第3話
目の前に広がる青い空。
俺は顔を動かそうとするも、動かない。
と。突然、体が上に引っ張られ起き上がると、目の前には壮大な街が広がって居た。
空飛ぶ車に全自動お掃除ロボット、透明なガラスの板には何かしらの広告がしてある。
舞台は近未来をイメージしたSFな世界。
俺は周りを見渡して居ると、床には奇妙な人の影があった。其処には誰も居ないのにだ。
黒い影から何かが引っ張られる様に起き上がり出すと、其れは俺以外のプレイヤーだった。
プレイヤーは俺以外にも周りを見渡すと、何処かへ去ってしまった。
「どうやらあの影は、リスポーンの演出みたいなもんか………」
《Digital Infinite Telephone》の最初は、どうやら街の中心にある噴水の様だ。
周りを高い高層ビルが立ち並び、空には飛ぶ車が徘徊して居る。煉瓦の床の端には、所々芝生や木が生えて綺麗な道となる。
さて、まず此の世界での目標となるのがラスボスを倒す事だ。その為にも魔物やプレイヤーを倒さなければ行けない。
現在のポイントは一千マネーだ。
まずはショップで武器を調達! が定石だろう。
然しネットサーフィンで調べた所、どのショップにも武器は売られては居ないらしい。ショップには情報を提供してくれる情報屋のNPCが潜んでおり、其のNPCからマネー使用して情報を買い、電話番号を教えて貰う。
そして謎のNPCが突然現れる。此処で注意があるのが、一つは武器をタダで差し上げる無料タイプとマネーで買う有料タイプが存在する事だ。二つ目は武器や防具はランダムで渡される事だ。
俺は不思議なアーチをした入り口のショップに入り、其れらしきNPCを捜す。
と、其れは案外早いもんだった。
沢山の商品が置かれた店の片隅、どっからどう見ても怪しい黒いローブ姿をした人が立って居た。
多分これだ! そう確信して、話しかけた。
「情報が欲しい」
「武器とサポート、どっちだ?」
此処はまず、武器が欲しい所だ。
「武器で頼む」
「よし、では五百マネー戴こう」
「えっと………、どうやって?」
「まずデバイスを出せ」
俺はいつの間にかポケットの中に入って居たデバイスを取り出す。
デバイスの中には「サイフ」と「電話帳」、「ステータス」、そして「通話」と書かれてあったアプリがある。
「サイフで支払いボタンを押す。すると赤外線が出てくる。その赤外線を相手に向けると、デバイスに数値が出る。その数値は支払い額で、相手の希望額に合わせて数値を設定し、最後に支払いボタンを押すと完了だ」
ほうほう。NPCの癖にやたら説明が分かりやすくて助かる。
俺は言われた通り従い、数値を五百に設定して支払った。
「よし。『電話番号』を出すぞ……」
NPCは周りを見て、盗み聞きする奴が居ないか確認する。そして少ししゃがみ、ポケットから一枚の紙を取り出す。
その紙には「cf2\=71¥3m/i」と書かれて居た。
俺は電話帳を開き、その場でメモをする。
今の所電話帳には、俺のデバイスの電話番号とメモしかない。
然し此れはまずいな。
此のデバイスは透明だ。反対側でもくっきり俺の電話番号がわかってしまう。
此のゲームは、他者を操れる洗脳システムがある為、悠長に弄っていると逆に操られる危険性が増す。
では通話に出なければいいのではないか? 実はそうも行かない。
ある一定の時間に運営から耳寄り情報が届くのだ。通知ならメールでいいではないか? 其れが出来ないのが此のゲームの怖い所。
運営か、または他のプレイヤーからの電話かも知れないのに、出るか出ないかの二択の選択が賭博に似て、面白い所なのだ。
運営なら生き、プレイヤーなら死。
だが、今の俺なら大丈夫だ。
なんたって、ゲームを始めたばかりの初心者だ。魔物に出会うか、通り魔に殺されない限り死ぬ事は、まずない。
「俺からの情報は以上だ。健闘を祈る」
「あぁ、ありがとう………」
俺は店を出て、少し離れた所でデバイスを開く。
あの場所はリスポーン地点に一番近い場所だった。だから、電話番号を盗み見られる危険性があると思い、人気のない場所に来た。
「よし、じゃあ早速電話をするか……」
メモした電話番号を使用し、通話する。尚、一度使った番号は二度と使えない。
プルプルプル………
「あれ? 出ない。そんな事ってあるのか?」
俺は一旦切り、再度電話掛けようとした時だ。
ヂリヂリン!! ヂリヂリン!!
まるで黒電話を想像させる様な音が辺りを響す。……後で設定しなければいけないな。
然し電話か、運営か?
俺は躊躇わずに電話にでる。
「もしもしー?」
「……死ね」
「YES」
俺は無意識の内に自分で自分の首を締め、右上にある体力を表す緑のゲージが徐々に減り始めると、
目の前には「Game Over」と書かれた文字が出て居た。
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