第四話 エルフ頼みごとを聞くことにする。

今の人間の王は福祉に力を入れていて、人間族でもなくても保険を月々払えば、受診料がやすくなった。エルフの俺も人間の病院はよく利用している。

 病院前でベルは言った。


「ここまでで結構です。ありがとうございました」

「けど、立てないんだろう?」


そうベルは足を骨折していたと言っていた。


「気のせいみたいです。少しいたいけど、安静にしていれば大丈夫なくらいです。送っていただいてありがとうございます」


ベルは頭を下げてきた。何かおかしいと俺は首を傾げた。

そもそもベルは何故あんな立派な馬車に1人で乗っていたのだろう?しかも馬車をひいていたはずの馬の姿もない。

ベルに疑問を抱いたが、知り合いでもないベルに別れの挨拶を告げられて、ずっとベルのことを見ているわけにもいかない。

しかたなく俺は、その場から歩き始めた。ベルの前から通り過ぎると、物陰に隠れてベルの様子を見てみた。

ベルは病院にはいかず、その場から足を引き摺りつつ歩き出そうとする。倒れそうになったベルのもとに駆けつけて、俺は慌てて少女の体を支えた。


「大丈夫か!」

「テスラ様?」

「お前のことが心配だったんだ」

「ありがとうございます。エルフ様は優しいのですね」

「何故病院に行かないんだ?」

「大丈夫です」

「あのな」

「私の母親はエルフ信仰をしていました。エルフは森の神様だと、私は母からいつも聞いていました。私は凄くエルフというものにあこがれを持つようになりました。テスラ様にお願いがあります。一度だけエルフの里が見てみたいです。お願いできますでしょうか?」

「いいが、病院には」

「だいじょうぶです。テスラ様には案内料を払いします。お願いします」


意地でもベルは病院に行かないらしい。俺は溜息をついて、少女の体を拾い上げた。ベルの体はやはり軽くて、その過酷な生活が慮られた。

こうして俺と謎の少女ベルは、なんやかんやでエルフの里へと出発するはこびとなった。

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