第五話 エルフ お約束

エルフの郷にいくそのまえに、俺は自分の家にしている宿に、負傷しているベルを連れて戻ることにした。


「あのさ、ベル様」


恐る恐る俺は抱えているベル(どきどき)に、話しかける。


「様付はやめてください」

「ベルだって、俺のこと様付で呼んでいるだろう?」

「エルフ様ですから」

「・・・・・」


こりゃますますベルの乳を揉みにくいな(ナンパしにくいな)と、俺は沈痛な思いになる。


「ベルはさ、エルフに夢を見すぎなんだよ」


物悲しげにベルは、うつむいた。なんか俺悪いことをしている気分になる。


「エルフも人も変わらんよ。エルフの里なんて、古い村八分なんて虐めが当たり前だしさ。あいつらエルフの血に妙にこだわってて面倒だし。人間がエルフの里の中に入るなんて言ったら、殺されるかもしれねぇよ?まぁ、遠くからエルフの里眺めるのはいいけどさ」

「・・・・そうですか」

それきりベルは遠くを見つめてしまう。

そうこうしている間に俺が長年泊まっている宿が見えた。宿のドアを俺は開ける。


「おう、おかえり」


宿の主人であるエリアルが挨拶をしてくれる。たくましくて包容力があるエリアルは、女にもてる。俺は舌打ちを一つ。


「ただいま」

「あん?相変わらずお前態度悪いな。その隣の女性はどうしたんだ?誘拐はやめろよ」

「うるせ!こ、この女性はだな、まぁお客さんだ」


 妙に俺は照れてしまう。女との接点が何もない暮らしだったからな。なんだか気恥ずかしくて、隣にいるベルの顔は見れなかった。


「あんま女連れ込むなよ」


にやにや笑うエリアルを睨み付ける。


「うるせ!」


俺はベルを強くつかみ、借りている部屋へと急いだ。

俺は部屋につくと、ベルの体をそっとベッドにおろす。

想像してみてほしい。自分の自室に異性がいるのだ。しかも異性がいつも俺が眠っているベッドにいるのだ。

 俺の心臓が牛のように、暴れまわっているぜ。そのくせなんか冷や汗書いちまっている。

きょとんとこちらを見上げているベル。俺はこのままベッドにどう、ベルともつれこめるか考えていた。


「あの・・・。大丈夫ですか?なにか顔色悪いですよ」


ベルに心配されてしまった。俺のもんは元気だぜ☆と、下ネタを緊張をまぎらわそうと明るく考える。


「か、か、体は大丈夫か?」

「ええ。足以外は」


ベルの腫れ上がっている足首を見た。俺は濡らしたタオルで氷魔法を少し使い、ベルの足首に巻く。

ベルは微笑んで俺の瞳を見た。


「ありがとうございます。エルフ様はお優しいのですね」


ベルは物悲しそうに泣きそうな顔で微笑んでいる。だから俺は・・。


「ほ、ほかに痛いところないか?見てみよう」

「大丈夫です」

「いや、無理をするな。その服を脱いでみよう」

「服を?」

「服を脱がなければ、怪我の具合が分からないから」


 俺はベルから顔をそらして言う。俺の顔は今真っ赤だろう。熱い。ベルよ。俺は優しい男なんかではない。ただの動物だ。下半身が荒れ狂う動物だ。

俺はそっと、ベルの肩を押してベッドに押し倒した。


「あ、あの!」


焦るベル。俺は安心させようと、慈愛の微笑みを浮かべる。


「大丈夫」

「わ、わかりました」


ぎゅうと、ベルは目を閉じる。

ベルちゃんや、目は閉じちゃいかん。

そのままなんとなくなんとなーくベルの口に、俺は口をくっつけようとして、そして、触れそうになった瞬間、俺の部屋のドアが吹き飛んだ。

 どっかーん!!!!!


「え」

「我らは王国騎士団である」


俺の借りている部屋のドアを壊した男達は、そう叫んだ。


「貴方様は第四王女、ベル・レオニール様でおらせますな」

「え、え」


俺の下にいるベルの顔と、男達の顔を交互に何度も見る。


「ベル・レオニール。国庫や国税を横領した罪で、あなたを逮捕する」


 王国の騎士らしき男はそう叫んだ。


「えー!?」


俺はもう叫ぶことしかできなかった。(泣)

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