巨乳を超えた巨乳
今回のサブタイトルを目にした読者諸君はきっと果雨ちゃんのおっぱいの成長ぶりに心を躍らせていることと思うが、彼女の話に入る前に、『Fカップ以上のおっぱいの呼称』について少々論じてみたい。
巨乳の定義がFカップ以上であることは以前述べた。しかし、おっぱいのサイズには理論的に上限がない。Fカップ以上のおっぱいを持つグラドルはいくらでもいるし、Fカップは
大きいおっぱいを表現する言葉の中で、『巨乳』の次に多く使われるのはおそらく『爆乳』という言葉であろう。
爆乳、すなわち、ドドーンと擬音語が飛び出してきそうな迫力を持つおっぱい。それはまさに巨乳を超えた巨乳であるGカップのおっぱいに相応しい表現であり、俺にとって爆乳とはGカップを指す言葉なのだ。
例えば、SNSなどでうっかり『一人で爆笑した』などと投稿してしまったら、ネット上のうるさ型から『爆笑は一人でするものではありませんよwww』なんてクソリプが飛んで来るかもしれないが、その点おっぱいは安心である。言うまでもなく、おっぱいは基本的に二つあるからだ。
Gカップまで来ると、おっぱいの丸み、谷間の深さ、そのいずれも規格外という感じがする。だが世の中には、そのGカップを超えるおっぱいも存在するのである。
では『爆乳』を超えた巨乳はどう呼ぶべきであろう。
爆乳、つまり今にもはち切れ破裂せんばかりのおっぱい。これを超えるおっぱいは、最早単なるおっぱいではない。
爆乳を超えた巨乳。おっぱいを超えたおっぱい。Hカップに与えられるべき称号は、『超乳』だと俺は考える。
Hというアルファベットが使われるだけで、卑猥さが跳ね上がったような印象を受けるのは俺だけであろうか。Hカップまで来ると、その海のように深く広い谷間には、大抵のものがすっぽりと挟み込まれてしまう。何とは敢えて言わん。きゅうりだってすっぽり隠れるだろうし、バナナだってうまい棒だって同じことが言えるだろう。想像力豊かな読者諸君ならば、俺のこの暗喩が意味するところをきっと理解してくれるものと信じている。何とは敢えて言わん。大事なことだから二度書いた。
Hカップまで来ると、もうその大きさを具体的にイメージすることが難しくなってくる。だが世の中には、そのHカップすらも超えるおっぱいが存在する。
日本語にして『愛』との名を持つ、神に愛された天上の乳。おっぱいを超えたおっぱいを更に超え、その存在を神の域にまで近付けたおっぱい。Iカップには、『天乳』という称号が最も相応しい。
その谷間は海より深く、その感触は雲より貴い。きゅうりだバナナだうまい棒だなんてみみっちいことを言わず、
さて、今回は何故唐突にこんな話から始まったのか、と訝る向きもあるだろう。おっぱい談義はこれぐらいにしておいて、皆様お待ちかねの果雨ちゃんの近況報告と行こうではないか。
果雨ちゃんは今年で十九歳になり、志望校にも合格した。晴れて女子大生となったわけだ。
受験生という立場からも解放されて、グラビアアイドルとしての活動も去年より積極的に行えるようになった。昨年発売された1st写真集『ミルキー・ウェイ』は、グラビア写真集年間ランキング8位に入るいきなりの大ヒット。先日発売された1stBlu-ray『COW GIRL』は、過激なシーンのない正統派イメージビデオとしてはなかなかの健闘を見せている。
既に2nd写真集の撮影も始まっており、1stをさらに上回る売り上げが期待される。細川果雨は、グラビアアイドル界の頂上目指して、飛ぶ鳥を落とす勢いで長い階段を一足飛びに駆け上がっているのだ。
Gカップ、所謂『爆乳』へと成長した果雨ちゃんのおっぱいも、それを強烈に後押しした。冒頭でいきなりGカップ以上のおっぱいについて論じた理由も、これでご理解頂けるものと思われる。
売れっこグラドルとなった果雨ちゃんには、少しずつ雑誌のインタビューやテレビの仕事も増え始めた。
雑誌のインタビューやテレビのトーク番組などでは、小学生の頃に両親を亡くし、今は親戚の家で暮らしている、という話がよくうけた。大衆はそういう泣ける話が大好きなのである。清楚で受け答えもしっかりした果雨ちゃんの口から語られる辛い過去は、グラビアアイドルというだけで色眼鏡を使うような層の心をもグッと掴んだ。冴えない中年男の扶養家族であることは巧妙に隠されたままで。
また、名門女子大に合格したことで、果雨ちゃんは『インテリグラビアアイドル』という新たな地平を開拓しつつもあった。
これまでのグラビアアイドルは、どちらかというとおバカ・天然タレント的な扱いを受けることが多かった。それは彼女たちが本当にバカなわけではなく、ただ番組の中でそういうポジションを求められることが多いためだと考えられる(事務所としても、果雨ちゃんの受験の結果次第では天然キャラで売ることも考えていたようだ)が、果雨ちゃんはその殻を破り、『かわいくておっぱいが大きいのに賢い』というキャラクターを確立しつつある。
