちろんですが、聞き方も注意しないと、誤解が生じることは、明らかですよね。

 皆様ご注意を。

 

 








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る