第2話
ヤマダ・タロウ。
一見、何の変哲もない唯の名前。
俺は、その何の変哲もない唯の名前が好まなかった。
父と母は古風な方で、名前も古いのを使って居る。その為、キラキラネームなどを使わず、普通っぽいのを採用したのだ。
山田太郎、などと何処にでもありそうで普通そうなのが、逆に個性的に見られなくて悲しかった。
銀行で通帳を作成する時の紙に、例として『山田 太郎』なんて稀に書かれてある事があるだろ? 名前の記入欄に自分の名前書いた時に店員さんから「お客様、例ではなくご自分の指名を書いてください」と言われた時に、これが俺の指名ですと言った後の空気の重さと言ったら………。はぁ………。
周りからも普通っぽいね! なんて微妙な感想は聞き飽きたのだ。だからゲームの時は何かカッコいいネームにしようと思ったんだが、
「……………ないな」と言うより思いつかなかったのだ。虚しい。
なのでまたも、この名前にしたのだ。
名前の欄の下に「次へ」と書かれたボタンに手を伸ばし、クリックの様な感じで押す。すると視界が一変して変わる。
周りが白い正方形の部屋になり、その真ん中には一つのマネキンと看板が置かれて居た。
看板には『プレイヤー作成ルーム』と書かれていた。
マネキンに近づくと、目の前に一つの本が現れた。タイトルは「着せ替えカタログブック」。どうやら此の本の中にある写真を選び、自分なりのアバターを作り上げる様だ。
数分後、なんとか完成した。
服装は白いTシャツに裾が巻かれたジーパン、そして白いスニーカー。うん。普通だ。
顔は此のゲームの場合、仮面が普通らしい。ガスマスクやピエロのマスク、SF系の有名な映画のキャラクターの仮面迄ある。
どれも良いんだが、やっぱり此れが良い。そしてマネキンの顔に付けられたのは、黄色の顔にニコニコの表情をした「ニコちゃんマーク」のお面である。
板の様なお面の端には輪ゴムが付けられており、そのゴムが耳に引っかかって居て外れない様にしてある。他は丸出しだ。
短髪に逆立った黒い髪はサラサラである。
さて、此処までシンプルイズベストに極まると、俺の目の前にはマネキンが無くなり、自分を見渡すと先程のマネキンが着て居た服装に仕上がった。
そしてローディング画面が現れると共に、簡単な説明文が流れて来た。
「何々、此のゲームでの進行状況について」
一、魔物やプレイヤーを倒して二つのポイントを稼ごう。
ニ、ポイントは二種類あり、一つのランキングポイント。ランキングポイントを多く稼いだ人はトップの称号を獲得。ラスボスとの勝負する権利を得られる。尚、負けた場合は全ランキングポイントが無くなります。二つ目はマネーです。マネーは此の
三、ラスボスは三体おり、三回勝たなければゲームクリアはなりません。此れまで挑戦回数は七百二。クリア回数一回。クリアネーム「運営テストプレイヤー」様です。
四、《Digital Infinite Telephone》の世界では、リアルタイムより時刻が早く流れます。一日に約一週間。
五、適度な休憩を取りつつ、健康には気をつけましょう。
と、説明文を読み終えた時、丁度ローディングが終えると、目の前に文字が現れた。
「存分に楽しんで下さいませ」
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