第8話EP計画始動!! その2
「おお……」
ぼくが国税庁の威容にしばし感嘆していると
「なにぼさっとしてんの、はやくいくわよ。」
とさっさとドアをくぐって建物の中に入っていた星都夏にせっかれ、
小走りで彼女の後を追った。
やがて、星都夏は会議室とおぼしき大きな部屋の前で立ち止まりいった。
「この扉の向こうにまだ見ぬあんたの同僚2人とそのパートナーのEP2機
そして私たちの生みの親、諸星真星博士本人がいるわ、いい誠二、EP計画から手を引きたいなら、ここが最後よ、これ以降は他のテスターの個人情報や特殊装備にも触れるから引くに引けなくなるわ、そうなる前にここでもう一度、計画に参加するか、しないか、よく考えてほしいの。」
彼女からの真摯な配慮に僕はもう一度深く思考する、この計画に参加するか、しないか、僕は10分ほどの思考の後、彼女に向って答えた。
「正直にいって僕はこの社会の中で有能という言葉からもっとも遠くにいる人間の一人だと思います、人手不足が深刻だといわれているいわゆる3K職場でも持て余されるくらいですから、もう僕の未来には幼いころのような心が震えるほどの感動も、輝かしい体験もなく、これから終わりが来るその時まで、代わり映えのしない曇り空のような毎日が続いていくとそう覚悟していました、でも!、でも!
星都夏、もう道が潰えていた僕に君がもう一度輝かしいものを手に入れるチャンスを作ってくれた、僕の人生を僕にとって有意義なものにする機会をくれた!
だから、僕は今度こそ君がくれたこの場所でかならず、見つけてみせます、僕にとっての輝かしいものを、僕の誇りとなる何かを!、だから僕は引きません。」
僕の暑苦しいシャウトを聞いた彼女は、顔に呆れを滲ませながらも微笑んでいった。
「そう、わかった、ま、その意気や良しってとこね、じゃ、いくわよ、改めてようこそ灰谷誠二殿、EP計画の中枢へ。」
そういって彼女は扉を押し開けた。
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