模擬戦(3)
戦闘において弾数管理は初歩にしてもっとも大切なことだ。肝心な時に弾切れでトドメを刺される悪役を映画で見てきただろう。
ちひろもはぎれも、そんなことは基礎の基礎。呼吸をするようにできる。
ちひろのソーコムは12発。はぎれのデザートイーグルは二丁合わせて16発。
超至近距離で撃ち合う2人は、必然的に先に弾切れになった方が負けだろう。
そこで2人は
ちひろ「ふっ!!」
すぱん。
はぎれ「…ッ!」
ズガァン。
近接格闘をしながら隙を見て撃つ戦法に出ていた。互いが互いの拳を、足蹴りをいなし、交わしながらスレスレで銃弾をかわす戦い方を見て
骨「すげぇ!!!ガン=カタかよ!!!」
殿「だから!うるさい!すわって!正座して!静かに見て!」
映画好きな骨は興奮していた。
しかし実際銃撃戦を取り入れた近接格闘はとても高度なテクニックだ。最弱と病弱が以外にもコレをそれなりにこなす姿に蟷螂はまたも驚いていた。
ちひろ「(同じ弱者として相手の次の出方はわかる…けど)」
はぎれ「(これじゃあ埒が明かない!)」
さらにちひろは二丁持つはぎれより弾数が少ないため、このままでは確実に負ける。
ちひろ「(戦闘中にマガジンを奪うことは難しいけど、銃本体なら!)」
そこでちひろは、剣道の巻き上げのようにサイレンサーのついた銃身で、はぎれのもつデザートイーグル、その左手側を跳ねあげた。
中をデザートイーグルが舞う。
はぎれ「(しまった!)」
片方の銃を失ったはぎれは一気に残り段数が1/2になる。残り4発。
骨「おぉ!銃を銃で弾き飛ばした!この土壇場で!ちーちゃんの動体視力どうなっていっって!!」
殿「…」
興奮する骨を力で黙らせた殿は勝負の行方を静かに見守る。果たして彼は気づいているのか、と。
ぴのも、さっちゃーも、視聴覚室で観戦しているみんなが同じ想いだった。
ちひろが、ちゃんと弾数管理出来ているのかと。
ちひろ「(よし!これで相手は4発!対してこっちも4!五分五分にまで持ち込んだ!)」
再び、近接戦闘にもつれ合う。
ちひろが銃を持った手で裏拳をかまし、それを避けたはぎれにそのまま1発打ち込む。
それを華麗に回りながら横に避けたはぎれら、そのまま上段の回し蹴り。
しかしちひろはそれを大きくしゃがんで回避する…その眼前には
ちひろ「あ、パンt…ぐふっ!!」
頭頂部からかかと落としをくらい転がるちひろにはぎれはすかさず2発発射。だがちひろはゴロゴロと横に転がり寸での所で回避。そして横になったまま頭上のはぎれへ1発。
少し身体を捻っただけで軽く回避したはぎれだが、その隙にちひろは立ち上がり体制を整える。そして互いが頭にピタリと照準を合わせ、同時に発射。同時に頭を横にずらし回避。
はぎれ「…見たでしょ」
ちひろ「見てないです」
はぎれ「あと1発だね」
ちひろ「次外した方の---負けだっ!!」
言い終わらないうちに引き金を引く。カチッと、間の抜けた音がする。
ちひろ「あれ………?」
はぎれ「はぁ…それじゃ見物料、頂くね」
再び、ズガァン。
脳天にゴム弾をくらったちひろは、その後たっぷり5分ほど悶えていた。
骨「…………マジか」
殿「いや、気持ちはわかるけど、うん。彼らしいわ。」
一方、視聴覚室では『やっぱりか…』というムードが漂っていた。
蟷螂「弾数管理は初歩の初歩だが……まさかな。開幕ダッシュで転んだ時に暴発したことに気づかないとは…」
リンリン「静かすぎる銃ってのも考えものだなぁ……」
ぴの「まぁでも、殿さんの言う通りですね。やっぱりちひろさんは---」
ちひろ「---うぅ、また勝てなかった…」
フィールドに寂しい声が木霊した。
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