国王生活1日目! 「メソンコ!?」


「まずは自己紹介ですよ。国王様!私は執事のジイサン・フンバリッヒ」

白い髭が立派な、名前の通りの紳士な爺さんだ。


「ジイサン......自慰さん!」

プププッ

何がおかしいのか、笑いを堪えてる騎士。

俺を王宮に連れてきて、説明してくれたこいつ

「私はキシデス・ナイト」

こいつは20歳くらいだろうか。長くした金髪に切れ長の目、かなりのイケメンなのに、色々と残念なやつだ。


そして......嬉しいサプライズ!

なんと広場で声をかけてくれた三つ編み少女

「メイ・ドリアン」

彼女が俺のメイドになってお世話してくれるって!?マジかよ!年上だけどちょっとタイプだったんだよな。国王生活すげー楽しみになってきたぜ!


「国王シコル様!我が国の聖書 バイブル【アンドール戦記】を読んだことはありますかな?」

ジイサンは言った。

「……いや、ないけど……」

昨日キシデスから聞いた天才作家の残した小説の事だろうな。

「あと、俺の名はシオン!シオン・アレクセイ!」

「はぁ、シコル?」

「違う────!!」

「まぁまぁ、ジイサンはボケちゃってるからしょうがないでよ。落ちついて下さい。シコル様」

「シコル様♡」

「……」


「もういいよ。で?【アンドーナツ戦記】だって?見せてみろよ」

「はい、これにございます」

ジイサンから渡された本は金の箔押しや宝石の散りばめられた、おそらく一点物の手作りされた豪華な装丁をしていた。


ゴクリッ


「緊張するな……異世界で書かれた本か……価値観や思想とかまるっきり違うのかな。国中に影響を及ぼすほどの本、一体どんなものか!」


「シコル様、うるさいですぞ」

と、ジイサン


「そうだよ!黙って読みなよ」

メイさんもヒドい!

俺、国王だよねぇ?

しかもタメ口だし。


いちいち、つっこんでるとキリがないので無視してページをめくる……



【アンドール戦記】


────1────


「助けて」

「助けて!」

「誰か助けて!」

少女が泣いている。


(以外と今っぽい書き出しだな)


「キミは…」

「キミは誰なんだ…!」

目を覚ますと泣いていた。

「……夢……か」


(なかなか趣のある冒頭だな……)


時は魔界世紀20059年

聖都レイブルー

この世界は魔獣王ネクロフィリア・ドラハンにより支配されていた。


(なかなか壮大な物語だな……)


人類は魔獣王を倒すための武器「魔法剣メソンコ」


(メソンコ!!?)


を求め……

(ん!?んんん!!?)


「ってコレ!あいつの────!!?」

「どうしましたかな?」

「こ、これ、どうして、どうしてこれを?」

「あなたと同じ、旅の方が現れて書いていかれたのです。ああ、そういえばシコル様と同じ服装をしていました!」

「知ってる方なのですか?」


なんなんだ!

なんであいつが!?

あいつも異世界転生されたのか?

しかも天才作家だって!?

ワケがわからない!


「……どうしたの?」

「面白くなかったですかな?」

「いや……そうだな......うん」

俺は思ったままの事を言った。


「ゴミだね、ゴミ。ゲロ以下の小説だ、こんなもん。こんなのありがたがって読んでるとかどうかしてるぜ!」


みんなの驚く顔

俺が何を言ってるのか一瞬理解出来ていないようだった。


「……なんとっ!!いかに国王と言えど我らが聖書 バイブルを貶めるとは、国家反逆に値しますぞ!」

ジイサンは顔を真っ赤にして本気で怒っているようだった。

「まぁまぁ、話しを聞いてみましょう。そこまでいうのなら、これより面白い小説を書けるのでしょう?」

と、キシデスが割って入った。

キシデスも顔には出さないが内心怒っているようだった。


「ああいいぜ!こんなトイレの紙以下の本に負けない超絶おもしれえ小説!書いてやるぜ!」


こうして俺の国王生活1日目は、家来全員を敵にして始まった。

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