ハッピー迷路!
華みるく
迷いと楽しさ
出会い……なのかな?
キーンコーンカーンコーン
「それでははじめてください」
その言葉と同時に周りから鉛筆の動く音が聞こえてくる。
なぜなら私は今、人生に一度しかない高校受験の真っ最中!
これでもか!というぐらい頑張って勉強してきたこの一年、無駄にはしない!
さぁ頑張ろう!
―――カラカラカラ……コロッ。
「よし、2だね。次は……」
――カラカラカラ……コロッ。
「よし、4だね。次は、うわっ!文章問題じゃん。後でやろう、うん、後で……」
後ろの席から鉛筆の転がす音と、小さく高い声が聞こえてきた。
え、後ろの子がやってる方法ってまさかサイコロ方式……?
サイコロ方式って確か、六角鉛筆を少し削ってそこに数字を書いて出た数を
答えに書くって方式だよね?
そんな方法でテストに挑んで大丈夫なのかな?
「あ、鉛筆が落ちた。試験管!鉛筆拾ってください」
本当に後ろの子は大丈夫かな……?
「この問題難しいなぁ……」
私は頭を抱えていた。
勉強したはずなのにどうしても思い出せない問題が出たからだ。
「えっと、たしかこうだったはず……、あーでも違うかなぁ」
私はだれにも聞こえないような声で独り言をしゃべっていた。すると
スースー……
と隣の子から鼻息が聞こえてきた。
でも、そんなの気にしていられない!問題に集中しなくちゃ。
そう思いまたテストに取り掛かる。
スースー……
どうしようすごく気になる。我慢できなくて私は隣をチラ見した。
すると隣には、机に腕で交差を作りそこに顔を埋めて寝ているという、少女の姿があった。
あれ、寝てる? うそでしょ?まだ、テストが始まって20分ぐらいしかたってないのに!?
どうしよう、起きる気配もないし。
そう思っていたらちょうどいいタイミングで試験監督が、その子のもとへやってきた。
「おーい、219番の方? まだテスト中ですよー?寝てちゃあテストできないでしょー?」
監督も監督でとても優しそうな方だった。
起こし方も甘い口調で言ってるし。もっと、びしっと言ってあげれないのかな?
「んー……?だってもう終わったんだもん」
いやいや終わるわけないじゃん。
この子、きっと昨日全然寝てないんだろうなぁ。
「試験監督に嘘はつかないの。ほら起きて?」
「うそじゃないよぉ……。ほんとだよ?」
「じゃぁ、解答用紙を見せて?全部出来てたらまた寝ていいから。ね?」
いやいや、また寝ていいの!? そこは起こさなきゃダメでしょ!
ついつい心の中でツッコミを入れてしまった。
「んー、わかったよ。はいどうぞ?」
「ありがとー。じゃあ確認するね?」
――30秒後。
「ごめんねー?私が間違ってた。ちゃんと終わってたのね」
「ねー? だから言ったのに。じゃぁ、寝るね……」
「はーい」
いやいや、監督さん!はーい、じゃないよ!あなたは間違ってない、起こしてあげて!その子の小さな寝息が私の気をそらすの!
ほら、よく時計の音を一回でも気にすると頭から離れなくなるでしょ!?
それと同じ現象が起こっちゃうから!
だから起こしてあげて!!
しかし、そんな私の思いが試験監督に届くはずもなく教壇の上へ行ってしまった。
それにしても、隣の子はすごいなぁ。まだ、二十分しかたってないのに。きっと頭がいいんだろうね。
なんだか、私の周りは個性的な人が座ってるな。
でも、私は関係なしに頑張るぞ!
塾の先生とか学校の先生に、
『試験中に目立って目をつけられたら落ちると思っておきなさい』
と言われたから、自分は自分のことを精一杯やらなくちゃ!
こうして私は毎時間、後ろと右隣から聞こえてくる音を気にしないように五教科のテストを終えた。
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