第9話 回合、第一次実験テスター1

扉を開けたその先は外からの見ため通り、だだっ広い会議室だった、机が3脚、椅子が6脚出されている、その中央に3日ほど前にスマホのモニター越しに見た短い黒髪の目力の強い男、すなわちこのEP計画の屋台骨、諸星真星がいた、その彼が僕とせとかの入室に気づき声をかけてきた。

「やあ、灰谷君、遠いところ足を運んでくれてありがとう、感謝するよ、そしてようこそEP計画の中枢へ、これから計画本格始動のためのオリエンテーションを行うから空いている席に……っといけない忘れるところだった、№3君はどんな名前をもらったんだい?」

「星都夏よ博士、星の都の夏でせとか、まあ、これは当て字で本来は柑橘系植物の名前からとったらしいんだけど」

「なるほど、せとか、柑橘の王の名を頂く名か、うんきれいな響きのいい名だ、よしじゃあせとかパートナーと一緒に席についてくれ。」

「ありがと、博士、ほら誠さっさと席つくわよ」

「あっ、はい」

というやり取りのあと僕たちは手近な空いている椅子に腰かけた、そのときになって気づいたのだが、残り四つの椅子にはもうすでに二組の男女が座っていた。

そして、改めて全体を見渡した後諸星博士は話を切り出した。

「さあ、最後の一組が到着したことにより、この場所に第一次実験テスターとそのパートナー全員がそろった、ではこれよりEP計画第一次実験オリエンテーションを開始する、ではまずは各テスターとパートナーの自己紹介からだな、姉小路君からパートナーEPのナンバーが若い順にいこう。」

そういって諸星博士が最初に自己紹介を促したのは、今風のスタイリッシュな車いすに腰かけたハシバミ色の髪と瞳を持つ美しい女性だった、彼女が一つ頷くと彼女の傍らにいたおそらく彼女のEPとおぼしき、金髪に翡翠色の瞳を持つ長身の男性が立ち上がり、彼女の車椅子を押して部屋の中央にいる諸星氏のとなりまで行くと、そこで車椅子を丁寧な手つきで反転させたので、現状は姉小路さんペアとほか二ペアが対面する形になっている、そして彼女は丁寧に語りだした。

「だだいまご紹介にあずかりました、姉小路(あねこうじ)十六夜(いざよい)です。見ての通り足が不自由なので、座ったままご挨拶させていただくことをお許しください。出身は北海道、趣味は読書と喫茶店巡りです。年齢はご想像にお任せします。だいたい一般的な自己紹介ならこんなものでしょうか?、あとこれは私からの提案なのですが、私たちはこれから6人1チームで仕事をこなしていくんですよね?、そしてEP計画のテスターに選ばれたということは私以外のお二方もなんらかの経度障害を持っていらっしゃる、どうでしょうこれから仕事を円滑に進めていくためにも、自分の障害の特徴、注意や補助してほしい点など一緒に仕事をしていくうえで大前提として伝えておきたい情報をこの機会に共有しておきませんか?」この提案は僕にとってメリットはあってもデメリットがなかったので

「はい、問題ありません。」と返事をすると、もう片方のペアからも「了解しました。」という返事があった。

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