第1話 運命の通達

「おめでとうございます! 灰谷誠二様、貴殿は栄えあるEP計画のテスターにみごと当選されましたので、ここに案内状と契約書を送付させて頂きます。」

そんな明らかに詐欺臭い意味不明な書き出しの封書が我が家に届けられたのは、春のうららかな日差しが心地よい4月某日の事だった。 本来このような胡散臭い内容の封書は即ビリビリに破いて捨てるか、慎重を期するなら警察に届けるべきだったのだろう、しかし27歳になった今でも厨二チックな物が大好きな僕はその封書の書き出しの中にあった「EP計画」なる単語に大いに興味をひかれてしまった。書き出しを見た時点で封書は開けてしまっている、その後の内容に目を通すか通さないかなど、五十歩百歩だろうと思い、僕は封書の内容に目を通した。そこには以下のようなことが記されていた。

『EP計画とは、今まで障害者支援の中で軽視され続けてきた、経障害者支援における一大革命となりえる、斬新かつ、画期的な計画です。

概要としては、第一次実験のテスターとなる軽障害者3名に最高精度のips細胞応用技術、

炭素加工技術、人工知能技術を用いて生み出されたアンドロイド「エターナルパートナー(EP)」を授与し、社会活動への参加、貢献を促し、生産性と充足感のある人生を過ごして頂こうというものです。本計画は「一億総活躍社会」の実現において、避けては通れないものであるということを此処に明記いたします。尚この封書の内容を使って灰谷様及び灰谷様の関係者へ反社会的行為を行うことは一切ありません、ご安心ください。』

この内容を読み終えての僕の感想としては、「いったいこの封書は何のために送られてきたんだ?」というものだった。何せ内容が内容なだけに、詐欺にしてはあまりに荒唐無稽であり、加えて金銭の要求も全くない、加えて僕と僕の関係者に対し、反社会的行為は一切しないとまで記載している、反社会的行為に対する取り締まりが厳しくなっている昨今、この一文は致命的だろう。しかし、悪戯にしては手がこんでいるし、誹謗中傷のような言葉もまったくない。「何がしたいんだ……」と僕が途方に暮れていると、封書の中には本文の書かれたこの紙以外にもう一枚の紙とおそらく返信用の封筒が同封されていることに気付いた、もう一枚の紙を取出し、目を通してみるとそこにはこのように書かれていた。

「灰谷様専用のEPを制作するにあたり、貴殿の伴侶となる方へ希望する容姿、性格、その他ご要望をできるだけ細かく記載した上、返信用封筒でご返送下さい。」

書かれていた内容はまたしても上記のような荒唐無稽なことだったが、騙されていることを前提にこの封書の内容を整理してみると、要は僕の生活を補助してくれるアンドロイドが貰えるから、そのアンドロイドに対する僕の要望を、2枚目の紙にできるだけ細かく記載しろということらしい。……実に厨二の血を刺激する内容だった。僕はもう一度封書の本文を読み返し、金銭の要求が全くないことと本文全体を確認した後、2枚目の紙、アンドロイドに対する要望書にガチで記入を始め、完成させたオタク臭がプンプンする要望書を返信封筒へ入れ、意気揚々とポストへ投函したのだった。

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