クイズ番組などにも時々出演し、理数系の問題には若干の脆さを見せることもあったものの、人文系の問題では安定した強さを発揮した。今年の正月に行われたクイズ番組での難読漢字バトルは最終的にベテランインテリ女優と果雨ちゃんとの一騎打ちになり、熱戦の末惜しくも敗れてしまったが、手に汗握る戦いの模様は高視聴率を記録し、一時は『細川果雨』の名前がTwitterのトレンドに上がるほどだった。
グラビアアイドル細川果雨の人気は、全国区になりつつあった。
それにしても、テレビ画面というものは、これほどまでに距離を隔てるものだろうか。
彼女のBlu-rayだってプレーヤーで再生してテレビのスクリーンを通して観たのだから、条件はさほど変わらないはずなのに、テレビ番組で芸能人と絡んでいる様子を見ていると、なにか本当に違う世界の人間に見えてくる。
果雨ちゃんの仕事が多忙になるにつれて、夕食を一人で食べることも増えた。一人の食事はなんとも寂しいものである。親父が死んでから彼女がうちに来るまでの数年間、俺はいったいどうやってこの寂しさに耐えていたのだろう。今ではそれすら思い出せない。
だから、今日のように果雨ちゃんと一緒に夕餉の食卓を囲める日には、これまでよりさらに一層心をこめて料理しようと誓っているのだ。
彼女のおっぱいを更なる高み、『超乳』の域にまで引き上げるため、俺が今回注目した食材は『海藻』である。
海藻もまた、キャベツと同様『ボロン』を多く含んでいる。これまでにも味噌汁にわかめを入れたりして食事に取り入れてはいたのだが、このボロンは熱に弱いという性質を持っているため、サラダにして食べるのが望ましいのだ。
というわけで、今日の夕食の献立は、アボカドとチキンのチーズグラタン、レタスと茎わかめと豆腐の和風サラダ、ごぼうとにんじんのナッツ味噌和え、の三点となった。
「果雨ちゃ~ん、ご飯できたよ~」
「はぁ~い」
受験生でなくなっても、彼女の家での勉強時間はさほど減っていなかった。芸能界の仕事が増えた分、普段勉強に割ける時間が少なくなっているためだ。家で見かける彼女はほぼ常にレポートに追われていたし、学校でも友人を作る時間がないらしく、授業内容を追うにも苦労しているようだった。
受験勉強の疲れも取れぬまま芸能活動が多忙になっていったから、果雨ちゃんの体には見えない疲労が蓄積しているのでは、そう心配してやまないのだが、彼女は『今が勝負の時だから』と、仕事にも勉学にも精力的に取り組んでいる。今は気が張り詰めているからそれでもどうにかなっているのだろうが、いつかその糸がプツリと切れるときが来るのではないか。全てが杞憂に終わることを祈りながら、俺は果雨ちゃんの疲れが吹き飛ぶようなおいしい食事を提供し続ける。
本当は疲れているはずなのに、彼女は家でも笑顔を絶やさなかった。ずっと笑っていないと、どんどん可愛くなくなっていくような気がするのだそうだ。女の子にはそんな強迫観念があるのだろうか……。
「「いただきます」」
果雨ちゃんはアツアツのグラタンをスプーンで掬い上げ、口へと運ぶ。とろりととろけるたっぷりのチーズが、芳しい香りを放ちながら糸を長く引いた。
「う~ん、おいしい! これ、アボカド?」
「そう。グラタンにアボカドを使ってみたんだ」
「すごい。チーズとアボカドの濃厚な風味が口の中でとろっとろに混ざり合って、なんだかもう、幸せ!」
グルメ番組への進出を意識しているのか、最近の果雨ちゃんの感想はだいぶ語彙が豊かになってきた。家でぐらい、そんなことを気にせずにゆっくり羽根を伸ばしてもらいたいものだが。
彼女は次に、サラダへと箸を伸ばす。果雨ちゃんの口の中で、レタスと茎わかめがシャキシャキと小気味よい音を立てた。
「これもおいしい! レタスと茎わかめの食感がいいし、醤油ベースのドレッシングのさっぱりした風味のあとに、ほんのり何かが香ってくる……」
「それはね、たぶんえごま油の香りだと思うよ。ものによってはクセがあって苦手な人もいるみたいだけど、これは割と味の評判がいいえごま油なんだ。どうかな?」
果雨ちゃんは次に豆腐を口に運び、ドレッシングの香りを確かめるようにゆっくりと咀嚼した。
「……うん、私は好き! 豆腐にも合うね! これは何かな?」
次に箸をつけたのは、ごぼうとにんじんのナッツ味噌和え。他の二つと比べると、これは安パイな普通の味だと思うのだが、彼女のコメントはどうだろうか。
「あ~、これは、なんかほっとするね。うん。愛情を感じるよ、すごく」
ほっこりした彼女の笑顔。今をときめく細川果雨のこんな表情を見られるのは、俺だけの特権である。
彼女のおっぱいがGカップに成長を遂げてから、昔から着ていた部屋着のTシャツ、その胸のあたりが、今にも弾けんばかりにパツンパツンになっている。ブラジャーの線などはハッキリクッキリと浮かび上がり、これまで以上に目のやり場に困ってしまう有様だった。
堪えども堪えどもなお我が息子楽にならざり。じっと股間を見る。そこでは愚息が雨にも負けず風にも負けないような立派なテントを張っていた。
耐えよ、我が理性!
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