眠り姫
少女と何時間遊んだのだろう。気づけばもう18時で日が暮れかけている。
「ゆきなやぎ~……ねむいよ~」
少女は遊び疲れたのかとても眠そうにして私に抱きついてくる。
この行動もやはりかわいい。
「じゃあ、ちょっとベンチに座ろっか」
「うん」
そう言って私は少女と手をつなぎベンチに向かう。
ベンチに座りあたりを見渡すともう公園には人がいなかった。
「ねぇ、君のおうちはどこなの?」
「あっち」
「あっち、じゃ分からないよ?」
「うん……」
そういうと少女は私の太ももを枕代わりにして寝転んだ。
そして、すぐに寝息を立てて眠ってしまった。
「どうしよう、寝ちゃった。この子の家はわからないし……」
私は少女の寝息と、カラスの鳴き声だけが聞こえる空間でしばらく考える。
「このままだとこの子も風邪ひいちゃうし、とりあえず私の家に連れて行こう」
そう決めて、私は少女を起こさないように気を付けながら抱っこし、歩いて5分ぐらいのところにある自宅に向かった。
「ただいまー」
私は少女を起こさないようにできるだけ小さな声で言う。
しかし状況を知らない母は大きな声で、
「おかえりー!遅かったねー?どこ行ってたの?」
と言ってきた。
包丁でものを切る音がする。きっと夕飯を作っている最中なのだろう。
「う~ん……?」
まずい!起きちゃう!
私は、少女が目を覚まさないようにゆする。すると、また寝息をたてて眠った。
あぶなかった。少女の睡眠を邪魔するところだった……。
私はゆっくりとリビングに向かう。
そしてキッチンにいる母に向かって、
「お母さん、あの~……」
どうやって説明しよう。このこと考えてなかった。
母は、夕食を作るのに一生懸命でこっちの様子に気づいていない。
「なに?今、忙しいんだけど?」
今日の夕食はハンバーグかな……?いい香りがする。
「……ん? いいにおい……」
少女は香りに反応して目を覚ます。
聞いたことのない声を耳にした母はやっとこっちを向いた。
「……めぐみ、この子……だれ?」
「ゆきなやぎ~この人だれ~?」
母も、目を覚ました少女も同じような質問をしてくる。
どうしよう……。
「えっと……あとで説明するからとりあえず、この子のご飯も作ってくれない?」
私は、お母さんにお願いした。
「まぁ、いいけど。後でしっかり説明してね?」
よかった。なぜか許してくれた。
これも、この少女の可愛さのおかげかな?すると、少女が私の服を引っ張りながら、
「ゆきなやぎ~、あそぼ~?」
と、寝起きで眠そうな声で言ってきた。
「えっと、ちょっと待っててね?」
私は少女を床におろし、母に言う。
「この子が、遊びたいっていうから私の部屋に行ってるね?」
「んー、ご飯ができたら呼ぶからそれまで遊んでなさい」
お母さんはすんなりと許可してくれた。
「ありがと!」
そう言って、少女とともに私の部屋に向かった――。
しばらく遊んでいると、母が呼びに来た。母に呼ばれた私と少女は、手をつなぎながら階段を降りる。そして、リビングに入るための扉を開けた。
すると、今までに体験したことのないようないい香りがした。
「わ~!いいにおい!!」
少女もとても喜んでいる。
お母さん、この子のためにいつもより腕によりをかけたのかな?
「さぁ、二人とも食べな?」
「うん」
「はーい!!」
すると、タイミングよく、
ガチャッ……
「ただいまー」
と、お父さんが仕事から帰ってきた。
ちょっとタイミングが良すぎじゃない?
まるでタイミングを図っていたかのように帰ってきたお父さんに私はそう思った。
「お帰りなさい」
私とお母さんは声をそろえていった。
それを見ていた少女も、
「おかえりなさ~い!」
といった。
するとお父さんは、
「えっと……ただいま……?」
すこし戸惑った感じで言う。まあ、戸惑うのが当たり前だろう。帰ってきたら知らない子が家族同様に座っているのだから。
「お父さん、もうご飯で来てるからとりあえず着替えてきて?」
「え? あ、うん……」
そうお母さんにいわれるとお父さんは、急ぎ足で着替えに行った。
5分後―――。
「いただきます!」
家族+少女で声をそろえていった。
私は、いい香りのするハンバーグにかぶりつく。
すると中から、温かく柔らかな誰もがしっている物が舌に流れ込んでくる。
私はそれが何かを一瞬で判断する。
間違いない、チーズだ! とてもおいしい……。
私は、幸福感に浸りながら少女のいる隣をなんとなく見る。
私は隣を見た瞬間にさらに幸せになった。
なぜなら少女が、キャラメルをあげた時以上にかわいい笑顔でハンバーグを食べていたからだ。
かわいすぎる……。
お母さんはその少女の顔を見て、とても満足している様子だ。
そしてしばらく時間が経過し、ついに母が口を開く。
「で、めぐみ?この子はどうしたの?」
私はそれを聞かれて急いで口にある美味しいハンバーグを飲み込んだ。
そして、
「えっと、今日私昼頃に家から出かけたでしょ?」
「でかけたね。それで?」
「で、私その時公園にいったの」
「うん」
「その時にねベンチに座ろうとしたらこの子がいて——――」
私は、5分ほど事情を説明した。
「うん。夜になりかけた時間になってもこの子の親さんが迎えに来なかったから、
うちにつれてきたの」
「なるほどね~そういうこと。事情は分かったからこれ食べ終わったら、その子と一緒にお風呂に入ってきなさい」
「わかった」
私は母にそういわれ、またご飯を食べ始めた。
そんなことよりお母さんの子の受け入れ様、素晴らしすぎじゃない?
「ところで、君?」
お母さんは、おいしそうにご飯を食べる少女に話しかける。
「な~に~?」
その問いかけに、ご飯で頬袋を作りながら少女は返事をする。
「お名前はなんていうの?」
「ん~?わたしはね~、
「紅亜ちゃん?」
「うん!」
「いいお名前ね~」
「えへへ……ありがと~!おばさん!」
「おば……さん……。まだ、そんな年齢じゃ……」
そうか、この子は紅亜っていうのか。
あと、お母さん、37歳はもうおばさんだよ。
私とお父さんは、そんな二人の会話に苦笑しつつご飯を食べた。
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