活字中毒《ビブリオフィリア 》のアンチテーゼ【オレが異世界転生されて、小説書いて、次期国王に!?】
クレイジーメガネックス
異世界転生 「あなたは…小説を書けますか?」
────1────
「助けて」
「助けて!」
「誰か助けて!」
少女が泣いている
「キミは…」
「キミは誰なんだ…!」
目を覚ますと泣いていた。
「……夢……か」
時は魔界世紀20059年
聖都レイブルー
この世界は魔獣王ネクロフィリア・ドラハンにより支配されていた。
人類は魔獣王を倒すための武器「魔法剣メソンコ」を求め旅立った。
世界は七つの種族に分かれている。エルフ族、魔界族、機械族、死霊族、獣族、精霊族、そして人類…
この世界を救えるのは異世界より召喚されし俺!
「って俺ぇぇぇぇ!!?」
―――――――――
「......どうかな?」
「……」
ここまで読んで頭が痛くなった。
ここは異世界ではないし、剣も魔法も無い。ただの中学校の図書館。
俺の目の前にいるのは、小説家志望だというクラスメイト。
「ゴミだね」
「ゴミがゴミのために書いた何の役にも立たないゴミ小説だね」
「小説だなんて言うのがおこがましい」
「謝れ、オレに謝れ」
「お前、小説読んだことあるのか?よくこんな恥ずかしい物堂々と見せられるな」
「こんなものよく1000枚も書いたな、しかも未完だろ?何も考えてないのが丸わかり、自身の愚かさを露呈しているだけだ」
「帰れ!!」
彼は泣いていた。
半年がかりで書いたファンタジー小説、教室の片隅でいつも小説を読んでいる僕に、僕だけに、
信頼して、信じて、
こっそり読ませてくれた。
感想を聞きたいって、
きっと小説を通して友達にでもなりたかったんだろう。
僕も小説は好きだ。
小説は。
おおよそ小説と呼ぶに値するものは。
だから、価値のない文章には用はない。
「せいぜいこれからも独りよがりな文章を書いてくれよ」
すると彼は大粒の涙を貯めて言った。
「じゃあ、お前ならどんな話にするんだよ!!!」
そう言い残して、足早に図書室を後にした。
……俺か……
俺なら……
異世界転生……
俺の、小説……
そんな事を思いながら本棚をボンヤリと眺めていた。
棚の片隅に、気になる本があった。
表紙も裏表紙も全て真っ白な本。
本を手に取ると、ずっしりとした重みと共に、吸い込まれそうな不思議な力を感じた。
図書館の開け放した窓から、春を告げる風が吹いた。
手に取った白い本がパラパラとめくれた。
開いた本のページは、全て真っ白だった。
そして俺は本の中に消えていった。
────2────
気づくと俺は中世ヨーロッパのような街並みの中にいた。
住宅は赤茶色のレンガ造りで統一され、建物の背は低く、遠くまで景色が見渡せる。
街の中心の丘陵に築かれた小さな王宮は、要塞としての役割は無く、平和の象徴かのように、美しくこじんまりとしていた。
石畳の道を通り、広場へと行くと沢山の人々で賑わっていた。
すると1人の少女が俺の所に駆け寄ってきた。
年は17、8高校生くらいだろうか。
腰まで届きそうな長い黒髪をゆったりした三つ編みで結んでいる。
シンプルな白のワイシャツに小花柄のスカート。
そういえば俺は学生服のままだった。
見慣れない格好だということで、みんなジロジロと見ているのだろうか?
彼女は僕の持っていた本を指して言った
「それは失われた遺産、小説ですね。」
「あなたは…小説を書けますか?」
「……?まぁ、小説なんて誰でも書けるだろ?」
「旅の方、どうか私達に小説の書き方を教えてください!」
ふと、背後から鎧の擦れる音がして、俺は少女の言った、その言葉の意味を理解する間もなく、王国騎士に捕まった。
────3────
ここはカクヨーム国
国家反逆の恐れがあるとして、国民による印刷物の出版が禁止されていた世界。
しかし突如として現れた1人の天才作家による1冊の本によって国家転覆がされた。
その天才作家は1編の未完の小説だけを発表し、行方不明になってしまった。
国民は今小説に飢えているのだ!
今は国家の代表を失い、出版無法地帯となってしまっていた。誰もが自由に小説を書き発表、閲覧ができる。
しかしどれも小説と呼ぶには言い難い。はっきり言ってつまらない。
国民は面白い小説を求めている。
今この国で国民の支持を得るには、金でも権力でもなく、面白い小説が書けるかにかかっている。
というのがこの国の情勢らしい
「で、俺はなにしたらいいんだ?」
「あなたには次期国王として民衆を先導するようなお話しを作って頂きます。」
先程、俺を背後から襲い、捕まえた騎士が言う。
「民衆を先導する話?」
「そうです、聖書、法華経、コーラン、いつの時代も人類は、作られた物語によって先導されてきました。」
なるほど、聖典を引き合いに出されると、確かに説得力のある話しだ。
「新しい小説の執筆、一般より応募された小説の添削、指導、新人作家の教育、育成、文芸イベントの主催、その他文芸界を盛り上げる事ならなんでも行って頂きたいと考えています……」
王国騎士は兜を取り、言った。
「どうか、我が国のためにあなたの才能をお貸しいただけないでしょうか」
俺が次期国王?
しかも小説家としてだって?
そんな夢のような話もちろん
「断るね!」
「な、なんですと!なにかお気に召さない事情がありましたかな?」
「あるね、大ありだね」
「ご要望があればなんなりと申し付けください」
「それじゃぁ」
次の俺の言葉に王宮の全員が注目する。
「欲しいものがあるんだ」
「はい、なんなりと」
「俺、自分の部屋と自分の時間が欲しい」
「はぁ?」
「だって王様ってずっと家来に見張られてて1人の時間とかないじゃん。俺中学生だし、思春期だし、色々1人になりたい時だってあるじゃん。だからオッケーしてくれるんならいいよ」
「わかりました。いいでしょう、手配致します。しかし、1人になりたい時とは?一体何をなさるおつもりでしょうか?」
「いろいろだよ。いろいろ。いろいろあんの」
「いろいろ……とは?もしや……えろ……えろ……!」
騎士はニヤニヤしている。
それに気づいたか、王宮のお偉いさんも皆ニヤニヤしだした。
「思春期ですもんね。男の子ですもんね」
「な、なんだよ!1人で勉強するんだよ!」
「何の勉強するだかねぇ」
「オナ……ッ」
クスクス
「チン……ッ」
クスクス
「シコ……!!」
クスクス
「なんだよ!お前ら中学生かよ!そんなにバカにするなら国王やらねーぞ!」
「失礼いたしました。どうか堪えてください」
「誰が言い出したんだか」
「いいよ!やるよ!この国の文芸界をよくしてやるよ!」
「ありがとうございます!……えっと、ところでお名前は?」
俺は今書いている小説の主人公の名前を言った!
「俺はシオン!アレクサイド・シオン!」
「シコ……!あれ臭いよ・シコる様ですね!!」
「違うー!」
こうして俺(アレクサイヨ・シコル)は異世界転生されて国王で小説家になった!
どうなる!
俺!
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