1話 女神様

私は、白い部屋にいた。


「はじめまして?」


私はソファーに座っていた。

おかしいな、さっきは荒れ狂う星の息吹(噴火)の真っただ中にいた気がしたんだけどなあ。

少し、周りを見てみようとするけど……首が動かない。

うーん?ソファーに座る感覚も視界もあるんだけど、どういうことだろう?


「ああ、貴方はいま人形だから、自由に動けないわよ。」


テーブルを挟んで向かいにいる女神…様がそう言った。

なぜ女神かって……そういう感じがするからだ。

なぜ「様」をつけるのを迷ったのかって……そういう感じがするからだ。

というか、なるほど。

私は人形なのか。

もしかして、噴火に巻き込まれて即死してまた転生したとか…?

ま、違うと思う。多分、私の意識だけこの人形に憑依させている、といったところだろう。


私に話しかけてきた女神様を見てみる。

黒髪ロングだった。

顔は、どちらかといえばクール系だけども、それ以上に意志の強さが感じられる。

服装は……ローマ王国の偉い人が来てそうな感じの……たしか、トガとかいっただろうか?いや、それは男性用だったな。ヒマティオンかな?髪の色に合わせて黒色で、所々にカラフルな模様がついている。

そんな布の上にもう一枚、濡羽色だろうか…?いや、違う様だ。カメムシの様にキラキラと色が変わる黒色系の布をローブの様に羽織っていた。


「それでね、きっと貴方には私は誰だとかここは何処だとか何が起こったんだとか聞きたいことがいっぱいあると思うけど、取り敢えずそういうのは呑み込んで、私の言うことを聞きなさい。」


人形になってるから喋れないとは思うけどね。


「まず、貴方は人間を辞めました。そして、世界を直接動かせる存在になりました。ぬしは、あ、主っていうのは私たちを生み出した存在ね。それでね、主は私たちのことを、『世界管理人』と呼ぶわ。」


黒いローブだったからもう少し厳かな感じかと思っていたけれど、結構饒舌だった。

それにしても『世界管理人』というのは……まんまというか。なんとなくやることが想像出来るね。


「そう、ご想像の通りその役目というのは世界が壊れない様に適当にいじってやることよ。」


やっぱりまんまだったか。


「でも、主はそれだけでは満足しないわ。私たちは、『物語』を作らなくてはならないのよ。」


やっぱり同業者だったか。


「『物語』というのは言ってしまえば娯楽よ。

貴方は、なにか、お話を読んでとても面白いな、と思ったことはあるかしら?

それこそが、主の求める感情よ。でも、ただ世界をほっといているだけでは、そういう『面白い物語』は生まれてこないわ。

主が私たちを生み出した理由がわかったかしら?」


つまり、なんか面白いことやれってことだね。凄い無茶振りだね。

でも、世界を自由にできるっていうのはその無茶振りの対価としては十分なものだよね。


「そう、ね。でも、そう無茶振りでもないわよ?

別に主から何かの命令を受けることも主の嗜好を気にすることもしなくていいから。主は私たちの他にもいっぱい世界管理人を知っているから、貴方は貴方が好きな様にしていいのよ。そうして作られた物語を主が勝手に見て、勝手に気にいるのよ。

だから、貴方は貴方の世界を好き勝手して大丈夫。というかそうすべき。」


へー放任主義か。

思ってたより楽そうだね。

それにしても好き勝手していいのかー。ふふふ、何しようかね?


「あー、でも貴方は特殊でね。今まで言ってないから気付いてないと思うけど……

貴方は複数の魂と複数の記憶を持っているのよ。」


へ。

えええ?

ファッ?!


「そろそろ人格の強制統合が効かなくなってきていると思うわ。

たぶんそれが貴方、貴方達にとって一番の問題ね。まあ、私はそれについては何もできないから……そろそろお別れね。」


え、おいちょっと待てコラ。

アフターフォローは大切だぞってこれはアフターフォローじゃないか。

というか人格がたくさんあるってどういうことなんだ。


「ああ、そのことを解決するヒントをあげるわ。貴方達は、『魂を持つ意思』よ。 じゃあ、また今度ー。」


そういうと、女神はぽっと消えた。


そして、白い部屋には人形だけが取り残されていた。

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世界管理人 チョーカ @Tyoka

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