Mr.Bone

彼は、ホテルの一室で新聞を読んでいた。

たっぷりと暮れた夜の部屋はベッドサイドのランプが薄く照らしている。


「やっぱ、あの人のつくるハーブティーは美味いな。また送ってもらおう。」


彼は、大柄な教師だったひとりを思い出しながらポツリと呟いた。ローズとハーブの香りでブレンドされた紅茶を飲みながら、次の記事を読もうとしたとき、


---トントン


「…こんな夜更けに誰だよまったく…ルームサービスを頼んだ覚えはないんだけどな」


ティータイムを邪魔された彼はドアへと歩き出した。

成人にしてはやや低い背丈だが、その精悍な目つきのせいで小柄には見えなかった。

彼はすっかりシワの増えた手でドアノブを掴む。


「こんな時間になんのようだ」


ドアの向こう側に立っていたのは、黒スーツにサングラスをかけた"いかにも"な男だった。


「あなたに、仕事の依頼を。」


「馬鹿言え、休暇中だ。それに俺はもう引退した身だ。アンタ、この世界にちょっとは精通してるみたいだが俺に話を持ちかけるのはお門違いだぜ。」


鋭い眼光でスーツの男に言った。


「そういう訳だ。他を----」


「あなたを、」


そう言ってスーツの男は強引に部屋に入り込む。


反射的に彼は腰の"XDM"に手が伸びていた。

しかし、スーツの男の次の一言で彼の手は止まった。


「-----あなたを、元『自殺部隊』の人間だと知っての依頼だ。」


「てめぇ……」


強ばった手に汗が伝う。


「Would you receive this work?"Mr.Bone"」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る