本当の出会い

「はぁ~……、やっと試験が終わったよぉ……」


 つらかった試験がやっと終わり私は安心する。


 そろそろ帰ろう


そう思ってたその時、


「ねーねー、そこの君ー!」


 と、試験の時後ろにいた子の声が聞こえてきた。

あの子、どの時間も鉛筆転がしながらずっと独り言しゃべってたから声を覚えちゃったよ。

で、誰を呼んでるんだろう?


「ピンクの髪の君ー!」


 予想していなかった彼女の一言で私は立ち止まることとなった。

ピンクの髪?もしかして私のこと?

 私の髪はわかりやすいピンクではないが桜色、または薄色をしているとよく言われる。両親ともに黒髪なのになんで私だけピンクっぽい髪色なんだろう、と疑問に思うこともよくあったものだ。

 そして、私であろう呼びかけに答えるため立ち止まって振り向いた。


「やっと、追いついたぁ……」


 試験の時はちゃんと見てなかったけどこの子の髪の色、薄い水色?

でもどっちかといえば白に近い色?どちらにしても、綺麗な色だなぁ。

 しかも、とても顔だちが良い。こんな可愛い子見たことがない、と思うくらいとても可愛い。もう、可愛いとしか表現できないぐらい可愛い。

目も大きいし、肌も白いし。

こんな可愛い子が息切れするぐらい追いかけてきて一体何の用だろう?


「ね~、君、名前なんていうの?」


 とても可愛い彼女は呼吸を整え、私に質問をした。

何気ないない普通の質問である。

 しかし、私にとっては何気なくない質問である。

なぜなら私は人見知りだから話しかけられることも少なく、質問されること自体、経験が浅いからなんて答えればいいのかわからないからだ。

普通に名前を言えばいいの?

 それとも、何か言葉を付け加えながら名前をいえばいいの?どうすればいいの?!


「え?えっと……あの……その……」


 迷いすぎた私の口から、意味をなしていない言葉がこぼれる。


「ん?」


 彼女は、不思議そうに私の顔を覗く。

こんな反応されて当然だ。

 きっと彼女は、普通に答えてくれるのを期待していたのだろう。

ごめんね、期待を裏切っちゃって……。

そんなことを思っていたその時、


「どうしたの? もしかして私に惚れた?」


「……え?」


 彼女の謎すぎる言葉に私は困り、間抜けな声を出してしまった。

たぶんこれはあたりまえの反応のはず。

 きっと全世界の人も私と同じ立場にあったら同じ反応をするだろう。うん、絶対に……。

そんな、声を出してしまった私に、


「ごめんごめん、冗談だよ~! そんな顔しないでよ~」


 と、軽いノリで言ってくる。

なんだこの人。よくわからない人だなぁ。

そして彼女は勝手にしゃべりだした。


「私はね、 ひいらぎ月樺つきかっていうの。今日あなたを見たときに友達になりたいな~って思ったの。だから友達になろ?」


 はい、ごめんなさい。私が悪かったで……、え?

私は戸惑った。

てっきり、


「なに?普通に質問しただけじゃん。答えてよ」


 とか言われるものだと思っていた。

しかし、彼女は自己紹介をしてさらに、私に友達になろうと言ってきた。

こんなかわいい子に、友達になろうって言われるなんて誰が予想できただろうか。

 しかも私は人見知り。こんな私に友達になろうなんて言ってきた人は、片手で数えられるぐらいの人数しかいない。

 そんな私は様々な感情を抱いたが、その中でも強かった、嬉しさと、好奇心という感情により自然に言葉を発してしまった。


「えっと、はい。私は、 雪柳ゆきやなぎめぐみ といいます」


「雪柳めぐみちゃん? じゃぁ、雪ちゃんってよんでいい?」


「はい、だ、大丈夫です」


「なんでそんな敬語を使うの? 友達には敬語を使わなくていいんだよ~?」


 この短い会話でもう友達になれたたいうの……?

なんとフレンドリーな方なんでしょう、柊さんは。


「うん、じゃ、じゃあ柊さん、こ、これからよろしくお願いします」


「うん、よろしく!あ、よろしくって言ったけどまずこの高校に合格できるかどうかだね!」


 私は、柊さんの言葉で少し心配になる。

自分の心配ではない。柊さんの心配だ。

だって、鉛筆を転がして問題を解いていた人だし……。

 私は、柊さんが鉛筆を転がして問題を解いていたのか確認したくなり聞いてみようとした。


「あの、柊さん。きょ、今日のテストで――――――」


 しかし、聞こうとした途端彼女は腕についていた小さくかわいらしい腕時計をみて、


「あ、私そろそろ帰らなきゃ!ばいば~い雪ちゃん!」


 そう言って彼女は走り出した。

嵐のように去っていこうとする柊さんを見て、


「あ、そうなの?ば、ばいばい柊さん……」


と、言うしかなかった。


「うん!ばいばい!」


 そう言って彼女走り出す。

私は走っていく彼女の背中を見ていた。

すると、

ガッ!バタンッ……。

という音がしたとたん、急に彼女の姿が見えなくなった。心配した私は、柊さんの消えたであろう所まで走る。

 たどり着くと、柊さんは地面でうつ伏せ状態になっていた。私はすぐに察した。柊さんは何もないところでこけたのであろうと。


柊さんって意外とドジなのかな?


 そして私は、柊さんに手を差し伸べた。


「えへへ……雪ちゃんありがと~」


 彼女は恥ずかしさで少し顔が赤くなっていた。

うん。こんな柊さんも可愛い。


「うん。ひ、柊さん大丈夫……ですか?」


「大丈夫だよ~。こんどこそばいば~い!」


「うん。ばいばい」


 そう言って柊さんはまた走り出す。そして柊さんの姿が見えなくなった。


なんか、今日はいろいろなことがあったなぁ。なんか、疲れた……。

 

 私も帰ろうと思った。

そして同時に私は楽しい高校生活になりそう、そうも思った。


「よーし、これから頑張ろう!」


 周りの人に聞こえないような小声でそう言って、

試験を受けた高校を後にした。


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