彼女は早々に夢を見付け、そこに向かって一心に走り出していた。
お調子者のバカだった彼にこそ、本物の非凡の才能が眠っていた。
幼馴染みの2人のすぐそばで、「ぼく」だけが、くすぶり続ける。
光と熱と太陽、いつも一緒だった3人が、2人と1人になってしまう。
夢中になれる何かが自分にあれば。
人を魅了するほどの才能があれば。
夢を叶えて成功する人生だったならば。
カケラでいいから自信を持てるならば。
「ぼく」の胸を焦がす炎は、吠えるように吐き出され、描かれる。
誰しも似たような妬みや絶望を抱いたことがあるのではないか。
それを抱き続ける苦しみから逃れて、大人になったふりをする。
けれども、いつになっても時折、炎は隙を突いて現れはしないか。
あまりに正直な「ぼく」の吐露に胸を抉られる。
ゆずの初期の青々とした唄を聴きたくなった。