第3話 EP計画の概要 その1

「んじゃ、改めて私から詳しい自己紹介をしたいんだけど、その前に発案者にしてにこのEP計画の最高責任者にして私たちEPの開発チームのリーダーでもある諸星真星博士より第一次実験3人目のテスター灰谷誠二にメッセージがあるわ!」

場所を我が家の玄関先から彼女の指示で近所のカラオケ店に移してから、間髪入れず、彼女はスカートのポケットからスマホを取り出すと通信アプリを起動させた。

「あー、はじめまして、灰谷君、私が今№3に紹介されたであろう、EP開発チームのリーダー諸星真星だ。」

スマホの中からそう挨拶してきたのは、40代前半と思しき、短い黒髪の目力の強い白衣の男だった。

「まずは、改めて灰谷君、EP計画第一次実験3人目のテスターに当選おめでとう。

実験を始める前になぜ私がEP計画を発案し実行に移したのかの理由とEP計画の概要、加えてEPの詳しい説明、この3点を私の方から説明させてもらおう、では最初になぜ私がEP計画を発案し実行に移したのかだが、これは非常に個人的な理由と考えからだ、まず私の個人的な理由というのは、私はPDD-NOS(典型的でない広汎性発達障害)を持っている、もっと簡単な言葉でいえば症状が一部分しか発症しないアスペルガー症候群だ、まあつまりは、

僕はこの言葉を聞いても特段驚きはしなかった、なぜなら全ての始まりになった春に送られてきた通達にこう書かれていたからだ、EP計画とは障害者を支援する計画だと、そう、考えてみればこの文章は少し奇妙だ。なぜわざわざ、「障害者」という言葉の前にという一文字を付けるのか、普通こういった文章でこの一字は付けない。なら重度障害者は支援しないのか?など色々批判が飛んでくることが容易に想像できるからだ、しかし、それでもなお、あくまでの一字を付けることにこだわったとするなら、それはよほどの思い入れや執着がという言葉にあったということだ、そしてそれほどの執着をこの言葉に抱くとすれば、それは自身か自身の大切な人が軽障害を持っている場合が大半だろう。

そして、を支援する計画の通達が僕宛に直接送られてきたということは、灰谷誠二もまた彼と同じである、ということが相手にバレているということだ、まあ抱えている障害の種類まで同じだったことにはほんの少し驚いたが、そう何を隠そう僕、灰谷誠二も彼、諸星真星と同じPDD-NOSなのだ。

「話を続けるぞ、まあ、同じ障害を抱えている君なら、多くを語らずとも察してくれると思うが、私はこの障害のせいでとにかくこの社会で生きずらかった、大学の時にコンビニや飲食店でバイトをしていたんだが、毎日ボロクソに怒られてばかりだったよ、例えばコンビニでは、会計をしながら、弁当をあっため、たばこを探すなどという違う種類の仕事を素早くこなせず、人が並び始めるとうまく処理できずパニくる、飲食店では清掃用のホウキを持ってこいといわれ、ホウキだけ持って行けば、塵取りも一緒に持ってくるのが普通だろとどやされた、そして罵られるのやどやされるのが怖くなり、声がどもると、おちょくってるのかとまた罵られるの繰り返しだった。」

諸星氏が淡々と語ったその状況は僕は今、警備員のバイトをしているのだが、僕も諸星氏のように様々なことで怒られて、怖くなり、声がどもるとまた怒られの繰り返しの中にいる。

そのことを思い出すと胃がキリキリ痛くなるが今は胃の痛みに気を取られている場合ではない、諸星氏の話に集中しなければ!

「大学時代バイトの時間は苦痛でしかなかったが、私はPDD-NOS、もっと言えばアスペルガー症候群を抱えている者の中では恵まれていた、なぜなら私にはアスペルガー症候群の唯一の恩恵と言える【特定分野で一点特化のとびぬけた知識を持つことがある】という特性が強く表れたのでな、私の場合その特定分野とは生物学、もっと細かく言うと細胞学だった、そして、私はある目的の為、細胞学の中でも特にips細胞の活用研究に没頭していった。」

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